↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/88

第四十一話 無法地帯

「ルネ君、結論を出すのはまだ早いです。もっと教えてください。この世界の事、この場所の事、この世界に住んでいる人たちの事。さっきの女性のような売り方が、こっちの世界では一般的なんですか?」

 何か考えがあるのか? わからない。

 でも、そんなにワクワクした顔で聞かれたら、答えないわけにいかないじゃないか。


「街へ入ればまた違うが、無主地での行商はだいたいあんな感じだ。商品は布やロープで体に固定したまま。金を受け取った手で、同時に品物を渡す。品物を並べれば盗まれるし、座れば襲われるからな。常に立ってるんだ」

「それだと、商品はあまり用意できないですね。手に持てる範囲っていう事でしょう?」

「そうだな。だから、普通は無主地なんかでやらない。ギルドへの上納金を払っても国内で店を出すのは、そっちの方が楽で安く済むからだ。どうしても無主地で売りたいなら、三人以上でやることが多い。一人が売って、二人が周囲を警戒する係だ。それなら少しは品物を並べられる」

「人数が必要ですね。警備となると人選が難しいですが……」

「強さをアピールできなきゃ意味がないからな。さっきの女みたいに一人で売るなら、普通は武器を手に持ったままで品物の受け渡しをするんだ。あいつは両手に商品を持っていたけど、腰のベルトにロッドを差していただろう? 常に臨戦態勢だと周囲にアピールしているんだ。あの女が失神魔法で獲ったと何度も言っていたのも、商品の良さだけじゃなく、自身の強さを誇示する狙いがあるんだろう」

「そこまで警戒しなきゃいけないんですね」

「無法地帯っていうのは、そう言う事だ。前回のティッシュは見向きもされなかったが、無料配布の菓子は、こっちから配る前に強奪されかねない。ソーダイは僕から離れるなよ」

「わかりました」


 魚から立ち昇る香りが変わった。

 そろそろ食えるか?

「ほら、こっちの世界の食い物だ。食ってみろよ。料理とはとても言えないけどな」

「ありがとうございます。味付けもなしですね」

「旅に出るときは、岩塩を持って出るからな。岩塩をなめながら食うんだ。今は岩塩がないから、魚の味だけ。たいして美味くはないな」

 魚に噛り付くソーダイの横顔に張り付いた『思案』は色濃く、消える気配はない。

 ソーダイにとってここは異世界。

 知らない世界の見慣れない文化を前にして、考えることは山ほどあるよな。


「ルネ君、作戦変更です。シリアルバーを配る相手は限定して、見返りに情報をもらいましょう。相手は、あの関所の衛兵。受付の人。あと魚を売ってた女性です」

「なんの情報をもらうんだ?」

「まず、衛兵には門が開くまでどのくらいかかるのか? おそらくこの答えは『未定』と返されるので、そのタイミングで、衛兵の人たちが食事をどうしているのかを聞きたいですね」

「なぜ、そんなことを聞くんだ?」

「衛兵がお客さんになり得るからですよ。彼らは門のこちら側のトラブルに関与はしないけど、門のこちら側で買い物は出来ますよね? そして、彼らは職務でここに居て、法の下行動している。素性のわからない旅の人達より信頼できます」

「なるほど。いくら無主地に出てきたとしても、衛兵が商人を襲ったなんてことが知れたら、ただでは済まないだろうからな」


「受付の人には、ここで何が出来るのか? そのために何が必要なのかを聞きましょう。この場にいる人たちが利用できるサービスがわかれば、その隙をついたサービスを提供できるかもしれない」


「女には何を聞くんだ」

「彼女には何も聞きません。ただ、この広場で明日から俺たちも店を出すから、お互いにうまくやろうと挨拶するだけですよ」

「それだけで良いのか? てっきりこの場での商いのノウハウでも聞くのかと思ったが」

 ソーダイの顔には『自信』がくっきりと出ている。

『覚悟』に支えられた大きな『自信』だ。

「そういう、挨拶が重要なんですよ。そこを間違えなければ、ノウハウやアイディアは後からきっと付いてくる。まず、受付から行きましょう」

『覚悟』と『自信』と『信頼』か。

 弱っちい奴に指図されるのは胸糞悪いが、こんな顔してる奴なら意外と気分がいい。

 どうせうまく行きっこないが、ソーダイがやるって言うなら付き合ってやるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。