第十一話 設定資料集Ⅰ――帝都神律大学・入学編
帝都神律大学・新入生向け学内資料
追加分類:法則災害学群/未定義現象関連記録/黒瀬灯消失事件/外部観測事例
本資料は、黒瀬零と獅堂剛毅による《公開査問》終了時点までに確認された人物、制度、施設、`命題`、事件および世界構造上の異常を整理したものである。
なお、本資料に記載される情報の一部には、相互に矛盾する内容が含まれている。
帝都神律大学では、矛盾を発見した場合、安易に誤植、記録漏れ、担当部署の入力ミスと判断してはならない。
まず、法則災害、歴史改変、因果切断、観測結果の競合、または複数の現実が同時成立している可能性を確認すること。
ただし、履修登録の不備については、法則災害ではなく本人の提出忘れである場合が多い。
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一、世界の基礎情報
《大公理崩壊》
西暦二〇四六年に発生した、世界規模の法則災害。
それ以前まで普遍的であり、場所、時代、観測者によって変化しないと考えられていた自然法則が、地域、観測主体、歴史、思想などの条件によって異なる挙動を示すようになった。
代表的な変化は、以下のとおり。
* 重力方向の局所的な変動
* 空間次元数の増減
* 時間進行方向の逆転
* 原因と結果の対応消失
* 複数の歴史の同時成立
* 観測者ごとに異なる現実の成立
* 人間の思想、信念、人生観による世界法則への干渉
《大公理崩壊》以降、人類は世界を「絶対に正しい一つの法則によって成立するもの」として扱えなくなった。
現在の世界は、複数の理論、観測、規程、合意によって、暫定的な整合性を維持している。
ただし。
暫定的であることは、偽物であることを意味しない。
世界が一つの正解によって成立していないとしても、そこで生きる者の経験、選択、関係まで無効になるわけではない。
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`命題`
個人の思想、信念、人生観、経験などが、世界法則として発現したもの。
単なる超能力とは異なる。
何が起きるのか。
だけでなく。
なぜ、その人物にとって、その現象が起きなければならないのか。
という理由が、能力の成立に深く関係する。
`命題`は、原則として以下の三要素から構成される。
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前提
能力が成立するために必要となる条件。
使い手が世界をどのように理解しているかという、能力の出発点でもある。
例として、獅堂剛毅の`万象は我が礎`では、
――自分を支える何かが存在する。
という認識が根本的な前提となる。
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論証
前提から能力効果へ至る理屈。
使い手の信念、経験、判断などによって形成される。
獅堂の場合、
――自分を支えるものは自らの礎である。
――礎の上に存在するものへ、支える者は責任を負う。
という思想が論証となる。
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結論
前提と論証を経て、現実へ適用される最終的な結果。
獅堂の場合、
――自らの礎に支えられる存在の位置、上下、落下方向を決定できる。
という形で発現する。
同じ炎を発生させる能力であっても、使い手の前提、論証、結論が異なれば、別の`命題`として扱われる。
また。
似た結果を生じさせる二つの`命題`が、同じ能力であるとは限らない。
結果だけでなく、そこへ至る理由を確認すること。
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`命題`等級
帝都神律大学では、`命題`を以下の項目から暫定分類している。
* 影響範囲
* 出力
* 再現性
* 制御性
* 法則干渉度
* 災害発生時の被害予測
* 既存理論による説明可能性
第一種に近いほど、より広い範囲、またはより根本的な法則へ干渉する傾向がある。
ただし。
等級は、観測された結果を基にした暫定評価である。
出力が小さくても、原理上は極めて危険な`命題`が存在する。
したがって、
――等級が低い。
――ゆえに弱い。
という判断は成立しない。
黒瀬零の`未証明`は、入学試験時には第五種と判定された。
しかし、《公開査問》終了時点において、その分類の妥当性には重大な疑問が生じている。
正式な再分類は、まだ行われていない。
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二、帝都神律大学
学生数、約八万人。
教職員、研究員、関連施設職員、学生および職員の家族などを含め、総人口約三十万人を抱える独立大学都市。
単なる教育機関ではない。
主な機能は、以下のとおり。
* 法則災害への対応
* `命題`の研究
* 能力者の育成
* 世界法則の継続観測
* 危険な思想および能力の管理
* 法則災害被災者の保護
* 未定義現象の記録
* 世界規模異常への緊急対応
学内には、十二の主要学部、百を超える学科、多数の独立研究室が存在する。
講義棟、研究塔、病院、発電所、空港、競技施設、地下演習区、軌道交通などを備え、都市単位で自立した機能を持つ。
なお。
履修登録。
研究費申請。
施設利用許可。
`命題`使用申請。
法則災害後の建築物復旧申請。
大学記録における死亡情報の訂正。
その他、学内で行われるほぼ全ての活動には、所定の書類が必要となる。
世界が一度消失した場合でも、提出期限は原則として延長されない。
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法則災害学群
自然法則の異常、`命題`の暴走、未定義現象、歴史不整合などへの対処を学ぶ学群。
戦闘技術だけを扱う学群ではない。
主な研究および教育対象は、以下のとおり。
* 避難誘導
* 異常法則の解析
* 被害範囲の予測
* 世界整合性の回復
* 被災者への説明
* 再発防止策の設計
* 法則災害発生時の現場指揮
* `命題`能力者の保護および制圧
* 未定義現象への暫定対応
黒瀬零が所属している。
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法則基礎学部
`命題`および世界法則を、数学、論理学、物理学、情報学などの観点から研究する学部。
直接戦闘よりも、以下の項目を重視する。
* 能力条件の定義
* 理論構築
* 矛盾の検出
* 解法の計算
* 再現性の確認
* 観測結果の比較
* 前提と結論の分離
九条澄玲が所属している。
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命題兵装学科
`命題`を戦闘、災害救助、防衛、施設保全などへ実用化するための学科。
能力出力だけでなく、身体訓練、戦術研究、装備運用、集団行動、被害制御なども重視される。
獅堂剛毅が所属している。
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《第零学部》
帝都神律大学に存在したとされる学部。
ただし。
現在の正式な大学記録には存在しない。
残された資料には、以下のような相互に矛盾する記述がある。
* 設立前に計画が中止された
* 過去に存在したが廃止された
* 現在も非公開で活動している
* 正式な大学制度の外部に存在する
* 最初から存在していない
* 存在しなかったという記録だけが後から追加された
黒瀬灯が所持していた学生証には、
――《第零学部・世界原理学科》。
と記録されている。
ただし、学生証が発行された時期、発行主体、学籍番号の対応先はいずれも確認できていない。
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《世界原理学科》
《第零学部》に属していたとされる学科。
名称から、個々の自然現象ではなく、
――世界そのものは、なぜ世界として成立するのか。
――ある現実が、なぜ別の可能性ではなく現在の現実として選ばれるのか。
といった根本問題を研究していたと推測される。
現在、正式な学科情報は確認できない。
黒瀬灯の所属先としてのみ記録されている。
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三、主要施設
《第一宇宙観測環》
帝都神律大学の上空および地下施設へ展開された、巨大な法則観測装置。
主な観測対象は、以下のとおり。
* 光速度
* 重力定数
* 空間次元数
* 時間進行方向
* 因果連結率
* 歴史の一貫性
* 世界全体の整合性
* 外部観測による干渉の痕跡
通常は、現在の宇宙が正常に成立しているかを、宇宙内部から観測する施設だと説明されている。
しかし、黒い月の出現以降、《第一宇宙観測環》を通じて、
――世界の外側から、内部が観測されている。
可能性が確認された。
観測装置であると同時に、外部から世界内部へ接続する通路として利用されている疑いがある。
なお。
施設名に含まれる「第一」は、《第一観測圏》を示す名称ではない。
両者を混同してはならない。
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《未定義現象研究室》
既存の法則、学部、分類では説明できない現象を研究する特殊研究室。
固定された一つの座標には存在しない。
特定の条件を満たした人物、事件、記録との関係によって出入口が成立する。
第一章終了時点における主な関係者は、以下のとおり。
* 管理責任者:神代緋月
* 所属学生:天城朔夜
* 特別研究対象:黒瀬零
* 共同解析者:九条澄玲
主な研究対象。
* 黒瀬灯の消失
* 《第零学部》
* 黒い月
* 外部観測者
* `未証明`
* 世界統一性の一時消失
* 正式記録と現在存在の不一致
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《法則検証室》
`命題`の条件、効果、再現性、制御限界などを検証するための実験室。
内部では、床、壁、重力、空間構造、落下方向、衝突条件などを変更できる。
黒瀬零については、以下の項目が検証された。
* 能力持続時間
* 任意終了
* 空中移動
* 連続発動
* 複数結論の保留
* 結論選択
* 身体行動と能力効果の関係
安全性には配慮されている。
ただし、検証装置として巨大な刃、落下物、空間断裂などが使用されることがある。
――安全性に配慮している。
という記録と、
――巨大な刃を使用する。
という記録は、帝都神律大学では矛盾しないものとして扱われている。
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《地殻演習区》
帝都神律大学の地下に存在する、大規模演習施設。
本来の地殻内部には存在しない空間容積を、法則操作によって展開している。
層ごとに、異なる地盤、重力、存在強度、法則干渉耐性が設定されている。
第五層は、高出力の地質、重力、位置操作型`命題`の訓練に使用される。
獅堂剛毅の故郷を再現した石碑が存在する。
第七話では、確認された在室人数より一件多い生命反応が、一時的に観測された。
反応の正体は不明。
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《第七公開査問庭》
黒瀬零と獅堂剛毅の《公開査問》が行われた円形闘技場。
通常時は地下へ圧縮保存され、使用時のみ地上へ展開される。
最大収容人数は約三万人。
複数の防壁、観測装置、緊急避難機構を備える。
今回の《公開査問》では、戦闘区域を越えて`命題`が拡大し、大学都市および世界全体へ影響が及んだ。
施設設計上、世界規模の法則災害は想定されていない。
今後の改修計画には、世界規模異常への対応項目を追加する予定である。
予算承認は、まだ行われていない。
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四、登場人物記録
黒瀬零
法則災害学群一年。
十八歳。
本作の主人公。
三年前、妹である黒瀬灯が、世界中の記録と記憶から消失した。
家族を含む誰も灯を覚えていない。
しかし、零だけは彼女の存在を記憶している。
黒瀬灯が実在したことを証明するため、帝都神律大学へ入学した。
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性格
基本的には常識的。
ただし、黒瀬灯に関する問題では、世界、権威、正式記録のいずれが相手でも引き下がらない。
外部から与えられた説明を、そのまま最終回答として受け入れず、
――別の可能性はないのか。
と疑い続ける。
一方で。
疑うだけでは、新しい答えへ到達できないことも学び始めている。
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現在の課題
* 黒瀬灯が実在することを証明する
* 《第零学部》へ到達する
* `未証明`の本質を解明する
* 黒い月と外部観測者の正体を確認する
* 《公開査問》の研究成果を一か月以内に論文化する
* 大学記録上の「死亡済み」を訂正する
最後の二件も、本人にとっては重大な問題である。
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黒瀬灯
黒瀬零の妹。
三年前、記録、写真、映像、他者の記憶などから消失した。
零の記憶では確かに実在していた。
しかし、現在の世界では、
――黒瀬灯という人物は、最初から存在しなかった。
という結論が成立している。
《第零学部・世界原理学科》の学生証を所持する。
学生証を通じ、零へ複数の証明課題を与えている。
確認された発言は、以下のとおり。
「世界の外で待っている」
「見つけてくれたんだね、お兄ちゃん」
「私を助けたいなら、まず、私を殺して」
「私が消えた、本当の理由を証明して」
零と同じ、途切れた円環を持つ姿も確認されている。
ただし。
現在現れている灯と。
零の記憶に残る灯が。
完全に同一の人物であるかは、まだ証明されていない。
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九条澄玲
法則基礎学部一年。
入学試験筆記首席、実技第三位。
銀色の長髪を持つ少女。
事実、定義、条件、再現性を重視し、曖昧な説明を嫌う。
感情がないわけではない。
ただし、自分や他者の感情も、分析すべき事実の一つとして扱う傾向がある。
黒瀬零を、以下の複数の立場から見ている。
* 研究対象
* 共同研究者
* 同級生
* 放置すると危険な人物
本人が、どの関係を最も重視しているかは不明。
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好むもの
* 正確な定義
* 再現可能な実験
* 整理された記録
* 必要条件が明示された問題
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苦手と推測されるもの
* 根拠のない直感
* 条件の曖昧な問題
* 黒瀬零の無計画な行動
* 問題を増やしてから相談する人物
最後の二件は、同一人物を指している可能性が高い。
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神代緋月
法則災害学部特別教授。
《未定義現象研究室》管理責任者。
右目を眼帯で覆っている。
眼帯の下には通常の眼球ではなく、赤い文字列が回転する異常現象が存在する。
三年前の記憶に欠落があり、《第零学部》および黒瀬灯と関係している可能性が高い。
冷静で厳格。
研究対象の安全を優先する一方、情報不足または危険回避を理由に、説明を意図的に遅らせることがある。
黒瀬零の死亡可能性を事前に把握しながら、本人への通知を遅らせた件については、研究倫理上の過失を認め、謝罪している。
ただし、三年前の事件に関する全情報を開示したわけではない。
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天城朔夜
帝都神律大学四年。
《未定義現象研究室》所属。
濃紺の髪と白衣が特徴。
法則災害現場における、実戦的な能力運用に詳しい。
黒瀬零が使用する空中移動法へ、
`不定墜道`
という名称を与えた。
菓子パンを食べていることが多い。
本人は、研究活動に必要な糖分補給であると説明している。
食事ではなく研究用補給物資として経費申請を行った記録がある。
申請は認められていない。
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獅堂剛毅
命題兵装学科一年。
入学試験実技第二位。
第四種`命題`能力者。
大柄な体格と金色の瞳を持つ。
自信家で高圧的。
一方で、規則、正式な手続き、責任を重視する。
六年前、《逆位地殻災害》によって故郷と家族を失った。
災害時。
父親の腕を掴みながら、支えきれなかった経験が、現在の思想と`命題`へ強く影響している。
当初は、
――支える者には、相手の位置を決める責任がある。
と考えていた。
黒瀬零との《公開査問》を経て、
――相手の行き先を奪わず、本人が選択できる場所を支える。
という新しい可能性を受け入れ始めている。
黒瀬零とは対立関係にある。
ただし、互いの能力と思想を一定以上評価している。
なお。
両名は、《公開査問》の研究成果を共同筆頭著者として論文化しなければならない。
本人たちの同意は、査問参加規程への署名によって既に取得済みである。
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久世真道
命題論理学部教授。
《命題基礎論Ⅰ》担当教員。
黒瀬零と獅堂剛毅の《公開査問》において、主席審査官を務めた。
学生へ厳しい評価を下す。
一方で、理論的に新しい現象へは強い関心を示す。
黒瀬零による世界統一性消失現象について、再現性および理論説明を要求している。
世界をもう一度消すことまでは、明確には要求していない。
少なくとも、正式な書面上は。
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五、確認済みの`命題`
黒瀬零
`未証明`
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入学時の評価
――確定した出来事を二・四秒間だけ延期する。
――第五種の時間停止系能力。
ただし、現在はこの解釈が不正確である可能性が高い。
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現在の解釈
外部から黒瀬零へ確定させられようとする結論を、一時的に保留する。
保留中に、零自身が別の実現可能な結論へ到達し、その結論を自ら選ぶことで、最初に押しつけられた結論の即時確定を回避する。
確認されている発動時の発言。
「その結論を」
「保留する」
能力発動時、対象側から以下の要求が返される場合がある。
――保留根拠を要求する。
`未証明`は、不可能な結果を可能へ変える能力ではない。
攻撃力、移動経路、接触条件、対象、射程、耐久力、成功率などを無条件に作り出すこともできない。
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現在確認されている条件
* 外部から確定させられようとする結論を、零が認識している
* 別の実現可能な結論を想定している
* 保留中に零自身が行動する
* 別の結論へ、現実の手段によって到達する
* 到達した結論を、零自身が選択する
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二・四秒について
能力の絶対的な最大持続時間ではない可能性が高い。
零が別の結論を選ばなかった場合、世界側が判定保留を終了させるまでの基準時間と推測される。
零が早い段階で別の結論へ到達し、自ら選択した場合、〇・二秒以下で終了することも可能。
ただし、保留時間を任意に無制限化できることは確認されていない。
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弱点
* 不可能な結果を無条件に作れない
* 別の結論へ到達するための実際の手段が必要
* 多数の結論を同時に保留すると精神負荷が増大する
* 零自身が選択できなければ能力は完了しない
* 疑い続けるだけでは、結論を終えられない
* 被害による行動不能を保留できても、受けた損傷自体は消えない
* 攻撃経路や身体能力が不足している場合、それを能力だけで補えない
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《公開査問》における変化
相手の結論を単純に否定するのではなく、
――相手の前提を一部認めながら。
――より広い別の結論へ到達する。
という運用が確認された。
名称は、現在も`未証明`のままである。
能力の理解が変化し始めている可能性はある。
ただし、正式な再分類および改称は行われていない。
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九条澄玲
`世界は解を持つ`
澄玲が正確に問題として定義した現象について、実行可能な解法が少なくとも一つ存在することを保証する。
初期段階では、解そのものを自動的に実行しない。
主に以下の形式で可視化される。
* 移動経路
* 回避手順
* 必要条件
* 使用可能な足場
* 問題解決までの工程
* 他者の能力を組み合わせる順序
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強み
* 複雑な状況から実行可能な経路を発見できる
* 他者の能力を組み合わせた解法を導ける
* 災害現場での退避および救助に適する
* 一見不可能に見える問題でも、定義が正しければ解を示せる
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弱点
* 問題の定義が誤っている場合、正しい解を出せない
* 必要条件が不足している問題は解けない
* 本人が問題を理解できない場合、発動が困難
* 問題そのものが成立していない場合、通常の解を提示できない
* 解法が存在しても、実行者の身体能力や判断力が不足していれば成功しない
《公開査問》では、
――獅堂一人へ集中した世界座標の決定権を、世界を崩壊させずに分散する。
という問題を定義した。
解が成立するためには、世界を構成する存在が、自らの位置を自分で選ぶ必要があった。
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神代緋月
`万象校正`
観測可能な記録、法則、現象を比較し、矛盾を最も整合性の高い状態へ修正する。
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可能なこと
* 複数の法則が衝突した空間の安定化
* 異常な因果関係の修正
* 矛盾する歴史の一時的統合
* 法則災害による損傷の校正
* 正常な生体記録に基づく生命活動の回復補助
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不可能または困難なこと
* 比較基準が存在しない現象の修正
* 本当に新しい法則の校正
* 複数の記録が同じ強さで矛盾する場合の判断
* 誤った記録が世界全体で正しいものとして扱われている場合の修正
* 本人の現在回答を、過去記録だけを基準として上書きすること
黒瀬零が記録上死亡した際には、
――現在生きている肉体。
よりも、
――死亡済みという世界記録。
の方が強い基準として採用されていた。
そのため、`万象校正`だけでは、完全な生存状態へ校正できなかった。
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獅堂剛毅
`万象は我が礎`
獅堂自身が両足で踏み締め、自らの立つ場所として定めた礎を基準に、その上へ存在する対象の位置、上下、落下方向を支配する。
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初期に確認された対象
* 岩
* 土
* 建物
* 水面
* 空気の流れ
* 持ち運び可能な足場
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《公開査問》中に拡張された対象
* 空気抵抗
* 重力
* 慣性
* 対象との接触関係
* 世界を外部から観測する視線
* 世界を成立させる支持関係
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発動上の基本条件
獅堂自身の足が、地面または足場へ接触していること。
特に、両足で現在位置を定めた場合、能力は最も安定する。
足場との接続が失われた場合、新たな発動および安定維持は困難となる。
既に成立させた礎を空中へ延長し、一時的な足場として使用することは可能。
ただし。
完全に足場との接続を失った状態から、空中で新規に安定発動できるとは確認されていない。
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弱点
* 自分を支える礎を必要とする
* 両足と足場の関係を崩されると不安定になる
* 支配対象が拡大するほど、獅堂自身へ負荷が集中する
* 他者が自ら位置を選び始めると、単一の支配構造を維持しにくい
* 「支える」と「支配する」を同一視していた思想に矛盾があった
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《公開査問》後の変化
獅堂は、他者を自分の定めた場所へ固定するのではなく、
――他者が自分で選んだ場所へ進むための地面を作る。
という使い方を初めて行った。
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六、確認済みの固有技および応用運用
黒瀬零
`不定墜道`
`未証明`によって、落下によって生じる結論を短時間保留し、物体との衝突、反作用、重力方向の変化などを利用して、複数の落下を連続させる空中移動法。
飛行ではない。
零は常に落下している。
ただし、落下方向と、次に到達する結論を選び続けることで、空中を移動する。
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特徴
* 地面へ立たずに移動できる
* 壁や飛来物を一瞬だけ足場として利用できる
* 相手が重力方向を変更するほど、移動候補が増える場合がある
* 連続発動には高い判断速度が必要
* 落下速度、身体耐久力、接触可能な物体などの制約を受ける
`不定墜道`は、純粋な飛行能力でも、無条件の瞬間移動でもない。
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黒瀬零
複数座標統合運用
正式名称、未登録。
複数の位置、落下方向、力の作用先、到達候補が同時に与えられた際、
――自分が、どこへ到達するのか。
を零自身の目的に基づいて選び、複数の作用を一つの到達先へ統合する運用。
当初は、獅堂の正面という一つの座標へ、複数方向の力をまとめていた。
《公開査問》ではさらに、
――固定された一地点ではなく。
――選び続ける意思そのものを、到達基準とする。
運用へ発展した。
現時点では独立した`命題`ではなく、`未証明`および`不定墜道`を組み合わせた応用運用と分類されている。
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獅堂剛毅
`多重地平王国`
複数の地面を同時に成立させ、それぞれ異なる上下および落下方向を対象へ適用する。
一つの肉体へ、複数方向から異なる落下を発生させることが可能。
《公開査問》では、零が選択する到達座標に応じて落下方向を切り替え、複数座標統合運用への対策を行った。
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獅堂剛毅
`王土鎧装`
周囲の地面および礎を圧縮し、黄金の鎧として身体へ装着する。
高い防御力と打撃力を持つ。
鎧そのものも獅堂を支える礎として働くため、装着中は`万象は我が礎`の安定性が向上する。
ただし。
鎧を装着していることだけで、完全に足場を失った状態から新たな王土を安定展開できるわけではない。
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七、重要事件
黒瀬灯消失事件
三年前に発生。
黒瀬灯に関する以下の情報が消失した。
* 戸籍
* 学籍
* 写真
* 映像
* 家族の記憶
* 交友関係
* 生活痕跡
* 社会的な関係記録
黒瀬零だけが灯を記憶している。
同時期、神代緋月が右目と一部記憶を失っている。
《第零学部》に関する記録矛盾も、この時期と関係している可能性がある。
事件が外部から起こされたのか。
灯自身の選択によって発生したのか。
世界全体の整合性を維持するために実行されたのか。
現時点では確認できていない。
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黒い月出現事件
《第一宇宙観測環》上空に、巨大な黒い月が出現。
一般学生には当初、人工的な日食現象として認識されていた。
実際には巨大な眼を持ち、世界内部を外部から観測していた。
確認された発言および処理から、以下の性質が推測される。
* 黒瀬零を観測対象としている
* `未証明`の変化を記録している
* 世界終了手順を進めている
* 単一世界としての整合性を重視している
* 自ら独立した答えを選べない可能性がある
* 観測結果と世界の成立を直接接続している
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黒瀬零死亡事件
《第二証明》の途中で発生。
黒瀬零は、
――本日十八時四十三分に死亡する。
という結論を与えられた。
大学記録では、実際の死亡より先に死亡者として処理された。
死亡という結論を成立させるため、死因が後から生成される《結論遡及》も確認された。
零は、死亡した自分を偽物として否定しなかった。
自分が選ばなかった可能性として、自身の外側へ定義した。
その上で。
現在の自分が生存し、新しい選択を続ける結論へ到達した。
現在、大学記録には以下の二件が同時に残っている。
――在籍中。
――死亡済み。
学務部は、訂正申請の提出を要求している。
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黒瀬零対獅堂剛毅《公開査問》
審査対象は、
――他者を支える者は、その相手の位置を決定する権利を持つか。
という問題。
黒瀬零には、
――地面へ立たずに獅堂剛毅へ勝利する。
という特殊条件が課された。
戦闘中、獅堂の`万象は我が礎`は世界規模へ拡大。
外部観測者との接続さえ礎として取り込み、世界全体の位置を単一の王土へ固定しかけた。
最終的に両者は、以下の共同結論へ到達した。
――支えることは、相手の位置を奪うことではない。
――自由とは、全ての支えを拒絶することではない。
――存在は、他者に支えられながらも、自らの位置を選択できる。
戦闘上の勝者。
――黒瀬零。
`命題`理論審査。
――両名合格。
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世界統一性消失現象
黒い月が、世界全体を一つの変更不能な観測記録へ圧縮しようとした際、黒瀬零によって発生した現象。
零は、
――世界は、一つの完成した答えである。
という結論を、`未証明`によって保留した。
継続時間。
――約〇・〇〇〇〇〇〇三秒。
その間、この宇宙は一つの統一された世界として扱えなくなった。
個々の存在、法則、関係が、それぞれ別個の項目として成立し、相互関係によってのみ接続されていた。
結果として、外部観測者は世界を単一の対象として観測できなくなり、黒い月は崩壊した。
久世真道教授は、この現象を学術上、
――世界の死。
と表現した。
黒瀬零本人は、
――世界が一つの答えだという考えを、止めただけだ。
と主張している。
なお。
この現象によって、一つの宇宙を物理的な出力で破壊したわけではない。
世界を一件の統一対象として成立させる結論を、一時的に保留した現象である。
⸻
八、《第二証明》
黒瀬灯の学生証から与えられた試験。
主な課題は、以下のとおり。
* 地面へ立たずに獅堂剛毅へ勝利する
* 対立する`命題`を理解する
* 獅堂の思想を単純に否定せず、より広い結論へ進む
* 自らの位置を証明する
* 死を否定せず、死を受容せず、生存を選ぶ
* 世界を一つの地面による支配から解放する
最終的に。
黒瀬零と獅堂剛毅による共同証明として完了した。
進行結果として、《第零学部》へ近づく権利が得られたと推測される。
ただし、正式な入学、編入、立入許可が発行されたわけではない。
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九、現時点で残された謎
黒瀬灯は、なぜ消えたのか
灯は、事故や敵の攻撃によって消されたのか。
世界を守るために消去されたのか。
それとも、自ら消えることを選んだのか。
彼女は零へ救いを求めているのか。
あるいは。
零に、自分を止めてほしいのか。
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「私を殺して」とは何を意味するのか
現時点で考えられる解釈は、少なくとも以下の四つ。
* 黒瀬灯の肉体を殺す
* 灯の人格または記憶を消す
* 黒瀬灯という現象を停止する
* 「黒瀬灯は存在しなかった」という結論を殺す
正解は、まだ判明していない。
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黒い月の正体
外部観測者そのものか。
外部観測者が使用する観測装置か。
別世界または上位構造から投射された端末か。
《第零学部》が作ったものか。
また。
黒い月は零を排除しようとする一方で、`未証明`の成長を促しているようにも見える。
目的は不明。
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十三枚の翼を持つ黒衣の人物
黒瀬零の死亡前、獅堂剛毅へ接触した人物。
黒瀬零を支えるよう命じながら、
――本人の望む場所へ立たせるな。
と指示した。
さらに、
――黒瀬零の死を阻止した場合、《第二証明》は失敗する。
と告げている。
味方か敵かは不明。
神代緋月の眼帯にも、同じ十三枚の翼を持つ紋章が確認されている。
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黒瀬零の`未証明`は何なのか
第五種としては、原理が異常に根本的である。
零は、世界法則へ自分の法則を直接押しつけているのではない。
外部から自分へ適用されようとする結論に対し、
――その結論を、自分の答えとして受け入れるか。
という確定そのものを保留している可能性がある。
ただし。
この時点では、最終的な能力構造は判明していない。
なぜ零だけが、このような干渉を行えるのか。
黒瀬灯との関係はあるのか。
現時点では未証明。
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十、第一章終了時点の人物関係
黒瀬零と九条澄玲
研究対象と解析者。
同級生。
共同研究者。
互いに能力上の欠点を補う関係。
零が未定義の問題を持ち込み。
澄玲が問題を定義し。
零が自ら答えを選ぶ。
という流れが多い。
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黒瀬零と獅堂剛毅
対立する思想を持つライバル。
戦闘上は、黒瀬零が一勝。
学術上は、共同証明を成立させた。
両者とも、自分の方が相手より正しいと考えている。
共同論文の執筆過程で、再び衝突する可能性が極めて高い。
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黒瀬零と神代緋月
学生と指導教員。
同時に。
未定義現象の研究対象と、管理責任者。
緋月は零を危険視している。
ただし、能力の成長そのものを止めようとはしていない。
黒瀬灯の消失について、零へ開示していない情報を持つ可能性がある。
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黒瀬零と黒瀬灯
兄と妹。
ただし。
零が救おうとしている、記憶の中の黒瀬灯と。
現在、世界の外側から零を導いている黒瀬灯が。
本当に同じ人物であるかは、まだ証明されていない。
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十一、次章への確認事項
《第二証明》を完了した黒瀬零は、次に《第零学部》へ向かう。
そこで明らかになると予測される事項は、以下のとおり。
* 黒瀬灯が消えた本当の理由
* 三年前に発生した事件
* 神代緋月が右目と記憶を失った原因
* 世界の外側に存在するもの
* 《第零学部》と黒い月の関係
* `未証明`が零に発現した理由
ただし。
黒瀬灯は既に、以下の警告を残している。
「真実を知れば、お兄ちゃんは私を救わない」
それでも。
黒瀬零は、次の扉を開く。
世界が示した答えを、そのまま信じるためではない。
自分で選ぶべき答えを見つけるために。
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第一章 帝都神律大学・入学編 完
次章――《第零学部》《第一観測圏》編




