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同じ営業所なのに、見ている便が違う

数字を比較していくと、もう一つ、気になることがあった。

夜勤と日勤では、中心的に扱っている便が違っていたのだ。

日勤側が中心的に見ていたのは、FL便、五霞便、とちぎ便、浦和便。

一方、夜勤側が中心的に扱っていたのは、入間便、長岡便、盛岡便、コンテナ便だった。

同じ営業所の仕事だ。

同じ構内を使っている。

同じ荷物の流れの一部を、それぞれが担当している。

だが、見ている便が違う。

これは、思っていた以上に重要なことだった。

人間は、自分が目の前で扱っている仕事を基準に考える。

毎日見ている便がある。

いつも扱っている荷物がある。

忙しいと感じる時間帯がある。

それが、その人にとっての現場になる。

だから、日勤側が日勤側の荷物を見て、「この便は多い」と考えること自体は、不自然ではない。

夜勤側も同じだ。

自分たちが扱う便を見て、仕事の量や忙しさを判断する。

問題は、その一部分を見た認識が、営業所全体の実態として扱われてしまうことだった。

日勤側から見える荷物。

夜勤側から見える荷物。

それぞれの視点には、それぞれの根拠がある。

しかし、その視点だけでは、全体の荷物流動を説明できない。

ここを分けて考える必要があった。

たとえば、FL便。

分析では、水曜日と土曜日に増加する傾向が確認された。

特定の曜日に荷物が増える。

その便を中心に見ていれば、FL便の印象は強くなる。

「FL便が一番多い」

そういう認識が形成されやすくなるのも、理解できる。

だが、それは、営業所に到着するすべての荷物を比較した結果と同じなのか。

ここは別の問題だ。

目の前の便が多いことと、勤務帯全体の荷物量が多いことは、必ずしも一致しない。

さらに、夜勤には夜勤で、別の便がある。

入間便。

長岡便。

盛岡便。

コンテナ便。

それらが、どの時間帯に、どれだけの荷物を運んでくるのか。

そこまで含めて見なければ、全体像は分からない。

俺たちは、その違いを数字で確認していくことになった。

そこで見えてきたのは、単純な「どちらが忙しいか」という話ではなかった。

日勤と夜勤では、そもそも見ている荷物流動が違っていた。

そして、その違いが、業務量に対する認識の差を生んでいた可能性が高かった。

誰かが、必ずしも嘘をついていたわけではない。

見ているものが違えば、認識が違うことはある。

ただし。

見ているものが違うのなら、なおさら全体を確認する必要がある。

自分が見ていない便の荷物まで含めて、営業所全体の仕事を判断しなければならないからだ。

自分の目の前にある仕事だけを基準にして、ほかの時間帯の仕事を少ないと判断する。

それでは、正確な比較にはならない。

ここでようやく、最初の疑問が少し違う形になった。

夜勤は、本当に荷物が少ないのか。

それだけではなかった。

なぜ、夜勤は荷物が少ないと考えられてきたのか。

その認識は、どこから生まれたのか。

そして、実際の荷物の動きと、現場の人間が持っている認識との間に、どれほどの差があるのか。

数字を集める前には、そこまで考えていなかった。

ただ、実態を知りたかった。

ところが、実態を調べ始めると、仕事の量だけではなく、認識が生まれる仕組みまで見えてきた。

同じ営業所にいる。

同じ仕事に関わっている。

それでも、見ている現場が違う。

その違いを埋めないまま、互いの認識だけをぶつけていたら、話が噛み合わなくなるのも当然だった。

……なるほどね。

数字を集めていたつもりが、いつの間にか、人間の認識の話になっていた。

グリミーの話とも、どこかでつながっている。

人は、自分が見ているものを基準にする。

自分が知っていることを、全体のことだと思ってしまう。

そして、その認識が一度定着すると、なかなか変わらない。

だからこそ、言葉だけでは足りなかった。

夜勤は少ない。

いや、そうではない。

そんなやり取りを何度繰り返しても、互いの認識が変わらなければ、同じ場所を回り続けるだけだ。

必要なのは、どちらの言い分が強いかを決めることではない。

実際の荷物が、どこから、いつ、どれだけ動いているのか。

その事実を確認することだった。

俺たちは、そのための資料を整えていった。

便別台帳。

勤務比較表。

そして、FL便の曜日別の傾向を調べるFL分析表。

記録は、少しずつ分析へと変わっていった。

だが、まだ分からないことが残っていた。

荷物の総量が分かっても、それだけでは現場の負荷を説明できない。

同じ量の荷物でも、時間をかけて処理できるのか。

それとも、短時間に集中するのか。

そこが違えば、必要な人員も変わってくる。

夜勤の仕事を考えるうえで、もう一つ、見なければならないものがあった。

荷物が、何時に集中するのか。

そして、その時間帯に、何人で対応しているのか。

次に見ることになったのは、時間帯だった。


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