4-1 触れられぬ美
アルストリア王国、王都オルドンのすぐ近く。
湖のほとりに、古いグレイブハル城がある。
静かで、美しくて、
――どこか不思議な城。
ここには、美しい青年と少年が暮らしている。
彼らは、錬金術が遺したホムンクルス。
だが、それを知る者は、この世界には誰もいない。
―――
アウレリウスは美しい。
彼の顔の造形や、立ち姿を見て、整っていないと思う人間はまずいない。
頬はしっとりと柔らかそうで、全体に柔和な雰囲気をまとっている。
完璧な形のアーモンドアイに、シミ一つない白磁の肌。
絹のような柔らかい淡い金の髪。
それでいて、すらりと均整が取れた体躯。
細身だが細すぎることはなく、その腕や鎖骨は筋張っていて、彼が男性であることをはっきりと教える。
アウレリウスは、男性性と女性性、その両方を併せ持つ美貌を備えている。
グレイブハル城の受付室。その小窓から見学者が顔をのぞかせ、アウレリウスを見ると、たいてい驚く。
セティはその様子をいつも静かに眺めていた。
セティも、整った顔をしている。
アウレリウスよりも少しだけ垂れた大きな瞳。黙っていれば、アウレリウスよりもセティの方が優しげに見えるかもしれない。
だが、アウレリウスはいつもにこやかに微笑んでいて、セティは無表情だ。
アウレリウスは、とにかく人目を引いた。
受付では、アウレリウスが銀貨を受け取っている。追加料金で案内もできると伝えたが、それは断られていた。
「じゃあ、楽しんでね。ばいばい」
アウレリウスがそう言うと、見学者は城の中に入っていった。
セティがなんとなく玄関ホールのベンチの埃を払っていると、先程の見学者がやってくる。
「おや、君もお城の子なのかい?」
セティは手を止めて、見学者の夫婦を見ると、小さく頷く。
「……君も、城の案内はできる?」
「はい。追加料金を受付で払ってもらえれば」
「そうなのか。どうする」
「せっかくだし、案内してもらいましょうよ」
男性は妻に頷いたあと、セティを見た。
「支払ってくる。お願いできるかい?」
「はい」
セティははたきを目立たないところに隠すと、彼の妻としばらく待った。
男性が早足で戻ってくる。
セティが先導し、二人はゆったりとついて歩いた。
「いやぁ、助かったよ。
案内をしてもらうつもりで来たけど、受付の青年が美人すぎて、驚いてしまった」
「それでつい断ってしまうんだもの。情けないわ、あなたったら」
「はははは。本当にそうだな」
――こういうことは、意外に少なくない。
アウレリウスは、とにかく美しい。
毎日一緒にいるセティだって、毎朝驚くくらいなのだから。
アウレリウスだから案内してもらいたい人と、アウレリウスだから案内を断ってしまう人がいる。
アウレリウスに案内をしてもらいたがる人も、彼とは普通は距離を置く。
グレイブハル城のむき出しの調度品と同様に、“触れてはいけない”となんとなく分かるからだ。
だけど時々、それが分からない人もいる。




