第6話 直人脱出編、結末
海面の水面が、揺れる。
違う。
逃げたはずの影じゃない。
“深さ”が、動いている。
直人の目が細くなる。
「……でかすぎる」
次の瞬間。
水面が割れる。
ドォンッ!!!
海が、爆発する。
現れたのは巨大な影。
いや“海そのもの”
顎が開く。
ありえないほどに。
無数の鋭利な牙が並ぶ。
一本一本が、人間の腕ほどの太さ。
質量。
帆船の下から、突き上げる。
バキンッ!!!
船体が、消える。
「――は?」
理解より先に世界が、砕ける。
直人の体が宙に浮く。
時間が、伸びる。
視界の端に巨大な頭部。
と巨大な目。
“見ている”捕食者の目。
「……モサ……サウルス……」
理解する。
ティラノサウルスがいた。
プテラノドンがいた。
なら海にも恐竜がいる。
それが“自然”だ。
「……俺は……」
「甘かった……」
海へと落ちる。
バシャァッ!!
冷たい。
だが
その冷たさは、一瞬。
次の瞬間。
ドンッ!!
横から衝撃。
魔サメ。
ガブッ!!
「ぐぁあああああああ!!!」
足が噛み砕かれ消える。
血が広がる。
さらに。
ドォン!!
魔シャチ。
腕へと噛みつく。
腕を引き裂く。
「……はは……」
笑う。
痛みの中で。
「……完璧だった」
「全部……正しかった」
電気。
帆船。
理論。
全部。
“通用した”それでも生き残れない。
だが直人の意識はまだある。
(……まだだ)
まだ考える。
まだ、終わっていない。
(逃げるルートは……)
無い。
理解する“完全包囲”
さらに。
ドォン!!
魔シャチ。
横から。
体が捻じれる。
骨が鳴る。
「……はは……」
笑う。
(ここまでか)
その瞬間。
頭の中に。
走馬灯のように“光景”が流れ込む。
森。
仲間たち。
慎吾。
「落ち着け、まだ大丈夫だ」
(……甘いな)
直人は心の中で呟く。
だが。
その言葉は、嫌いじゃなかった。
美和。
「大丈夫だよ、きっと」
(……根拠がない)
なのに。
なぜか。
“間違っている気がしなかった”
彩花。
「それ、根拠あるの?」
(……ああ)
直人は答える。
(全部、あった)
判断。
分析。
選択。
すべてに“理由”があった。
(なのに――)
映像が切り替わる。
塔。
光。
脈動。
ドクン……
(あれは……なんだ?)
発電所。
ケーブル。
メモ。
読めなかった英語。
(……ヒントはあった)
(俺は……見逃したのか?)
違う。
(足りなかった)
知識が。
時間が。
理解が。
そして“人間そのものが”
その時。
下から影。
再び。
巨大な海の影。
圧倒的な質量。
(……来る)
モササウルス。
直人はもう、抵抗しない。
ただ、考える。
(ティラノサウルスとプテラノドンがいた)
(なら、海にもいる)
(当たり前だ)
(この島は……“そういう構造”だ)
ピースが、はまる。
森→ティラノサウルス
空→プテラノドン
海→モササウルス
すべてに“上位捕食者”が存在していた。
(逃げ場なんて……最初からなかった)
理解。
遅すぎた理解。
だが。
完璧な理解。
「……はは……」
直人は笑う
血の中で。
「……完璧だった」
「全部……正しかった」
空を見る。
海を見る。
遠く。
島の塔の光。
脈打つ。
まるで“見ている”
(……選別)
その言葉が浮かぶ。
(この島は……選んでる)
誰を。
何を。
残すか。
(俺は……違ったか)
一瞬。
慎吾の顔。
美和の声。
浮かぶ。
(……あいつらは……)
続きは、出ない。
時間が、終わる。
巨大な口が、迫る。
(……でも)
最後の思考。
(“攻略”は……できる)
(やり方は……ある)
ほんのわずかに。
笑う。
(ここには出口がない)
だが。
(ルールはある)
ドンッ――
暗転。
海は、赤く染まる。
やがて、何も残らない。
ただの静かな水面へと戻った。
直人脱出編 完
つづく




