57/95
そして、記録だけが残った
振り返れば、ずいぶん長い時間だった。
始まりは、現場で感じていた違和感を、そのままにしておけなかったことだった。
夜勤の仕事は、本当に少ないのか。
人員を減らしても問題ないのか。
日勤と夜勤の負担は、きちんと比較されているのか。
その疑問を確かめようとした。
調べてみると、数字が出てきた。
一日だけでは分からないことが、一か月分を並べると見えてきた。
個数だけでは分からないことが、重量や時間帯を加えることで見えてきた。
現場の感覚だけでは説明しきれなかったことが、記録によって少しずつ言葉になっていった。
数字は、最初からそこにあった。
ただ、それを集め、比較し、判断に使える形にする仕事が必要だった。
俺は、その仕事を続けた。
すべてが解決したわけではない。最後に残ったのは、誰かに勝ったという実感ではなかった。
事実を確かめること。
それを、誰でも確認できる形にすること。
そして、自分が担うべき役割と、組織が担うべき責任を区別すること。
俺は、俺にできることをした。
それ以上でも、それ以下でもない。
数字は、俺がいなくなっても残る。
それをどう使うかは、残された人たちが決める。
俺が残したかったのは、自分の正しさではなかった。
あとからでも、現実を確かめられるということだった。
第三章へ続く




