■第107話 力こそパワーと、永久機関の完成
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翌日。
神官ちゃんから大量の『体力回復ポーション』を仕入れた僕は、意気揚々と『はじまりの迷宮』の入り口に立っていた。
「力こそパワー。小細工なしのフルスイングで、どんな大群も全部すり潰してやる!」
迷宮の奥へ進むと、昨日と同じく、あるいはそれ以上の規模の『軍隊』が待ち構えていた。ゴブリン、オーク、コボルト、トロール……ざっと見渡しても二百体は下らない。彼らは昨日、僕がたった一人で百の軍勢を壊滅させたことを警戒し、より強固な陣形と明確な殺意をもって立ち塞がったのだ。
「ギルルルォォォッ!!」
魔物たちの咆哮が洞窟を震わせる。
だが、僕の心に恐れは微塵もなかった。
「さあ、いってみようか!」
僕は腰のポーチから『上級バフポーション』を煽り、ステータスを爆発的に引き上げると、一切のペース配分を捨てて敵陣のど真ん中へと突っ込んだ。
「そぉいっ!! 飛べぇぇぇぇっ!!」
開幕から出し惜しみゼロ。バケモノ級の筋力を100パーセント乗せた『雲海の剣』を振り抜き、巨大な『飛ぶ斬撃』を連発する。
ズバァァァァァァンッ!! ズバァァァッ!!
「ギャアアアッ!?」
「グォォ……ッ!」
前衛のオークの盾ごと、後衛のアーチャーまでを三日月型の風の刃が薙ぎ払う。
一撃で数十体を粉砕するが、相手は訓練された群れだ。開いた穴をすぐに別の魔物が埋め、怒涛の波状攻撃を仕掛けてくる。
「はぁっ! ふっ! せいやっ!!」
僕は『飛竜の雲海鎧』で矢や魔法の牽制を強引に弾き返し、ひたすらにフルスイングを繰り返した。省エネ? 力の受け流し? そんなものは知ったことか。目の前に敵がいるなら、ただ全力で叩き斬る。それだけだ。
しかし、人間だれしも全力疾走を続ければ必ず息が上がる。
百体近くを屠ったあたりで、僕の腕に鉛のような重さがのしかかり、肺が酸素を求めて悲鳴を上げ始めた。
「ハァ……ハァ……っ! さすがに、息が……!」
僕の動きが鈍ったのを見逃さず、残った魔物たちが一斉に距離を詰めてくる。
普通の冒険者なら、ここでスタミナ切れとなり、数の暴力に押し潰されてジ・エンドだろう。
だが、今の僕には『これ』がある!
僕はポーチから、太陽のように輝くオレンジ色の小瓶――『体力回復ポーション』を引き抜き、迫り来る棍棒を躱しながら一気に飲み干した。
ドクンッ……!!
「……おおおおおっ!?」
その瞬間、信じられないことが起きた。
パンパンに張り詰めていた筋肉の疲労物質が嘘のように消え去り、焼け付くようだった肺に清涼な風が吹き抜けたのだ。まるで、今さっき迷宮に入ってきたばかりの、朝一番の完璧なコンディションへと一瞬で『リセット』された。
「すげえ……!! これマジで無限に戦えるぞ!!」
スタミナが全回復した僕は、悪魔のような笑みを浮かべて再び剣を上段に構えた。
魔物たちからすれば、死に体だったはずのバケモノが、突然体力とスタミナを全回復して第二形態に突入したような絶望感だろう。
「さあ、第二ラウンドだ!! 飛べええええっ!!」
ズバァァァァァンッ!!
そこからはもう、ただのワンサイドゲーム(蹂躙)だった。
疲れたらポーションを飲み、スタミナを全快させて再びフルスイング。
道場の特訓で底なしに拡張された基礎体力と、疲労をリセットする体力回復ポーション。二つが組み合わさった結果、僕は魔物を狩り尽くすまで決して止まらない『永久機関』と化したのだ。
数十分後。
二百体を超えていた魔物の軍勢は、最後の一匹に至るまで全て、物言わぬ生々しい骸へと変わっていた。
「ふぅ……! 全力で暴れ回るの、最高に気持ちいいな!」
僕は一滴の汗もかいていない(ポーションで回復したため)涼しい顔で、凄惨な血の海と化した広間を見渡した。
そして、ふと我に返る。
「……あ。これ、今から二百体分の解体作業を、一つずつ手作業でやらなきゃいけないんだよな……」
戦闘の物理的なスタミナは無限でも、このグロテスクで生々しい解体作業に対する『精神力』を回復してくれるポーションはない。
僕は重いため息をつきながら、解体用ナイフを取り出し、再び泥臭い現実(血の海)へと膝をつくのだった。
数時間後。
凄惨な解体作業を終え、悪臭と返り血にまみれた僕がギルドのカウンターに特大の麻袋を三つほどドンッと置くと、受付嬢は白目を剥いて完全に硬直した。
「こ、これは……二百体分の魔石……!? しかも、たった半日で……!?」
「ええ。剣術を習うのやめて、力こそパワーで押し切ることにしました。ポーション様々ですよ」
「…………もう、銀騎士様の辞書に『限界』という言葉は存在しないのですね」
完全に悟りを開いた受付嬢からずっしりと重い換金袋を受け取り、僕はホクホク顔でギルドを後にした。
平凡な迷宮の、過酷な集団戦。
それを『永久機関のゴリ押し』という最も脳筋な方法でねじ伏せた僕は、王道ダンジョンのさらなる深部へと、遠慮なく足を踏み入れていくのだった。
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