■第115話 増えるひよっこたちと、完璧なフルパーティ
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疲れ果てた剣士くんと魔法使いちゃんを連れて冒険者ギルドへ戻り、三十体分の魔石をカウンターに提出すると、受付嬢はホッと胸をなでおろしたような顔をした。
「お帰りなさいませ、銀騎士様。無事に帰還されて何よりです」
「ええ、今日は彼らの実戦訓練みたいなものでしたから」
魔石の換金を済ませようとした時、受付嬢がチラリと僕の後ろを見て、少し申し訳なさそうに声を潜めてきた。
「あの……銀騎士様。実は、折り入ってご相談があるのですが」
「相談?」
「はい。銀騎士様が初心者の方のサポートをしてくださっていると聞きまして……もしよろしければ、こちらの二人組も一緒に面倒を見ていただけないでしょうか?」
受付嬢が手招きすると、カウンターの奥から、またしても見慣れない二人組の少年たちが気まずそうに姿を現した。
腰に二本の短剣を提げた、少し勝気そうな目つきの『双剣使いくん』。
そして、神官服とは違うゆったりとしたローブを着た、おどおどとした様子の『支援魔法くん』だ。
「彼らもこの町に来たばかりの駆け出しなのですが、手数が多く素早い双剣と、味方を強化する支援魔法という構成でして……魔物に致命傷を与える『決定力』に欠けており、迷宮の集団戦を突破できずに困っているのです」
「ああ、なるほど。サポート役とスピード特化だと、オークみたいな硬い敵を倒しきれないのか」
僕は振り返り、長椅子でポーションを飲んで休んでいた剣士くんと魔法使いちゃんに声をかけた。
「というわけなんだけど、君たち、仲間が増えてもいいかな?」
「えっ! 俺たちでよければぜひ!」
「人数が増えれば、その分お互いにカバーできますし……よろしくお願いします!」
二人が快く承諾してくれたことで、双剣使いくんと支援魔法くんの顔にもパッと安堵の光が広がった。
「あ、ありがてえ……! 俺、絶対に足手まといにはならねえから!」
「ぼ、僕も……一生懸命バフをかけます……っ!」
こうして、僕の保護下にあるひよっこたちは四人に増えた。
アタッカーの剣士と双剣使い、そして魔法使いと支援魔法。悪くないバランスだ。
(……でも、これに前衛で壁になる『タンク』と、後方から物理で狙い撃つ『弓使い』がいれば、完全に王道のフルパーティになるんだけどな)
そんなRPGのテンプレのようなことを考えながら、僕は彼らの装備を整えるための消耗品を買いに、町の大通りにある『平凡な道具屋』へと足を運んだ。
「おや、いらっしゃい。銀の鎧……あんたが噂の、初心者の面倒を見てくれてるっていう銀騎士さんかい?」
店番をしていた道具屋のおばちゃんが、僕の顔を見るなりポンと手を打った。
そして、店の隅でアイテムの値段を数えながらウンウンと唸っていた二人組の背中を、バンバンと景気良く叩いたのだ。
「ちょうどよかった! 銀騎士さん、悪いんだけどこの子たちも一緒に連れて行ってやってくれないかい?」
「……え?」
「ほら、あんたたち! 頑丈な盾を持ってる『タンクくん』と、目が良くて弓が得意な『弓使いちゃん』だよ! 装備を買うお金がカツカツで、迷宮に潜るのをためらってたところなんだ!」
おばちゃんに背中を押され、身の丈ほどもある大盾を抱えた大柄な少年と、身軽な狩人のような服装をしたポニーテールの少女が、「あ、あのっ、よろしくお願いします……!」と勢いよく頭を下げてきた。
「…………」
僕は思わず、自分のアイテムポーチの中で『予言の書でも入ってるんじゃないか』と錯覚するほど、見事なフラグ回収に天を仰いだ。
結果として。
剣士くん、双剣使いくん、タンクくん、弓使いちゃん、魔法使いちゃん、支援魔法くん。
全くの偶然と成り行きから、見事なまでにバランスの取れた初心者六人の『完璧なフルパーティ』が完成してしまったのだ。
「……これ、前衛も後衛も完璧に揃ってるし、僕はもう本当に『見ているだけ』でよさそうだぞ」
翌日。
総勢七人となった大所帯で、僕たちは再び『はじまりの迷宮』へと足を踏み入れた。
「すげえ……! タンクくんが前で壁になってくれるから、俺たちめっちゃ攻撃しやすいぜ!」
「支援魔法くんのバフのおかげで、弓の威力が全然違います……!」
昨日までの苦戦が嘘のように、六人の連携は見事に機能していた。
僕は最後尾で腕を組み、ただ彼らの戦いぶりを安全な位置から見守っているだけだ。時折、陣形が崩れそうになった時に「タンクくん、少し右に寄って!」「魔法使いちゃん、牽制!」と指示を出すだけで、三十体規模の群れなら彼ら自身の力で完全に処理できるようになっていた。
「よし、みんなその調子だ。素晴らしい連携だよ」
僕が労いの声をかけると、双剣の血振るいをした双剣使いくんが、目をキラキラと輝かせて僕の方へと駆け寄ってきた。
「銀騎士さん! 俺たち、結構いい感じで戦えてるっすよね!?」
「ああ、完璧だ。このままいけば、すぐにでも上の階層へ行けるようになるよ」
「へへっ! ……でもさ、銀騎士さん」
双剣使いくんは、僕の純銀の剣を見つめ、期待に満ちた声で言った。
「俺、銀騎士さんの『本当の戦い方』を見てみたいっす! ギルドの噂じゃ、百体の軍勢を一瞬でミンチにしたって……俺たち、プロの戦い方を見て勉強したいんです!」
その言葉に、他の五人も「見たいです!」「お願いします!」と一斉に頷いた。
彼らにはまだ、僕の『ステータスのゴリ押し』と『飛ぶ斬撃』という規格外の暴力を見せていない。あまりに見せつけると自信を喪失してしまうかと思ったが、ここまで連携ができるようになった彼らなら、純粋な『目標』として受け取ってくれるかもしれない。
「……わかった。じゃあ、今日の探索の最後に、少しだけ見せてあげるよ。それまでは、君たちの力で群れを乗り切るんだ」
「「「はいっ!!」」」
目標ができた六人の士気は、さらに高まった。
薄暗い洞窟の奥深く、彼らの実力試しと、僕の『お手本』を披露する最後の広間へ向けて、七人のパーティは力強く歩みを進めていくのだった。
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