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悪魔の島 ―選ばれし20人、生存率0%  作者: 虫松
悪魔の島

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第6話 屋根の上 ―見下ろす地獄

村の囲み、静かな始まり


村の中央。

井戸のそば19人。


誰も動けない。

村の外周。

低く、這う影。


一匹。


また一匹。

もう一匹

さらに増える。


円を描くように。

巨大なコモドドラゴンの群れ。


長い舌が、空気を舐める。


「……来るぞ」


慎吾が呟く。


マルコが低く言う。


「…No se muevan solos…」


(単独で動くな…)


だが、伝わらない。


一匹が、止まる。


そして。


一瞬で距離を詰める。


ドンッ!!!


「うわああああ!!」


恐怖が、爆発する。


全員が、散る。


「屋根の上だ!!」


ハンナが叫ぶ。


「Climb!! Up!!」


慎吾が叫ぶ。


「上に登れ!!」


だが一瞬の判断が遅れた者がいる。


オスカーが木に飛びつく。


「Help me!! Please!!」


必死に登る。


震える手。


滑る足。


「来るな!!来るな!!」


木の下。

コモドが見上げる。


動かない。

ただ、見ている。


次の瞬間。


噛みつく。


バキッ――


「……?」


木の幹が、削れる。


「やめろ!!」


もう一度。


バキッ!!


木が揺れる。


恐怖で、動けない。


三度目。


メキッ――


支えが、崩れる。


「No… no…!!」


落ちる。


地面。


その瞬間。


影が、覆う。


「Help!!Help!!」


声が、響く。


だが。


誰も動けない。

屋根に登る者たちの足が、止まる。


聞こえてしまうからだ。


まだ、生きている声が。


「「Help me!! Please!!」



その声は。

やがて。

森に吸い込まれる。



アントニオが崩れたレンガの上へ逃げる。


「No! Stay away!!」


必死に距離を取る。


高い。


届かないはずだった。


だが。


下で。


コモドが、体をしならせる。


尾の一撃。


ドゴンッ!!


衝撃。


足場が崩れる。


「え……?」


視界が揺れる。


落ちる。


転がる。


「No… no… please…」


囲まれる。

後ずさる。

だが逃げ場はない。


挿絵(By みてみん)


叫びが、夜に溶ける。



「こっちだ!!」


慎吾が叫ぶ。

美和の手を引く。


直人が先導する。


「登れ!!」


ハンナが手を伸ばす。


「Hurry!!」


一人、また一人。


引き上げる。


最後の一人。


ギリギリ掴む。


手を引く。

転がり込む。

屋根の上17人。


息を切らす。

誰も、下を見ない。


だが、ふと見てしまう。


本能 と奪い合い


地面では複数のコモドが、残されたものに集まる。

一匹が噛みつく。

だが横から別の個体が飛び込む。


奪う。

引く。

ぶつかる。


争う。

唸り声。

土煙。


「……」


誰も声を出せない。


また一匹のコモドが、地面に伏せた獲物に噛みつく。


低い唸り声。


だが。


次の瞬間。


横から別の個体が飛び込む。


奪う。


「……っ……」


慎吾の喉が詰まる。


奪い合い


バキッ――


強く噛む。


引く。

引きちぎる。


だが。

それを、さらに別の個体が奪う。


ぶつかる。

噛み合う。

押し倒す。


「……仲間じゃないのかよ……」


彩花が震える声で言う。


違う。


こいつらに“仲間”はない。


あるのは奪うか、奪われるか。


一匹が獲物を引きずる。

逃げようとする。

だが。


すぐに追いつかれる。

横から、後ろから。

噛みつかれる。

獲物を巡って。


コモドドラゴン同士が争う。

尾が叩きつけられる。

体がぶつかる。

土煙が上がる。



レベッカが呟く。


「They’re not hunting together…」


(協力してない…)


レイチェルが続ける。


「They just… take…」


(ただ…奪ってる…)


慎吾の手が震える。


「……俺たちも……」


言葉が途切れる。


分かってしまった。

自分たちも同じだ。

落ちた瞬間“奪い合われる”。




やがて。

奪い合いは終わる。


それぞれが。

奪ったものを持って、離れていく。


バラバラに。

統率もなく。

命令もなく。


ただ

本能だけで動く怪物。


マルコが低く言う。


「…No hay orden…」


(秩序がない…)


誰も意味は分からない。


だが。


恐怖だけは伝わる。



村の中央。

何も残っていない。


ただ。


地面だけが、荒れている。


「……」


誰も声を出せない。


沈黙


住居の屋根の上の17人。


風の音だけが響く。

誰も、下りようとしない。


この悪魔の島の生き物は。

群れない。助けない。分け合わない。


ただ奪う、そして生きる。




■オスカー・チャン 死亡

■アントニオ・サントス 死亡


残り生存者:17名


ここは、“逃げれば助かる場所”じゃない。“選ばれた順に消える場所”だ。

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