表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔の島 ―選ばれし20人、生存率0%  作者: 虫松
レッベカ・レイチェル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/26

第5話 レベッカ・レイチェル編、 衝突

悪魔の島の夜。


焚き火の火が、小さく揺れている。


パチ……パチ……


静かすぎる。

虫の音もない。

風もない。


ただ、水面だけが


ぴくり、と揺れた。


ソフィアが顔を上げる。


「……何か来る」


エヴァが即座に周囲を見る。


「ここは安全圏のはずよ」


レイチェルが低く呟く。


「……データにない」


ズ……ン……


地面が沈む。


音ではない。


“圧”だった。


レベッカが目を細める。


「……来る」


次の瞬間。


ドンッ!!!!


衝撃。


視界が吹き飛ぶ。


レベッカの体が宙を舞い、地面を転がる。


「ぐっ……!」


息が詰まる。


何が起きたか、理解が追いつかない。


レイチェルが叫ぶ。


「速すぎる!!」


その時。


月明かりが雲間から差し込む。


そして見えた。


闇の中

最初に見えるのは、“目”ではない。


水面の揺れだ。


ぴくり、と波紋が広がる。

風はない。


なのに、水が“逃げるように”震えている。


その直後。


ズ……ン……


地面が沈む。


音ではない。

圧力だ。


森の空気が、一瞬で重くなる。


そして。


ゆっくりと、闇の中から“それ”が現れる。


巨大。


という言葉では足りない。


質量が歩いている。


体長4メートルを超える肉の塊。

皮膚は灰色ではない。


泥と血が乾いて黒く変色し、

ところどころが裂け、古い傷が盛り上がっている。


その体は“太っている”のではない。


圧縮されている。


筋肉が、皮膚の下でうねるたびに

ゴリ……と鈍い音が鳴る。


顔。


それは“カバ”の原型を残している。


だが――


顎が、異常に長い。


ゆっくりと開く。


ギ……ギギ……


音がする。


関節が悲鳴を上げるような音。


開く。

さらに開く。

まだ開く。


人間一人が、そのまま入るほどに。


口の中は、暗い。


ただ黒いだけではない。


粘ついた唾液が糸を引き、

奥の奥に“動くもの”が見える。


舌。


いや、肉の塊が脈打っている。


そして。


下あご。


そこにあるのは


2本の牙。


カバ特有の犬歯ではない。


もっと長く。

もっと鋭く。

まるで“杭”。


肉を裂くためではない。

“貫いて止めるため”の形。


目は小さい。


だが。


光っている。


理性はない。

感情もない。


あるのは殺意

それだけ。


足が動く。


一歩。


ズンッ。


地面が沈む。


草が潰れるのではない。


押し潰されて消える。


そして走る。


その巨体が。

爆発するように。


ドォン!!!


地面が割れる。


木が揺れる。

空気が押し出される。


重量3トンの塊が、100メートルを9秒で詰めてくる。


逃げる?

無理だ。

考える時間はない。


見た瞬間に、終わっている。


最後に聞こえるのは。

息でも、咆哮でもない。


ただの音。


ゴンッ!!


衝突音。

それだけ。


そして。

静寂。

何も残らない。


血も。声も。


ただ踏み荒らされた“道”だけが残る。


それが魔カバの通り道。


挿絵(By みてみん)


「……カバよ」


レベッカが、震えながら呟く。


エヴァが叫ぶ。


「下がって!隊列を――」


ドォンッ!!!


消える。


一瞬で。


ソフィアが振り返る。


「エヴァ!?」


また衝撃。


見えない。


音だけが来る。


ソフィアの体が弾かれる。


地面に叩きつけられる。


「っ……!」


立ち上がろうとする。


だが。


影が覆う。


レイチェルが叫ぶ。


「逃げて!!」


間に合わない。


ドンッ!!


鈍い衝突音。


それだけ。


静寂。


火が揺れる。


パチ……パチ……


残されたのは。


レベッカとレイチェル。


二人だけ。


レイチェルの声が震える。


「……ありえない……」


「この速度……この質量……」


レベッカが答える。


目を見開いたまま。


「……でも理論上は可能……」


沈黙。


ズ……ン……


また、地面が沈む、まだ地獄は終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ