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第九十八話 事情聴取

 カヌセーヌ王国首都フォレントラ。

 冒険者ギルド本部の会議室は、物々しい空気に包まれている。

 ギルド本部長、首都保安局長、王室警備隊隊長、そして、外務大臣。

 その全員が眉間に深く皺を刻み、尽きることが無い溜息を洩らし続けている原因は、もちろん彼らの面前に座らされている。

 ユーゴ・ドルトー。ソルディアの杖、盗難事件の容疑者の一人だ。


「それで、あなたはベルゼビュート家の次期当主からの依頼で『何か』を探すために、司教の子息からの依頼を利用して、行動していたと?」

 外務大臣は後ろ向きな声で、ユーゴに語り掛けた。

 早く穏便にこの場を去りたいと、チラチラ扉を見やるその目が訴えている。

「さっきから、そう言ってんでしょうよ。ほれ、依頼書もあんのよ?」

 何度も何度も提示された依頼書は、ヨレヨレと頼りなく机の上に置かれていた。


「確かに、依頼書は把握した。……が、なぜそれがソルディアの杖の盗難に繋がるのか?」

 保安局長が厳しくユーゴを詰問しようとする声は、横にいる大臣を追い詰めた。

「だぁ~かぁ~らぁ~! 何度も言ってんでしょ? 俺は、宝物庫の中に依頼人が求めている物があるかどうかを見るために話に乗っただけで、何も盗むつもりは無かったんだって!」


「このルネ=ノワという悪魔が求めていたのがソルディアの杖で、お前が依頼完遂のために盗んだとも考えられるが?」

「俺の依頼人が探してんのはソルディアの杖じゃない。あいつは魔術がへたくそで、こんな杖持ったところでどうにも出来ないしな。俺が依頼されて探していた品は宝物庫には無かった。俺は中を見られりゃそれでよかった。だから宝物庫から出たらすぐにあいつらとは別れたんだ。報酬も受け取ってない。正直、あいつら性格悪すぎて傍にいるのもうんざりしてたからな」


「それを信じろと?」

「じゃあ、こちらも聞きますよ? 杖はどの段階で無くなったのか? そちらさんは把握できてるんですかね~え?」

「五日の朝六時。定時確認の際に他の宝物四点と杖が紛失していることに気づいた。それが事件の発端だ」

「おかしいなぁ~? 俺らが宝物庫に侵入したのは三日の深夜だ。四日の定時確認は? まさか、してなかったのかなぁ~?」

「確かに、四日の定時確認では異常が認められていない。だが、他に誰かが侵入した形跡はないんだ。宝物庫を開けるには三種類のカギと解呪の詠唱。抵抗符の反撃を抑制するためのアミュレットが必要で、アミュレットは司教自身が使用契約を結んでいるから他者には使えない。アミュレット無しであの抵抗符の反撃をやり過ごせるなんてお前ぐらいだろう」

「俺が宝物庫を出る時に、杖はガラスケースの中に確かにあった。四日の定時確認で見落とす? まさか、どこに目ぇ付けてんのよ? 杖が入ったガラスケースは宝物庫の扉を開けた正面真ん中の台座の上だ。それを見落とすってんなら、確認の意味がねぇだろ。三日の日、あいつらが盗んだのは宝物庫の隅にあった小さな貴金属だ。中が見えないジュエリーケースに入ってたいくつもあるうちの四つ。バレにくくて金に換えやすい。バカ息子にとってはスリルがあって小遣いも稼げる遊びみたいなもんだからな。だから、四日の定時確認では見落とされた。パッと見渡して異常なしと判断したんだろう。五日に杖が無くなってる事に気づいて、被害状況の確認のために全部ひっくり返して確認した結果、バカ息子が盗んだ貴金属も無くなってるとわかった。そう言う事だろうが」

「だからって、お前の容疑が晴れたわけじゃない。お前が首謀者と共に宝物庫に侵入したのは事実だし、お前なら一度侵入した場所に一人で杖を盗みに戻ることも可能だったんじゃないのか?」

「保安局長さんは真面目で仕事熱心だねぇ。誰かさんに爪の垢でも飲ませたいわ。ねぇ~? 外務大臣さん」

 ユーゴに睨みつけられ、大臣は思わず目を反らした。

 保安局長とギルド本部長が、不思議そうに大臣の様子をうかがう中、警備隊長はユーゴが何のことを言っているのかを理解していた。


「俺はやってない。だが、盗んだ奴に心当たりはある。俺が一度解いて掛けなおした封術の隙をついて杖を盗める奴は一人だけいる。俺を抵抗符の反撃の盾にした上に、罪まで被せようとした性悪女がな。俺は、俺をはめたあいつをボコボコにするまで許さない……が、あいつから杖を取り返して、お前らにくれてやる気は無い」

 いつもヘラヘラと冗談ばかり言っては周囲から呆れられているユーゴは、その分、他者に寛容で誰かをかばう事はあっても責めることは無かった。

 長年ユーゴと共に仕事をしてきたギルド本部長でさえ、ユーゴが本気で怒っている姿など見たことが無かった。

 しかし今、怒りに震える彼の声が、真犯人ではなく外務大臣に向けられた

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