第5話 不気味な村の探索
森を抜ける。
誰も、喋らない。
拓海がいない。
たった一人、いないだけなのに。
空気が、軽い。軽すぎる。
「……うるさかったのに」
慎吾が呟く。
誰も笑わない。
「なんとかなるって……」
拓海の口癖
その言葉が、頭から離れない。
美和が静かに言う。
「……まだ、生きてるかもしれないよ」
慎吾は、答えられない。分かっているからだ。
あれは“助かる捕まり方じゃない”。
直人が言い放つ。
「……切り替えろ」
「死んだやつのこと考えても意味ねえ」
慎吾が睨む。
「……まだ確定してねえだろ」
直人は冷たい。
「じゃあ助けに行くか?」
沈黙。
行けない。
全員、理解している。
見捨てたという罪が共有される。
その時。ガサッ――
海外組が現れる。
マルコ、ハンナ、ダニエル、ナディア、他。
「Marco!」
「You okay!?」
彼らは状況を見る。
一人、足りない。
「…¿Dónde está el otro chico?」
(もう一人の少年はどこだ?)
慎吾は答えられない。
ただ、森を見る。
マルコは理解する。
顔が歪む。
「…Maldita sea…」
(くそったれ…)
直人が言う。
「……行くぞ」
マルコが遮る。
「¡No! ¡Esperen!」
(待て!)
だが通じない。
「……何言ってんだよ」
ハンナが割って入る。
「We stay together.」
(一緒に動く)
慎吾が頷く。
「……一緒に行こう」
言葉は通じない。
だが、“危険”だけは共有される。
森を抜ける。
全員が止まる。
そこにあった。
村。
円形に配置された家々。
中央の広場。
崩れた柵。
風に揺れる布。
「……What is this…」
「……村……?」
文化の違う者同士でも、理解できる。
人がいた場所。
慎吾が家に入る。
ギィ……
中は、そのままだ。
机。食器。
寝床。
そして。
途中で止まった生活。
乾いた食事。
倒れた椅子。
「……逃げた感じじゃない」
彩花が言う。
「……消えたみたい」
ダニエルが呟く。
「No struggle… no damage…」
(争った形跡がない…)
ナディアが震える。
「Then… where are they…?」
(じゃあ…どこへ行ったの…?)
村野中央。
井戸。
慎吾がロープを引く。
水音。
「……水だ」
ソフィアが確認する。
「Clean… drinkable.」
(飲める)
全員が息を吐く。
その瞬間だけ“助かった”と思う。
直人が言う。
「ここをベースにする」
マルコが強く否定。
「¡No! ¡Lugar peligroso!」
(ダメだ!危険な場所だ!)
通じない。
「……またそれかよ」
ルーカスが冷たく言う。
「We need resources.」
(資源が必要だ)
判断が割れる。
だが疲労と安心が、思考を鈍らせる。
“危険な場所ほど居座る”人間の本能
彩花が呼ぶ。
「……これ見て」
全員が集まる。
壁一面の絵。
塔。
天に伸びる異様な構造物。
その周囲に。
人々。
祈る。
倒れる。
逃げる。
そして封じる円。
「……Seal…?」
ナディアが呟く。
「……封印……」
彩花が重ねる。
言語が違うのに。
意味が一致する。
その横。
巨大な爬虫類。
地を這う影。
鋭い顎。
群れ。
「…Dragon…?」
「……デカいけど。トカゲだろ……」
その時。
恵が固まる。
「……いる……」
全員が振り返る。
「そこに……」
誰もいない。
「見てる……」
「やめて……」
リディアが言う。
「Psychological breakdown…」
(精神崩壊の兆候)
カサ……
音。
全員が止まる。
カサ……
カサ……
複数。
村の外。
森の影。
低い影。
長い体。
現れる。
巨大なコモドドラゴン。
一匹。
さらに。
二匹。
三匹。
四匹。
円を描く。
村を囲む。
完全包囲
誰も動けない。
ただ、見られている。
舌が、空気を舐める。
マルコが低く言う。
「…Cazadores…」
(狩人だ…)
誰も理解できない。
だが“意味”だけは伝わる。
慎吾が呟く。
「……様子見てるんじゃない……」
「……狩りのタイミングを見てる」
直人の顔が強張る。
「……囲まれてる……」
村の外。
闇の中。
無数の目。
じりじりと、距離を詰める。
この村は。
安全な場所じゃない。
かつて人が住み。
そして消えた場所。
つまり“餌場”
今から人間狩りが、始まる




