第3章:ひび割れた優しさ
目が覚めると、部屋の中はまだ夜の名残を引きずっていた。カーテンの隙間から漏れる光が壁に細い線を一本だけ描いている。
体調はすっかり元に戻っていたが、澄伽の意識はどこか重い。
天井を見つめたまま、澄伽はしばらく体を起こさずにいた。外からはまだ人の少ない通りを走る車の音が遠く低く響いてくる。
昨夜の疑問がまだ胸の底に沈んでいる。もしかして、私だけなのだろうか。答えの出ないまま眠りに落ちた問いは、朝になっても輪郭を保ったままだった。
寝返りを打つたびに、その問いの重みが少しずつ位置を変える。答えを急かすものは何もないのに、澄伽の意識だけが先を急いでいた。
布団を出て、いつもの手順で身支度を整える。歯を磨きながら鏡を見ると、いつも通りの自分がそこにいたが、目の奥だけが少し違う光を宿しているように見えた。
澄伽は、洗面台の水を止め、しばらく自分の顔を見つめた。何かが変わったわけではない。それなのに、鏡の中の自分がどこか他人めいて映る朝だった。
台所に立ち、パンを一枚焼く。焼ける匂いが部屋に満ちる間、澄伽は昨日買った喉飴の小袋のことを思い出していた。結局まだ、誰にも渡せていない。
トースターの中でパンがゆっくりと色づいていくのを眺めながら、澄伽は鞄の中身をぼんやりと思い浮かべる。渡す機会があるかどうかもわからないまま、今日も鞄に入れて持っていくつもりだった。
トーストにバターを塗りながら、澄伽はふと苦笑した。買ったはいいものの、渡すきっかけを逃したまま鞄の底に沈んでいる、そんな自分の中途半端さが少しおかしかった。
清澄白河の駅までの道は今朝も静かで、橋の上から見下ろす川面は朝の光を受けて銀色に光っていた。
いつもならただ通り過ぎるだけの景色に、澄伽は今日も足を止めてしまう。理由を探そうとして、すぐにやめた。理由を探すこと自体が、もう答えの一部を示しているような気がしたからだ。
川沿いの遊歩道では、犬を連れた老人がゆっくりと歩いていた。すれ違いざま、澄伽は小さく会釈をする。見慣れた朝の光景の一つだった。
そういう小さな習慣の一つひとつを、澄伽はこれまで深く考えたこともなかったが、今日はなぜかその一つひとつがいつもより丁寧に目に映る。
橋を渡り切ったところで、澄伽は一度だけ振り返った。川面はもう朝の光に馴染み、銀色の輝きは白っぽく薄れ始めている。同じ景色でも、見る時間によってこんなにも表情を変えるのだと今更ながら気づかされた。
オフィスに着くと、燈真はまだ来ていなかった。珍しいことだった。いつもなら澄伽より先にデスクへ着いているはずの席が、今朝は空いている。
空いた椅子を横目で見ながら、澄伽は妙な落ち着かなさを覚えた。いつもそこにあるはずのものがないというだけで、こんなにも意識してしまうのかと自分でも少し驚く。
パソコンを立ち上げながら、澄伽は無意識に営業企画部の島へ目をやってしまう自分に気づき、すぐに視線を戻した。
十分ほど遅れて燈真がフロアに現れたが、いつもの軽い足取りではなく、心なしか肩の位置が低かった。
「おはよう」
声のトーンもいつもより少し掠れている。澄伽が挨拶を返すと、燈真は小さく頷いただけで、すぐに椅子に沈み込んだ。
いつもなら続くはずの軽口も今朝は聞こえてこず、フロアの空気だけがいつも通りに動いている。
「大丈夫?」
思わず声をかけると、燈真は一瞬だけ驚いたような顔をしたが、それからいつもの調子を装うように笑ってみせた。
「平気平気。ちょっと寝不足なだけ」
その言葉に、澄伽は昨日の朝、自分が同じセリフを口にしたことを思い出した。「平気平気。ちょっと寝不足なだけ」
まったく同じ言い回しだった。ごまかすときの言葉まで自分と似ている、そのことに気づいて澄伽は妙に落ち着かない気持ちになった。
誰かのまねをしたわけでもないのに、困ったときに出てくる言葉が重なる。それは案外、近くにいる時間の長さが教えてくれることなのかもしれなかった。
午前中、燈真は珍しく口数が少なかった。電話対応の声にも張りがなく、資料をめくる手つきもどこか鈍かった。
これまでの澄伽なら、その変化に気づかなかったかもしれない。忙しいのだろう、疲れているのだろう、そう思って済ませていたはずだ。
けれど今日は違った。燈真の一挙手一投足がやけに目に留まる。パソコンの画面を見つめる横顔、コーヒーを口に運ぶ間隔、資料の束をそろえる手の動き。
そのどれもがいつもより少しだけ重く見え、理由を知らないまま澄伽はただその重さを感じ取っていた。
昨日までの澄伽なら、こんな風に誰かの調子の悪さに気を留めることはなかったはずだ。自分のことで手一杯で、周りを観察する余裕などなかった。
それなのに今は、燈真の様子ばかりが目に入る。理由を探そうとして、澄伽はまた同じところで立ち止まってしまう。
昼前、澄伽は資料を届けるために営業企画部の島へ近づくと、燈真がこめかみを押さえているのが見えた。
デスクの上には飲みかけのペットボトルと開封されたままの頭痛薬のシートが置かれており、誰かに見られることを想定していなかったのか、隠す様子もなかった。
「頭痛い?」
「え、いや、そんなことないけど」
明らかに強がっている声だった。澄伽はしばらくその横顔を見つめた。目の下にうっすらと隈があった。
いつもは気づかなかった、あるいは気づこうとしなかった疲れの色だった。仕事中、彼がこんな顔をしていたことがこれまで何度あったのだろう。
薬のシートを見なかったことにするべきか、澄伽は一瞬迷ったが、結局は何も言わずにそっと視線を戻した。それが今の自分にできる精一杯の気遣いのように思えた。
「無理しないでよ」
「それ、昨日俺が澄伽に言ったセリフじゃん」
そう言って燈真は小さく笑ったが、その笑い方にはいつものような余裕がなかった。口角だけが動いて、目のほうはついてきていない、そんな笑い方だった。
昼休み、澄伽は一人で屋上の休憩スペースに向かった。今日はどうしても誰かと話す気分にはなれなかった。
ベンチに座り、ビルの隙間から見える空を眺める。雲が薄く伸びて、今日一日の天気を静かに予告していた。
風が吹くたび、屋上の柵に絡まった蔦の葉が小さく揺れ、その音だけが街の喧騒から切り離された場所にいることを教えてくれた。
遠くに見える高層ビルの窓ガラスが傾き始めた光を受けて一斉に白く光り、澄伽はそのまぶしさに目を細めながらしばらく何も考えずに座っていた。
スマートフォンを取り出し、社内チャットを開く。燈真からいつも通りの業務連絡が届いていたが、文面はいつも通りに見えるのに送信時刻がいつもより遅かった。
こんな些細なことにまで気を留めてしまう自分に、澄伽は小さく苦笑した。時刻の数字一つで、これほど心が動くとは思わなかった。
鞄の底から昨日買った喉飴の小袋を取り出してみた。渡すつもりで買ったはずなのに、今日はまだ渡せていない。今日の燈真の様子を見ていると、なおさら声をかけるきっかけを掴めなかった。
昼休みの終わりを告げるチャイムが遠くのフロアから微かに響いてくる。澄伽は小袋をそっと鞄に戻し、腰を上げた。
午後、営業企画部のフロアでちょっとした騒ぎが起きた。取引先からの急な変更要求に後輩社員が対応に追われていたのだ。
電話の受話器を握りしめたまま、後輩は明らかに慌てた様子で周囲に助けを求めていた。フロア全体にいつもとは違う緊張した空気が流れた。
澄伽が通りかかったとき、燈真がその後輩に向かって声を荒げているのが聞こえた。
「なんでこれ、先に確認しなかったんだ」
いつもの軽い口調とはまったく違う鋭い声で、後輩は顔を青くして俯いていた。
澄伽はその場に立ち尽くした。燈真がこんな声を出すところを、これまで見たことがなかったからだ。
フロア全体が一瞬だけ静まり返り、誰もがそのやりとりに耳をそばだてているのがわかった。澄伽はそっと視線を逸らし、何も見なかったふりをしようとしたが、うまくいかなかった。
数分後、燈真は自分から後輩のもとへ戻り、静かな声で言葉を継いだ。
「さっきはきつく言いすぎた。悪い」
後輩は驚いた顔をしていたが、素直にうなずいていた。その一連のやりとりを、澄伽は少し離れた場所から見ていた。
謝るまでの間合いが驚くほど短かったこと、そして苛立ちを見せたことよりもその謝り方の潔さのほうが澄伽の記憶に強く残った。
誰にでも同じように優しいわけではない。当たり前のことなのに、澄伽はそれを今初めて実感として理解した気がした。
これまで澄伽の目に映っていた燈真は、いつも余裕を持って周りに気を配れる人だった。今日見た彼は、余裕を失っても、それでも誰かに謝りに行ける人だった。どちらも同じ人の中にあるのだと思うと、澄伽の中で彼の輪郭がまた少し変わった気がした。
夕方、澄伽は自分のデスクで午前中に頼まれた資料をまとめていた。ふと視線を上げると、燈真が窓の外を見つめたまましばらく動かずにいるのが見えた。
その横顔にはいつもの余裕も軽さもなく、ただ疲れたような、それでいてどこか寂しいような表情が浮かんでいた。
窓の外には橙色に染まり始めたビル群が広がっており、燈真の視線の先に何があるのかは、澄伽にはわからなかったが、その背中がいつもより小さく見えることだけが確かだった。
澄伽は思わず立ち上がり、給湯室へ向かった。特に理由はなかったが、何かをせずにはいられなかった。
給湯室には誰もいなかった。澄伽は棚からティーバッグを取り出し、電気ケトルのスイッチを入れた。沸き上がるまでの間、窓の外に広がる夕焼けをぼんやりと眺めていた。
湯気の立つカップを持ち、フロアへ戻る足取りは行きよりも少しだけ速かった。何を言えばいいのかまだ決めていないまま、澄伽は営業企画部の島へ向かっていた。
戻ってきたとき、澄伽の手には温かいほうじ茶の入った紙コップがあり、それを燈真の机にそっと置いた。
デスクの上の頭痛薬のシートがまだそのままになっているのを見て、澄伽はそれを見なかったふりをしながら、紙コップを彼の視界に入るよう少しだけ位置を整えた。
「はい、これ」
燈真は驚いた顔で澄伽を見上げ、その表情に澄伽は自分でも思いがけないほど強い満足を覚えた。
「何、急に」
「別に。ついでのことだから」
昨日、燈真自身が使ったセリフをそのまま返した。燈真は一瞬だけきょとんとした顔をした後、小さく笑った。
「それ、俺のセリフのパクリじゃん」
「気づいた?」
「気づくよ、それくらい」
短いやりとりだったが、燈真の表情から強張りが少しだけ抜けたのが、澄伽にはわかった。燈真は紙コップを両手で包み、しばらく黙って湯気を見つめていた。
「今日、なんかあった?」
澄伽が尋ねると、燈真は少し間を置いてから答えた。
「まあ、ちょっとな。人に強く当たっちゃうのは、あんまり好きじゃないんだけど」
「さっきの後輩の子?」
「見てたのか」
「たまたま、通りかかっただけ」
燈真は視線を落とし、紙コップの縁を指でなぞった。澄伽はそのしぐさが、自分が考え事をするときの癖と似ていることに気づいた。
指の動きまで似てしまうものなのだろうか、と益体もないことを考えながら、澄伽は隣の椅子に軽く腰かけた。
「本当はあんな言い方したくなかった。ただ、今日は虫の居所が悪かったんだと思う」
珍しく弱音めいた言葉だった。澄伽はそれをどう受け止めればいいのかしばらく迷った。
普段の彼なら、こういう弱さを見せることはない。だからこそ、その一言がやけに重く、そして同時にどこか心地よく耳に残った。
「誰にでも、そういう日はあるよ」
「澄伽にも?」
「私は毎日そんな感じだけど」
冗談めかして返すと、燈真は久しぶりに声を出して笑った。その笑い方から、いつもの調子が戻り始めているのがわかった。
「澄伽といると、なんか調子狂うな」
「悪い意味で?」
「さあ、どうだろうな」
はぐらかすような答え方だったが、その口調には棘がなく、むしろどこか柔らかい響きがあった。
澄伽は自分の席に戻りながら、今の短いやりとりを頭の中で何度も反芻していた。守られる側だった自分が初めて誰かを気遣う側に回った、そんな感覚だった。
退勤時刻が近づき、澄伽は帰り支度を始める。燈真はまだ席に残り、何かの資料に目を通している。
澄伽はパソコンをシャットダウンしながら、ちらりと隣の島に目をやった。さっきまでの弱った様子は、もうどこにも見当たらない。いつも通りの落ち着いた横顔が、そこにあった。
「先に帰るね」
「うん、お疲れ」
いつもなら一緒に帰ろうと声をかけてくるはずの燈真が今日はそうしなかったため、澄伽は少しだけ拍子抜けしながら一人でオフィスを出た。
引き止めてほしかったわけではないが、声をかけられなかったことが思いのほか胸に残った。
清澄白河の駅までの道を澄伽は一人で歩き、夕方の光がビルの谷間を橙色に染めているのを見た。
いつもなら隣にいる気配がないというだけで、歩幅の取り方すら少しぎこちなく感じられ、慣れているはずの道のりが今日は妙に頼りなく思えた。
川沿いの道に差し掛かったとき、澄伽はふと足を止めた。今日一日の燈真の様子が頭から離れない。
水面を渡る風が昼間の熱をゆっくりと連れ去っていく中、澄伽はその風に目を細めながら今日見た燈真の顔をもう一度思い浮かべた。
対岸に並ぶ古い蔵の輪郭が夕闇の中で少しずつぼやけていく。この道を何度歩いてもこんな風に足を止めることはこれまでなかった。
誰にでも優しいわけではない人、誰かに強く当たってしまうこともある人、そしてそのことを後悔してすぐに謝りに行ける人。
そのどれもが、澄伽の知らなかった燈真の顔だった。知らなかったことが増えるたびに、なぜか距離が縮まっていくような不思議な感覚があった。
マンションに帰り着き、澄伽は電気をつけないまましばらく玄関に立っていた。今日一日の記憶がいつもよりゆっくりと胸の中を巡っている。
靴を脱ぐ動作すらいつもより緩慢で、頭の中はまだ屋上で見た空や燈真の疲れた横顔でいっぱいだった。
コートを椅子の背にかけ、澄伽はソファに深く沈み込んだ。天井の照明の光がいつもより白く冷たく感じられた。
紙コップを渡したときの燈真の驚いた顔、虫の居所が悪かったという素直な言葉、あの一瞬だけ見えた弱さの気配。
一つひとつを思い出すたびに、澄伽の中で何かがゆっくりと形を変えていくようだった。
これまでの澄伽は、燈真を「頼れる人」としてしか見ていなかったのかもしれない。困ったときに助けてくれる人、優しくしてくれる人、そういう一方的な役割の中に彼を押し込めていたのかもしれない。
そう考えると、少しだけ申し訳ない気持ちが湧いてくる。彼にも疲れる日があるという当たり前のことにすら、これまで気づこうとしてこなかったのだ。
けれど今日、澄伽は初めて、燈真にも疲れる日があり、苛立つ日があり、後悔する夜があることを知った。
知ってしまえば、もう元には戻れない。今までのようにただ守られるだけの立場ではいられなくなる、という予感が静かに澄伽の中に居座っていた。
キッチンで湯を沸かしながら、澄伽は今日渡したほうじ茶のことを思い出す。誰かのために何かをするという行為がこれほど胸を満たすものだとは、知らなかった。
湯が沸くまでの短い時間、澄伽はケトルの音に耳を澄ませていた。細く高い音が次第に低く太くなっていくその変化を聞きながら、頭の中では今日一日のことを何度も繰り返し思い返していた。
これまでは、いつも受け取るだけだった。飲み物も、気遣いも、送ってくれることも、今日初めてその逆をやってみた。
たったそれだけのことなのに、澄伽の中で何かが静かに動いた気がした。誰かに必要とされることよりも、誰かを気にかけることのほうがこんなにも心を落ち着かせるものだとは思わなかった。
湯気の立つカップを持ち、窓辺に立つ。外の景色はいつもと変わらない夜で、街灯の明かりが川面に細く伸びていた。
対岸のビルの一室にまだ明かりがついているのが見え、誰かがまだ働いているのだろうかと、澄伽は考えた。その明かりを見ながら、ふと、燈真も今頃どこかで似たような夜を過ごしているのだろうかと、澄伽は思った。
もし自分が今日、あの紙コップを渡していなかったら、燈真は今ごろあの疲れた顔のまま一人で帰っていったのだろうか。
そう考えると、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚があった。まだ名前はついていないけれど、確かにそこにある感情だった。
眠る前、澄伽はもう一度今日の燈真の言葉を思い返した。「人に強く当たっちゃうのは、あんまり好きじゃない」そう言った彼の声には、これまで聞いたことのない素直さがあった。
その素直さに触れられたことが、今日という一日の中で澄伽にとって何より大きな出来事だったのかもしれない。
スマートフォンの画面がふと光り、燈真から短いメッセージが届いた。「今日はありがとう、助かった」それだけの一文だった。
澄伽はしばらくその文面を見つめてから短く返信を打ち、「どういたしまして、また明日」と送信ボタンを押した。すると、画面の明かりがゆっくりと消えていった。
窓の外で、遠くの電車の音がまた一つ通り過ぎていく。今日という日を見送るように、澄伽はゆっくりと目を閉じた。
暗闇の中で、今日一日の出来事がもう一度だけ順番に浮かび上がってくる。空いた椅子、疲れた横顔、荒げた声、素直な謝罪。そのどれもが、これまで知らなかった燈真の顔だった。
一つの顔しか知らなかった頃には戻れない。そのことに澄伽は不思議と寂しさを感じなかった。むしろ知ることが増えるたびに、彼という存在が少しずつ立体的になっていくようで、それが妙に心地よかった。
まぶたが重くなり始めても、頭の隅では今日のやりとりが繰り返し再生されている。澄伽は最後にもう一度だけ、「澄伽といると調子狂うな」という燈真の言葉を思い出した。
その一言の意味を、今の澄伽はまだうまく掴めていない。ただ、悪い意味ではなさそうだということだけがなぜか確信できた。
呼吸が少しずつ深くなり、意識が眠りの縁へと近づいていく。最後に浮かんだのは、給湯室の窓から見た夕焼けの色だった。
澄伽の三日目はこうして静かに終わり、誰かを気にかける側に回ったという小さな変化だけを胸に残した。




