故人の知る真実 《弐》
宗吉は頷く湊の反応を見て続けて話す
「一年前統は突然行動を開始しました。恐らくは9年賭けて最強の妖怪を手に入れたから」
宗吉は彼の固有妖術は一度妖怪を倒す必要があるから封印を解除しただけですぐに手にすることは出来なかったのでしょうと付け足す
「黒い…鬼…」
明は掠れそうな声でそう呟く
「正確には赤鬼ですね。ただ、複数の妖怪の力を無理矢理ねじ込んだ結果体表が黒に変色する能力を得たようです。その状態になった赤鬼…いや”黒鬼”の力は元のそれの数倍にまで膨れ上がる。それだけの力を手にしながら日本全土にすぐさま百鬼夜行を行わなかったのは遠月家にある剣と鞘の逸話に他なりません」
「でも……あの日確かに剣と…鞘を持っていた父上が戦ったのに…敗れた」
「そこなんです…あの逸話が正しいなら貴方のお父様…遠月家当主が負けるはずはない。そう正しいなら」
「─────つまり私達が守ってきた逸話が嘘であると?」
自身も完全に信じている訳では無いが、それを他人から言われることに少々苛立ちを憶えた明は睨みながら冷たく言い放つ
「嘘とまでは言いません。ただ、何かが足りない…いや、”ニュアンスが異なっている”のではと。例えば剣が天叢雲剣のことを刺していない…何か別のことを刺した言葉なのでは無いでしょうか?でなければ剣と書かず、素直に天叢雲剣と書いたほうが自然では?」
明は逸話が正しく無いと言う可能性に確かにあり得ると感じ、別の疑問を呟く
「あの時妖怪…黒鬼に負けた父上が………最後の力を振り絞って、天叢雲剣を師匠に渡したから…何とか鞘が奪われる…だけ済んだ。確かに天叢雲剣は奪われず…私が持ってる。統はこの剣の逸話をそのまま受け取ったから……奪いにきたんでしょ?確かに揃えることはできなかったけど、それでも……不安要素だった最強の剣が…最強じゃなくなったのになんで1年も……息を潜めてたんだろう。なんで今になって…………赤鬼を湊のところに…」
「それは予想になるが、赤鬼の傷が癒えるのと、君の居場所がわからなかったのでは無いかな?なにせ君は湊さんの家に居候するまでは基本的に野宿だったみたいだからね」
「ねーつまんなーいお兄ちゃん絵本読んでー」
「えっ…うん分かったよ」
湊と凛はしんみりとした思い出話をし始めた二人から少し離れ、ソファに腰をおろしと凛が手に持っていた《ある英雄の人生》をまとめた絵本をわたされる
「私この絵本が好きなの!だから読んでくれる?お兄ちゃん…」
「うんいいよ」
「やったー!お兄ちゃん大好き!!」




