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数字は、最初からそこにあった

数字は、最初からそこにあった

最初から、大きな計画があったわけじゃない。

夜勤の実態を解明するプロジェクトを立ち上げよう。

そんな立派な話じゃないんだよ。

ただ、疑問に思った。

本当に、夜勤は荷物が少ないのか。

それだけだった。

俺も、以前はそう思っていた。

先輩たちがそう言っていた。

夜勤は荷物が少ない。

日勤のほうが忙しい。

夜勤は比較的楽だ。

長く働いている人たちが言うんだから、そうなんだろう。

俺も、特に疑う理由はなかった。

でも、実際に夜勤で働いていると、どうも話が合わない。

夜中に荷物が来る。

早朝にも来る。

入間便がある。

長岡便がある。

盛岡便がある。

コンテナ便もある。

横持ち便もある。

それぞれの便が、それぞれの時間に動いている。

そして、荷物は一度に全部来るわけじゃない。

到着する。

降ろす。

仕分ける。

必要な場所へ動かす。

次の便が来る。

また降ろす。

また仕分ける。

その繰り返しだ。

一つの作業が終わったら、仕事がなくなる。

そんな都合のいい構造にはなっていない。

しかも、便の到着時刻は毎日まったく同じとは限らない。

荷物の量も違う。

重量も違う。

曜日によっても違う。

それなのに、夜勤は少ない、楽だ、暇だという話だけは、ずいぶん安定している。

……いや、そこだけは定時運行かよ。

荷物の到着時刻は変わる。

荷物の量も変わる。

運行状況だって変わる。

なのに、夜勤の評価だけは変わらない。

だったら、一度ちゃんと見てみるか。

そう思った。

まず、残す。

最初に必要だったのは、難しい分析じゃない。

実際に何が起きているのかを、後から確認できる形にすることだった。

何時に荷物が来たのか。

どの便なのか。

何個あるのか。

どれくらいの重量なのか。

まずは、そこだ。

夜勤は忙しい。

いや、日勤だって忙しい。

そんな話をしても、結局は感覚のぶつけ合いになる。

忙しいと思う人間がいる。

いや、それほどでもないと思う人間がいる。

それぞれに、自分が見てきた現場がある。

自分が経験した時間帯がある。

自分が知っている荷物がある。

だから、本人にとっては、どちらも嘘をついているつもりはないんだろう。

ただし。

自分が見たものだけで、現場全体を判断していいのか。

そこは別の話だ。

夜勤の実態を確認したいなら、夜勤の実績を残すしかない。

日勤と比べたいなら、日勤の実績も必要になる。

印象ではなく、数字で比較できるようにする。

それが出発点だった。

もちろん、記録を始めたからといって、すぐに答えが出るわけじゃない。

一日分の数字を見ても、分からないことは多い。

たまたま荷物が少なかったのかもしれない。

たまたま多かったのかもしれない。

その日の運行状況に左右されている可能性もある。

一日だけを見て、夜勤は忙しいと結論づけたら、結局はこちらも同じことをしてしまう。

自分に都合のいい一日を選んで、全体の話にしてしまう。

それじゃ意味がない。

だから、記録を積み重ねる必要があった。

一日ではなく、何日も。

一つの便だけではなく、複数の便を。

荷物の個数だけではなく、重量も。

そして、いつ到着したのかも。

記録する項目が増えるほど、手間も増えた。

だが、仕方がない。

後から比較しようとしたとき、必要な数字が残っていなければ、そこで終わりだからだ。

「忙しかった」

そう書いても、後から検証することはできない。

「荷物が多かった」

それだけでも足りない。

何個だったのか。

何トンだったのか。

何時から何時までに集中したのか。

どの便に偏っていたのか。

そこまで残して、ようやく検証の材料になる。

俺たちが必要としていたのは、感想文じゃなかった。

現場で起きたことを、現場にいなかった人間にも確認できる形にすることだった。


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