拡散
ギャラップ世論調査、2087年2月14日 米東部標準時午前8時公表 (英語で)
「宇宙機関は1月12日の発見について、知っていることをすべて国民に伝えていると思いますか?」という質問に対し、回答者の63パーセントが「いいえ」、21パーセントが「はい」、16パーセントが「わからない」と答えた。誤差3ポイント、サンプル数は米国成人1,847人。
ロシア連邦外務省声明 — モスクワ、2087年2月14日 現地時間11時30分 (ロシア語で)
ロシア連邦は、火星における異常に関連する研究活動への全宇宙大国の公平な関与を希望する。今後数か月にわたる運用上の意思決定における透明性は、多国間体制の健全性を示す指標として、ロシア連邦により評価される。
@samira_astro_dr — 2087年2月14日 UTC14時22分 (英語で)
あと2時間足らずで発表。私の予想:1) 非自然起源を確認 2) ミッションを発表 3) スケジュールは誰もが思うより厳しい 4) 乗組員の名前は出さない。私はこれまで予想を外したことがあるか? 4番については外していることを願う。
合同記者会見 — ウィーン、2087年2月14日 中央ヨーロッパ時間16時0分 世界538のメディアにより同時生中継、52言語に同時通訳される。壇上、明るい色の木製の演壇の後ろに、視聴者にとって初めての顔がある — 65歳、グレーの短く刈り込んだ髪、紺色のスーツ、薄い色の瞳。背後には、宇宙探査国際調整事務局のロゴが入った大きな水色の旗、そして横に6本の国旗。観客席の最前列の隅に、インガー・リンドクヴィストが控えめに座っている。
(英語で)
ベルモンド — おはようございます。私はアリスティード・ベルモンド、宇宙探査国際調整事務局の議長です。私が務めるこの役職は、加盟各国政府の共同任命によるものです。本日が私の最初の公式発言です。
間。
ベルモンド — 33日前、MRO-7オービターはオリンポス山の山頂に、既知の自然形成のいかなる統計的閾値をも超える特徴を有する構造物を検出しました。当該検出の真正性は、1月13日に参加各国宇宙機関により確認されました。その瞬間から、私が議長を務める事務局は、有人探査ミッションの計画を調整してまいりました。
間。
ベルモンド — 本日、以下を発表いたします。当該ミッションは「シャパレッリ」と命名されます。打ち上げはフランス領ギアナのクールー宇宙基地から、2087年7月18日。火星軌道到達予定は2088年1月の第一週。同じ週内にオリンポス山の山頂台地への着陸予定。地表ミッション予定期間は35日。地球軌道帰還は2088年6月を予定しております。
間。
ベルモンド — 乗組員は6名の宇宙飛行士で構成され、参加各国宇宙機関により1月12日に選定されました。米国NASA、ダニエル・R・ヘイズ大佐、コマンダー。欧州宇宙機関に出向のイタリア空軍ルカ・フェッラーロ少佐、副コマンダーおよびランダーパイロット。ロシア連邦ヴェルナツキー研究所のエカテリーナ・ミハイロワ教授、エクソ考古学者。日本宇宙航空研究開発機構のハルカ・タナカ博士、機載システム担当。インド宇宙研究機関のヴィクラム・アイヤー博士、医師およびエクソ生物学者。中国国家航天局のチェン・ウェイ博士、惑星地質学者。
間。
ベルモンド — 6名の宇宙飛行士は現在、ジョンソン宇宙センター(ヒューストン)におりまして、そこで加速訓練プログラムを完了いたします。次に、3分間の事前録画によるインタビューをご覧いただきます。それぞれが自己紹介をいたします。
画面が切り替わる。3分間、6つの顔が交互に画面に映る。それぞれ30秒ずつ話す。ヘイズは簡潔に、職務的に。フェッラーロは字幕付きのイタリア語で、穏やかに。ミハイロワは英語で、雄弁に。タナカは字幕付きの日本語で、控えめに。アイヤーは英語で、落ち着いて。チェン・ウェイは英語で、短く。
インタビューが終わると、カメラはベルモンドに戻る。
ベルモンド — 質問をお受けします。時間の都合上、各社一問でお願いいたします。
記者(最前列、英語で) — 議長、なぜ訓練が6か月だけなのですか?
ベルモンド — 我々に与えられた時間がそれだけだからです。
記者(BBC) — 議長、第二のミッションは予定されていますか?
ベルモンド — 現時点で第二の国家ミッションは計画されておりません。
記者(新華社) — 議長、知的生命体が発見された場合、各国政府との連絡経路はどうなるのですか?
ベルモンド — その問いは、即興で答えるには十分にデリケートな性質を有しております。4週間以内に公表予定のプロトコルをご参照ください。
記者 — 議長、競合ミッションについて民間アクターとの協議があったかどうか、国民には知る権利があると思います。
ベルモンド — 私はそのような協議の存在を承知しておりません。
記者会見は47分続く。104の質問が投げかけられる。回答が得られるのは31問。
CNNリアルタイム世論調査、ウィーンの記者会見中および直後に実施 — 2087年2月14日 (英語で)
シャパレッリ・ミッションに賛成:70パーセント。反対:18パーセント。決めていない:12パーセント。賛成のうち、41パーセントが「熱意ある」、29パーセントが「慎重に期待している」と回答。
RAI 1、TG1臨時版 — 2087年2月14日 21時0分 (イタリア語で)
司会者 — 今夜のスタジオには、INAF(国立宇宙物理学研究所)の天体物理学者、マルコ・ペトルッチ教授をお招きしています。1か月前、1月12日のリーク直後にも当番組にご出演いただきました。ペトルッチ教授、おかえりなさい。 ペトルッチ — こんばんは。 司会者 — 教授、本日ようやく、火星へ行くことが分かりました。今後数か月、私たちは何を期待すればよいのでしょうか? ペトルッチ — 何も期待しないことを期待すべきです。説明させてください。探査ミッションとは、不確実性を減らすための道具です。我々の仮説を確認するためのものではありません。オリンポス山上の構造物は、我々が考えているとおりのものかもしれませんし、まったく別のものかもしれません。6名の宇宙飛行士の任務は、我々が好む答えを与えることではありません。あるがままの答えを与えることです。 司会者 — そして教授ご自身は、何を期待されているのですか? ペトルッチ — 私は、驚かされることを期待しています。それが科学者として持てる唯一の誠実な期待です。
教皇庁プレスオフィス声明 — 2087年2月14日 22時0分 (イタリア語で)
教会は、宇宙探査国際調整事務局の発表を歓迎いたします。教皇聖下は、6名の宇宙飛行士とそのご家族に思いを馳せられ、シャパレッリ・ミッションのあらゆる段階を祈りをもって伴走されます。真理の探究は、最終的には常に、創造主に捧げられた一つの奉仕の形であると確信しております。
フィナンシャル・タイムズ、市場欄 — 2087年3月23日 (英語で)
「宇宙ノンフィクション」出版市場は、過去6週間で売上が412パーセント増加した。世界ベストセラー6点中5点が、火星探査、推測的考古学、宇宙ミッションの歴史を直接扱った書籍である。出版各社は、第二四半期に向けて67点の新刊出版契約が結ばれたと報告している。
エジプトでは、2087年最初の2か月で観光客の入国数が2086年同期比で73パーセント増加した。ギザとサッカラの遺跡に集中している。「エネルギーの共鳴」と自称する非宗教的巡礼は、シナイ山への伝統的な宗教的巡礼を初めて上回った。
タイムズ・オブ・インディア、4月7日版 — バンガロールの小学校が報告したところによれば、3年生の児童が「夜空」をテーマにした週に描いた絵のうち、38パーセントがオリンポス山の山頂を描いたものであり、月を描いたものは12パーセントに留まった。残る50パーセントはさまざまな対象を描いたものであった。
ウォール・ストリート・ジャーナル、6月4日版 — 2087年 (英語で)
数週間前から、テキサス州西部に拠点を置く航空宇宙・石油系コングロマリット、ブレナー・インダストリーズの株式に異常な値動きが見られる。同社の株価は、特段の運用上の理由なく、過去3週間で47パーセント上昇した。エルパソ郊外にある同社の民間基地周辺地域の住民は、夜間飛行の増加と、米国各地からの軍人の到着を報告している。同社に照会したが、コメントを得られない。創業者兼CEOのマーカス・ブレナー、71歳、現在フォーブス・リスト第3位、推定資産1,870億ドル、過去8か月間インタビューに応じていない。
@MarcusBrenner_official — 2087年6月5日 米東部標準時9時0分 (英語で)
The truth will out.(真実は明らかになる)
@FreedomSky_TV — 米東部標準時9時4分 (英語で)
我々はあなたと共にいる、マーカス。国民はあなたと共にいる。世界に伝える時だ。
@MarcusBrenner_official — 米東部標準時9時6分 (英語で)
Soon. Very soon.(もうすぐ。すぐに。)
ブレナー・インダストリーズ記者会見 — コットンウッド・ランチ、テキサス州ハドスペス郡、2087年6月12日 米中部時間13時0分 世界生中継、同社制作。背景:砂漠の中の発射台。発射台の上には、高さ約90メートル、産業用プロファイルのグレーの船。側面に赤い文字でLOWELLと書かれている。発射台の前、低い演壇の上に、グレーの宇宙服を着た4人の人物が、ヘルメットを手に持って立っている。彼らの顔はカメラに映されていない。手前、一人だけで、マーカス・ブレナーが立っている。カウボーイハット、茶色の革ジャケット、ジーンズ、ブーツ。71歳、身長190センチ、低い声。
(英語で)
ブレナー — おはよう、アメリカ。おはよう、世界。
4秒の間。彼はカメラに向かって微笑む。
ブレナー — 私の名前はマーカス・ブレナー。たぶん皆さんは私を知っているだろう。知らない人のために言うと:私は、無から何かを築き上げた男の息子であり、今日皆さんに発表する一つのアイディアの父である。私の後ろに、その第一の産物が見える。
カメラが船にズームする。
ブレナー — 名はローウェル。19世紀末に火星の上で我々が孤独ではないこと、そしてそのことを口にした、アメリカ人天文学者パーシバル・ローウェルにちなんで。彼はその代償を払わされた。彼のすべての学術同僚たち、名門大学の科学者たちが、彼の前で扉を閉ざした。彼は狂っていると言われた。存在しないものを見ていると言われた。150年後、我々はここにいる。太陽系で最も高い山の頂上にある、ピラミッドの衛星画像を眺めながら。
間。
ブレナー — パーシバル・ローウェルは正しかった。彼はずっと知っていた。そして今、我々全員が知っている。
間。
ブレナー — 私の後ろにある船は、2087年8月28日、国家機関の船がクールーを出発してから6週間後に出発する。我々の軌道はより直接的だ。シャパレッリの数日後、もしかするとほぼ同時、あるいはそれより少し後に、火星軌道に到達する。我々はオリンポス山に着陸する。すべてを記録する。すべてを送信する。何もフィルタリングされない。何も隠されない。宇宙探査の歴史上初めて、世界がそこにあるものを、リアルタイムで、仲介者なしで、目にすることになる。
間。
ブレナー — 我々の乗組員は、私が自ら選んだ4名で構成されている。彼らは自由な人々である。どの政府のためにも働いていない。彼らがここにいるのは、ここにいることを彼ら自身が選んだからである。彼らの名前と経歴は、今後数週間で皆さんが知ることになる。
カメラが宇宙服姿の4名に向く。ヘルメットはまだ手に持たれている。太陽光の角度のために、4名の顔は影の中にとどまっている。
ブレナー — シャパレッリに、一言。ヘイズ大佐、フェッラーロ少佐、ミハイロワ教授、タナカ博士、アイヤー博士、チェン博士に、一言。皆さんは善良な方々だ。皆さんに恨みはない。しかし、皆さんがあそこに到着して、見つけるものを見つけたとき、我々がすぐ後にいることを知っておいてほしい。そして、世界は、真実を隠す動機を持たない者から真実を聞くことを待っている、ということも。
間。
ブレナー — 幸運を祈る。ありがとう。
記者会見は11分続く。ブレナーは質問を受け付けない。4名の乗組員に伴われて演台を後にする。彼らの顔は最後まで、正面からは一度もカメラに映されない。
ザ・ウィットフィールド・アワー、生中継インタビュー — ニューヨーク、2087年6月12日 米東部標準時21時0分 スタジオに:サラ・ウィットフィールド、68歳、19年間にわたり当該夜間報道番組の司会を務めている。彼女の前、ビデオ通話で、おそらく彼女のテキサスの所有地内と思われる飾り気のない部屋から、革ジャケットを着たままのマーカス・ブレナー。
(英語で)
ウィットフィールド — ブレナー氏、本日はご出演いただきありがとうございます。直ちに、米国の視聴者が8時間にわたって発し続けている質問をいたします。4名の人を火星に送り出す資格が、あなたにはありますか?
ブレナー — サラ、私は誰一人として火星に送り出してはいない。私は、この国の最高の民間エンジニアによって選抜された、有資格の人々が遂行するミッションに資金提供しているのだ。船を操縦するのは私ではない。私は船を建造したのだ。
ウィットフィールド — その船は安全ですか?
ブレナー — シャパレッリより安全だ。躊躇なく申し上げる。過去4年間、NASAから、ロスコスモスから、ロッキードから、ボーイングから辞職した最高のエンジニアたちによって設計された。きちんと機能するものを作るために、自分の職を捨てることを選んだ人々によってだ。官僚主義なしで。1本のボルトを承認するのに8か月かける安全委員会なしで。
ウィットフィールド — ブレナー氏、あなたは船が4年前から建造中だとおっしゃいました。4年前というのは、1月12日の火星のイベントはまだ起きていません。何のためにこの船を建造していたのですか?
1秒の間。
ブレナー — サラ、あなたの質問の中に答えが含まれている。あなたは私に「なぜ、国民が火星について知るより前に、すでに準備の整った船を持っていたのか」と問うている。そして私は答える:「まさにそのとおりだ。」
ウィットフィールド — というと?
ブレナー — つまり、国民が火星の構造物について知ったのが今年1月13日であるからといって、宇宙機関がそれ以前に知らなかったということを意味しない。民間部門の特定の人々が、それ以前に知らなかったということを意味しない。予備的検出は何年も前にさかのぼる。各機関はそれを公表しないことを決定した。我々の中の一部は、代わりに、準備することを決定した。
ウィットフィールド — ブレナー氏、あなたは国際宇宙機関が、火星における人工構造物の存在を何年も隠蔽してきたと非難しているのですか?
ブレナー — サラ、私は誰一人として非難していない。私は事実を述べているだけだ。彼らは知っていた。どれだけ長くかは、私には言えない。他に何を隠しているかも、私には言えない。私がお伝えできるのは、私のミッションはあそこへ行き、見つけたものをリアルタイムで、フィルタなしで、全世界に見せるということだ。シャパレッリがしないことを。
ウィットフィールド — シャパレッリが情報をフィルタリングするとおっしゃっているのですか?
ブレナー — シャパレッリには、自国の機関に忠誠を誓った6名の宇宙飛行士がいる、と申し上げている。そしてその機関は、それぞれの政府に依存している。ミハイロワ教授が何かを見たとき、最初の受信者はクレムリンとなる。チェン博士が何かを見たとき、最初の受信者は北京となる。それが普通だと思われるか?
ウィットフィールド — 彼らは科学者です。
ブレナー — ガリレオも科学者でした、サラ。それでも我々は彼に撤回を強いたのです。
間。
ウィットフィールド — ブレナー氏、最後の質問です。火星で何が見つかると思いますか?
ブレナー — サラ、誠実な男としてお答えする。あなた方には決して告げられなかったであろうものが見つかると、私は考えている。「建設者たち」が見つかると、私は考えている。我々が孤独ではない、そして非常に長きにわたって孤独ではなかった、その証拠が見つかると、私は考えている。私に分からないのは、ほかに何が見つかるかだ。しかし一つ、サラ、お約束する。今この瞬間に我々を視聴している皆さまにもお約束する:我々が何を見つけようとも、皆さまにお伝えする。フィルタなしで。遅延なしで。政府の許可なしで。これが我々の約束だ。
ウィットフィールド — ブレナー氏、ありがとうございました。
ブレナー — こちらこそ、サラ。アメリカの皆さま、良い夜を。
インタビューは22分続く。ブレナーは26問のいずれにおいても揺るがない。
シャパレッリ・ミッション参加宇宙機関合同声明 — 2087年6月13日 中央ヨーロッパ時間9時0分 (英語で)
火星探査に関連するすべての科学的取り組みの成功を祈念する。
ニューヨーク・タイムズ社説、2087年6月14日 (英語で)
マーカス・ブレナーの発表は、米国民および世界の人々が今後数か月で向き合わなければならない問いを提起している。それは安全性の問いではない。ローウェル計画の安全性は、所管の連邦機関によって確認されるであろう。法的な問いでもない。宇宙開発は1967年の国連条約により法的に開かれている。それは正統性の問いである。人類が、人間ではないかもしれない何かとの最初の接触において、人類を代表する権利を誰が有するのか?そして、二つの異なる声がともに代表を主張するとき、我々はいずれの声に耳を傾けるべきなのか?
ピュー・リサーチ世論調査、2087年6月15日、米国成人1,000名対象 (英語で)
「火星にあるものについて真実を発見するに当たり、どちらのミッションがより信頼できると思いますか」という質問に対し、38パーセントがローウェル、34パーセントがシャパレッリ、28パーセントがわからないと回答。
教皇庁プレスオフィス — 2087年6月13日、およびその後数日間 (イタリア語で)
発表なし。
朝日新聞 — 2087年6月18日付社説、朝刊
5か月前、人類は一つの閾の前に立った。3日前、その閾の前に、我々はもう一つの閾を築いた。35日後、一隻の船がクールーから出発する。その6週間後、もう一隻の船がテキサスから出発する。両船は、我々のものではない世界の、同じ台地に、ほぼ同時に到達する。何を見つけるか、我々は知らない。ただ知っていることは、何を見つけようとも、我々にはそれを二つの異なる仕方で語るということである。そのとき、おそらく、我々はこう気づくであろう。真の境界は、あそこにあるものとの境界ではなかった。真の境界は、我々と我々のあいだにあったのだ。




