第四十三話 出店準備
ソーダイは報告書を作るのにどのくらい時間がかかるだろう?
パソコンとかいう魔具……じゃない、道具を使うからそんなに時間はかからないと言っていたが、全く予測が出来ないな。
ピッキングは出来るだけ早く終わらせなければ。最終確認が遅れると、またソーダイが寝ないからな。
明日の晩は忙しくなるんだ。グラグラされたら困る。
ソーダイが言った物を僕が走り書きした資材のリストは、とりあえず思いついたものだけが書いてある。この後の打ち合わせで多少変更があるだろうが、今のうちにまとめておいた方がいいだろうと二人で決めた。
まずは、焼き串。これは店のキッチンの戸棚の中にあると言っていたな。フォークよりも少し長い木の棒だって話だったが……。あった。たぶん、これだろう。
シリアルバーにも使った紙の袋もここに……。なんだ、ちょっとしか残ってないな。いいや、全部持っていこう。
調味料を試しに舐められるように皿に出しておくって話だったが……、ここにある皿だと大きすぎるな。あとでタツキの部屋に借りに行くか。
次は、ケチャップ、マヨネーズ、しょうゆ、みそ……。この辺は誰かに聞かないとわからないな。よし、後回しだ。
調味料の名前を書いて添えておく紙も必要だ。レジの後ろに紙が色々あったから、そこから手ごろなのを使おう。
パンは、青い模様の袋に丸いのが五個入ってるやつだと言っていたが……。これか? いや、こっちにもあるな。どっちも青い模様で丸いパンが五個だ。
どっちだ? まぁ、両方持っていけばいいか。
あとは、カルトンと小さい金庫とデンタク。カルトンっていうのは、レジで金を受け渡すときに使う青い皿の事だ。これはアイから教わったから知ってる。
小さい金庫は、レジの下の棚の奥に入ってると言ってたな。たしか、灰色でレジよりも少し小さいくらいの金属性の……。無いな。
そんなもん、ないじゃないか。変なカゴにはいった紙の束やら、変な棒やら、汚い袋ならあるけど……。
あと、デンタク? デンタクってなんだ? よし、これも後回しだ。
折り畳みのテーブル? なんだそれ? そんな話したっけ?
まぁ、いっか。これも後で誰かに聞こう。
あまり集められなかったけど、バラバラしてて持ちにくいな。オスカーに運ばせるなら鞍に括り付けなきゃならないし、なにか箱にまとめておくか。
さて、どの箱を使おう……。
異世界の素材の箱だと目立つしな。そんなところを注目されても面倒だ。
何かいい箱はないかな?
これは地味な色をしているが、文字がたくさん書いてあるな。
異世界の文字も不審に思われかねないし……、袋も布じゃないしな。
そう考えると、使えるものが少ない。
エステルの変化魔法に頼るか。
カウンターの中で、エステルは誰もいない入り口をじっと眺めて立っている。
誰もいないところに何か見えてるのか?
微動だにしないな。
「おい、エステル」
「ルネ様!」
「店の箱に変化魔法をかけて欲しいんだが」
ピッキングで使う青い箱を渡すと、エステルは困ったようにそれを何度もひっくり返しながら眺めまわした。
「ルネ様のお申しつけにはお応えしたいのですが……。この箱に変化魔法は掛けられませんわ」
「そうなのか?」
「変化魔法は素材自体を変えることが出来ません。綿は綿に、木は木に。色や形を変えるだけです。この箱はわたくしが知らない素材で出来ている物なので、変化魔法をかけられないのです。ご期待に沿えず申し訳ございません」
そんな制約があるのか。
知らなかったな。
「ルネ様、何かお困りですの?」
「あぁ、関所前に店を出すための物品を運搬したいんだが、入れ物がなくてな。この店にある箱は異世界の文字が書いてあるから、目立つだろう?」
「そう言う事でしたら、お酒の瓶が入っている木箱がお店のすみに積まれていました。文字をなくして形を変えることなら出来ます。三階の部屋で使っていないカーテンも探してみてはどうでしょう? ここにあるカーテンは木綿でしたから、それならば袋に変化することが出来ますわ」
「そうか。たしか、ユーゴの部屋はあまり使ってなさそうだった。使うときには魔法で家具を出して使ってる様だったから、備え付けの物は使ってないかもしれない。ちょっと、借りて来よう」
「ルネ様!」
「なんだ?」
エステルは何か言いかけて、口を閉じ、いつものように微笑んだ。
「いえ、なんでもありませんわ」
変な奴だな。




