数字は、勝手に説明してくれない
数字は、勝手に説明してくれない
記録を続けていくと、次の問題が出てくる。
数字を残すことと、数字を分析することは違う。
記録があれば、事実を振り返ることはできる。
しかし、記録が増えただけでは、全体の傾向は見えにくい。
たとえば、ある日に荷物が多かったとする。
それだけなら、単なる一日の出来事だ。
では、それは毎週起きているのか。
特定の曜日に集中しているのか。
特定の便が原因なのか。
それとも、複数の便が同じ時間帯に重なっているのか。
一つずつ確かめなければならない。
数字は嘘をつかない。
よく聞く言葉だ。
ただ、数字を並べただけで、勝手に正しい結論が出てくるわけでもない。
何を記録したのか。
どの期間を比較したのか。
何を基準に集計したのか。
そこを間違えれば、数字があっても判断を誤る。
俺がやろうとしていたのは、夜勤が大変だと証明することではなかった。
最初から結論を決めて、その結論に合う数字を探すのなら、記録する意味がない。
夜勤が本当に少ないのなら、そういう結果が出てもいい。
日勤のほうが多いのなら、その実態を確認すればいい。
どちらに転んでも、事実が分かれば、それでいい。
問題は、調べる前から答えが決まっていることだった。
「夜勤は少ない」
その認識が正しいかどうかを確認したいのに、最初から正しいことになっている。
だったら、何を調べるんだ。
調べる必要がないということか。
……ずいぶん便利な検証だ。
結論が先に決まっている。
現場の実績を確認する前に、評価だけが完成している。
俺は、そこから抜け出したかった。




