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グレイブハル城の観測者  作者: かも ねぎ
正編 第三章『言葉にしないまま』
19/62

3-1 寄り添うものたち


 アルストリア王国、王都オルドンのすぐ近く。

 湖のほとりに、古いグレイブハル城がある。


 静かで、美しくて、

 ――どこか不思議な城。


 ここには、美しい青年と少年が暮らしている。

 彼らは、錬金術が遺したホムンクルス。


 だが、それを知る者は、この世界には誰もいない。


―――


 馬の鼻先に野菜を差し出すと、馬は口を開け、口を回すようにして咀嚼した。

 ホムンクルスの一人である青年、アウレリウスはそれを愛おしそうに見つめる。


 頬に手を当ててそっと撫で、額を馬に寄せた。

 青い瞳を閉じ、ほんの少し、寄り添うように立つ。


 朝の金の光が厩の窓から差し込み、足元を柔らかく照らしていた。

 湖の水が揺れる音が、かすかに聞こえてくる。


 ブラシで体を整えてやると、馬が顔を寄せてきた。

 思わず、声を上げて笑う。


「あはは。くすぐったいよ」


 胴の脇をそっと撫でる。

 最後に手を差し出すと、馬は頬ずりするように顔を寄せてきた。


「かわいい子。いい子だね」


 すると、厩にいたもう一頭も、撫でてもらおうと近づいてくる。

 アウレリウスは笑いながら腕を伸ばし、二頭を順に撫でた。


「今はこれでおしまいだよ。またね」


 後始末を済ませると、厩を後にする。


 そのまま湖の桟橋まで歩き、ぼんやりと景色を眺めた。


 晴れた青空。流れる雲。

 向こうには、王都が淡く霞んで見える。


 背で編まれた長い金の髪が、風に撫でられた。




 玄関ホールに戻ると、上階から降りてきた黒髪の少年と行き合う。


「セティ」


 呼ぶと、彼は静かに近づいてきた。

 腕を伸ばして抱きしめ、柔らかな髪に頬を当てる。


「掃除終わった?」

「だいたいは」

「そっか」


 この城には、彼ら二人しかいない。


 だからアウレリウスとセティは分担して、城を手入れし、馬の世話もしていた。

 大きな修繕が必要なときは人を入れるし、週に一度だけ、掃除婦も雇っている。


 そうやって、彼らは静かに城に寄り添いながら暮らしていた。


 アウレリウスは受付室の椅子に腰を下ろし、空を見上げる。

 今日もまた、彼らの一日が始まる。



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