改善は、運用の中で検証される
六月二十二日、俺たちは最終報告書を提出した。
そこまでに、荷物の到着実績を整理し、曜日ごとの傾向を調べ、時間帯別の集中状況を分析してきた。夜勤と日勤の比較も行い、人員配置を検討するための資料を整えた。
その結果、会社側では夜勤の体制が見直され、タイミーを含めた配置方針が決められた。
これは、データを集めてきた意味が形になった部分だった。
ただ、俺はそこで、すべてが解決したとは考えていなかった。
人員配置は、決めた瞬間に正解になるものではないからだ。
実際に運用してみて、荷物を処理できているのか。引継ぎ時点で残荷がどの程度発生しているのか。予定どおりに人員を配置しても、到着時刻の変動によって作業が集中することはないのか。
そうした実績を確認して初めて、当初の配置が妥当だったのかを評価できる。
だからこそ、改善後も記録を続ける必要があった。
ところが、七月に入ってから、別の問題が出てきた。
夜勤に配置したタイミーをゼロにするよう求められ、俺たちは所長と相談し、日勤帯にはみ出す時間をなくす形で調整した。
その後、今度は日勤側でタイミーが必要だという話になり、夜勤側の勤務時間を短縮して日勤へ振り分ける方向での調整が進められた。
日勤にも人手が必要な事情はある。
そこを否定するつもりはなかった。
ただ、ここで確認したかったのは、夜勤の配置を変更する判断に、これまでの分析結果がどこまで反映されていたのかということだった。
夜勤の荷物量や集中時間帯を検証したうえで配置を決めたのであれば、その後に配置を変更するときにも、同じ実績を判断材料にする必要がある。
日勤に人員を振り分けること自体が問題なのではない。
問題は、変更によって夜勤と日勤の双方にどのような影響が生じるのか、その検証が十分に行われているかどうかだった。
夜勤の人員を減らせば、夜勤の処理能力は変わる。
その結果、朝の引継ぎ時点で残荷が増える可能性もある。一方で、日勤に人員を配置することで、日勤側の処理能力が上がる可能性もある。
どちらも、実際の運用を見なければ結論は出せない。
だから、必要なのは「夜勤を優先するか、日勤を優先するか」という二者択一ではなかった。
配置を変更する前と後で、何が変わったのかを記録すること。
想定どおりに処理できたのかを確認すること。
そして、想定と違う結果が出たなら、その原因を調べて次の判断に反映すること。
それができれば、配置変更も改善の一部になる。
反対に、実績を確認せず、その時点の要請だけで配置を動かしていけば、以前と同じ認識の違いが繰り返される可能性がある。
俺たちが時間をかけて作ってきた資料は、過去の判断を批判するためだけのものではなかった。
これからの判断を、少しでも確かなものにするための材料だった。
だからこそ、俺は七月二十一日の経過報告でも、実績データに基づいて判断することの必要性を改めて伝えた。
六月に改善が進んだことと、その後の運用判断に課題が残ったこと。
この二つは、矛盾しない。
改善が進んだからこそ、次に確認すべき問題が見えてきたとも言える。
そして、ここで一つ、考えておかなければならないことがあった。
数字を使って判断する仕組みは、数字を集めた人間がいなくなっても続くのか。
記録を作ること。分析すること。結果を報告すること。
それらを個人の努力だけに頼っている限り、担当者が変われば、同じ分析が続く保証はない。
必要なのは、記録の取り方をそろえ、分析方法を明確にし、毎月の実績を比較できる形にしておくことだった。
俺が考えていた改善は、そこまで含んでいた。




