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人が替わっても、仕事は続く

人が替わっても、同じように仕事を回せる仕組みだ。

夜勤の仕事は、経験だけで成り立っている部分が少なくない。

どの便が、いつ頃戻ってくるのか。

どこに荷物が集中するのか。

何時から何時までが忙しいのか。

どの荷物を、どこへ流すのか。

台車はどこに置くのか。

作業が重なったとき、何を優先するのか。

毎日そこにいる人間なら、いちいち説明しなくても分かることがある。

昨日と今日の違いも、見ていれば分かる。

いつもと違う便の動きにも気づく。

だが、新しく入った人間には分からない。

知らないのだから、当然だ。

「いつもどおりやってくれ」

そう言われても、その人にとっての「いつもどおり」は、まだ存在しない。

仕事を教える側が変われば、教え方も変わる。

人によって説明が違えば、覚える側は迷う。

ある人から教わったやり方を、別の人から否定される。

これでは、仕事を覚える以前に、どちらの話を信じればいいのかを覚えなければならない。

荷物を仕分けるだけなら、見よう見まねで覚えられる部分もあるだろう。

しかし、夜勤全体を回すとなれば、それだけでは足りない。

荷物を処理する。

付随作業を行う。

到着する便に対応する。

朝の引き継ぎを考える。

そして、点呼など、荷物の仕分けとは別に必要な業務もある。

それらを含めて、仕事が成立している。

だから俺は、単に人を増やすだけでは不十分だと考えていた。

人員配置を改善しても、その仕事のやり方が特定の人間の頭の中にしかなければ、いずれ同じ問題が起きる。

休めば、分からない。

辞めれば、分からない。

担当が替われば、また一から説明する。

それでは、せっかく改善した運用も、人が替わるたびに不安定になる。

必要なのは、経験をなくすことではない。

経験して分かったことを、経験した人間だけのものにしないことだ。

俺たちは、荷物の到着実績を記録し、便別台帳を整え、時間帯分析や勤務比較を行ってきた。

夜勤の実態を把握するための資料だった。

だが、考えてみれば、そこで得たものは人員配置の判断材料だけではない。

どのような条件で仕事が集中するのか。

何を確認すれば、その日の状況を把握できるのか。

何を記録すれば、あとから検証できるのか。

そうした情報は、日々の運用を引き継ぐためにも使える。

人が替わっても、過去の実績は残る。

担当が替わっても、記録は残る。

誰かが「そんなことはなかった」と言っても、記録が残っていれば確認できる。

もちろん、記録があればすべて解決するわけではない。

数字だけでは分からない現場の事情もある。

手順書を作っただけで、誰もが同じように動けるようになるわけでもない。

実際に使い、問題があれば直し、現場に合わせて更新する必要がある。

それでも、何も残さないよりはいい。

少なくとも、次に来た人間が、最初からすべてを手探りで始める必要はなくなる。

俺が残したかったのは、単なる資料の束ではなかった。

俺がいなくなっても、現場の状況を確認できること。

俺がいなくなっても、必要な判断材料が残っていること。

そして、誰か一人の記憶や頑張りだけに頼らず、仕事を続けられること。

そこまでできて、初めて改善が次につながる。

人を増やす。

人を育てる。

仕事を標準化する。

記録を残す。

そして、運用を検証する。

どれか一つだけでは足りない。

人員配置を決めることと、その配置で継続的に運用できることが別だったように、人を採用することと、その人が仕事を覚えられる環境を整えることも別だった。

結局、問題は人の数だけではなかった。

人が替わることを前提に、どうやって仕事を続けるか。

そこまで考えなければ、同じ場所で同じ問題が繰り返される。

俺は、そう考えていた。

そして、この話には、もう一つ避けて通れない問題があった。


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