表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイブハル城の観測者  作者: かも ねぎ
正編 第三章『言葉にしないまま』
27/62

3-9 『言葉にしないまま』最終話


 小鳥のさえずりが空を渡る。

 どこか青みを帯びた朝の光を浴びながら、アウレリウスが城の門を開けていると、馬車が向こうからやってくる。


 アウレリウスは脇に寄ってそれを待った。


 すれ違いざま、御者の男がアウレリウスにわずかに頭を下げる。

 アウレリウスも彼に軽くお辞儀した。


 馬車が停まる。


 アウレリウスが客席を覗きこむと、マーサは片眉を上げた。


「マーサさん、おはよう」

「……おはよう」


 相変わらず無愛想だ。

 

 アウレリウスが手を差し出すと、マーサは手を振った。


「そういうのはいいんだよ。一人で降りれる」

「……そう?」

 

 彼女はアウレリウスの手を無視して馬車を降りると、彼を置いてさっさと歩き出した。

 いつも通りのマーサに、アウレリウスはふっと笑うと、御者に挨拶してから彼女の後を追った。


「今日も一日、よろしくね」


 マーサは無言で頷く。


 だが、足を止めた。視線は城壁の向こう。


「……この間のことは感謝しているよ。セーターも渡せたし、喜んでくれた。

 今日も暖かいってのに、セーター着てたんだ。ワンピースでも繕ってやったほうが良かったよ」


 アウレリウスは声を立てて笑った。


「良かったね! マーサさん」


 彼女はアウレリウスの方を少しも見ずにまた歩き出した。


 彼はその背を見送る。


 マーサは、前よりも少しだけアウレリウスを見る目が優しくなった気がする。

 

 向こうから来たセティがマーサに挨拶しているが、彼女はセティのこともそっけなくしていた。


 マーサと彼らの間の会話は、相変わらず多くはない。

 ほとんど、挨拶だけの関係だ。


 だけど、それがアウレリウスとセティには、どこか心地良かった。


 マーサが掃除してくれるグレイブハル城は、今日も空気が澄んでいる。


―――


 アルストリア王国。


 王都オルドンのすぐ近く、湖のほとりに、

 歴史あるグレイブハル城がある。


 静かで、美しくて、

 ――どこか不思議な城。


 ここには、美しい青年と少年がいる。


 錬金術が遺したホムンクルスである彼らは、

 今日も、二人だけで、静かに暮らしている。


 だけど、時々、誰かの手を借りて、その小さな温もりに触れている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ