数字が、人員配置を変えた
分析を進めていくと、次に考えなければならないことが見えてきた。
では、実際に何人必要なのか。
夜勤の荷物が少ないという認識だけでは、判断できない。
一晩の総量だけでも足りない。
早朝の集中を確認し、処理能力を計算し、付随する作業も考慮する。
そこまで整理して、ようやく人員配置を検討できる。
2026年4月から6月の実績を基にした検証では、午前五時台の平均荷物量は約五百六個だった。
処理能力の目安を1時間当たり約153個とすると、単純計算でも約3.3人分の処理能力が必要になる。
ただし、実際の現場では、勤務している全員が荷物の処理だけに専念できるわけではない。
付随する業務がある。
運行者への対応もある。
そのため、勤務人数と実際に荷物を処理できる人数を分けて考える必要があった。
三人が勤務していても、荷物の処理に当たれるのが二人なら、処理能力は限られる。
四人が勤務し、三人が処理に当たれる場合でも、計算上は五時台の平均荷物量に届かない。
五人が勤務し、四人が処理に当たれる条件になれば、ようやく安定した対応が可能になる。
もちろん、これは一定の処理能力を基にした試算だ。
毎日、同じ個数が同じ時刻に到着するわけではない。
荷物の種類も違えば、運行者の戻り時刻にも変動がある。
だから、計算結果だけで、あらゆる日の状況を完全に説明できるわけではなかった。
それでも、人員配置を考えるための具体的な根拠にはなる。
少なくとも、人数だけを見て「多い」「少ない」と判断するよりは、現実に近づける。
そして、検証の結果は、実際の体制見直しにつながった。
社員二名を中心とし、タイミーを組み合わせる。
基本となる配置は、次のように整理された。
月曜日から水曜日:タイミー一名
木曜日から金曜日:タイミー二名
土曜日:タイミー一名
日曜日:タイミー一名
曜日によって配置人数を変える形だった。
毎日、同じ人数を置けばいいという考え方ではない。
曜日ごとの荷物量や作業の集中、付随業務、運行者の戻り時刻の変動などを踏まえ、必要な人員を考える。
それが、分析結果を配置に反映するということだった。
最初にこの配置だけを見れば、人数が多いように感じるかもしれない。
タイミーを複数名配置する日もある。
だが、配置人数だけを切り取って、多いか少ないかを決めることはできない。
その人数が必要になるだけの仕事があるのか。
実際に処理できる人数は何人なのか。
荷物が集中する時間帯に対応できるのか。
そこまで見て、初めて判断できる。
今回の検証では、荷物の集中、付随する作業、運行者の戻り時刻の変動などを考慮すると、この配置は妥当な範囲と整理された。
つまり、単に人を増やしたのではない。
実際の荷物流動に合わせて、配置を考え直したのだ。
ここは、俺にとって重要なことだった。
これまで、夜勤の仕事は少ないと言われてきた。
楽だとも、暇だとも言われてきた。
だが、実績を集め、比較し、時間帯ごとの集中を確認した結果、従来の認識だけでは適切な配置を判断できないことが見えてきた。
その結果、体制が見直された。
感覚ではなく、実績に基づいて。
少なくとも、この段階では、数字が現場の運用を変えるところまで進んだのだった。
……やっと、ここまで来たか。
そう思った。
ただし、ここで勘違いしてはいけない。
俺たちが目指していたのは、夜勤の人数を増やすこと自体ではなかった。
人数が増えれば、それで成功という話でもない。
必要な時間帯に、必要な人員を配置する。
その結果、仕事が適切に処理され、夜勤と日勤の双方が無理なく業務を進められるようにする。
それが目的だった。
夜勤だけが楽になればいいわけではない。
日勤に負荷を押しつけても意味がない。
営業所全体の運用を考える必要があった。
だからこそ、分析では日勤側の状況も確認していた。
夜勤だけを見て、夜勤に必要な人数を考える。
それだけでは、全体最適にはならない。
日勤には日勤の仕事がある。
日勤には日勤の荷物の集中がある。
同じように、時間帯ごとの荷物量と処理能力を確認する必要があった。
それぞれの勤務帯が担当する仕事を整理し、どこに人員が必要なのかを考える。
そうして初めて、配置の妥当性を検討できる。
俺たちが作ってきた資料は、そのためのものだった。
便別台帳。
勤務比較表。
FL分析表。
時間帯分析表。
それぞれの資料は、別々の問題を調べるために作ったものだった。
しかし、最後にはつながっていた。
便別台帳で荷物の動きを記録する。
勤務比較表で夜勤と日勤を比べる。
FL分析表で曜日ごとの偏りを見る。
時間帯分析表で、荷物が集中する時間を確認する。
そして、実績を基に必要な人員を考える。
記録が分析になり、分析が配置の検討につながる。
最初から、ここまで見通していたわけではない。
ただ、分からないことを一つずつ確認していった。
その積み重ねが、体制の見直しにつながった。




