第4話 レベッカ・レイチェル編、夜の法則
※彼らは英語で会話している(日本語表記)
悪魔の島の夜。
焚き火が揺れる。
パチ……パチ……
昼とは違う。
あまりにも、静かだった。
虫の声がない。
風だけが、草を撫でる。
レイチェルが顔を上げる。
「……静かすぎる」
ソフィアも周囲を見渡す。
「何もいない……?」
エヴァは冷静に答える。
「夜行性が少ないだけよ」
レベッカは、何も言わない。
ただ、耳を澄ませている。
その時。
ズン……
低い振動。
足元から、響く。
ズン……
ズン……
ソフィアが息を呑む。
「……何か来る」
水場。
その水面が、わずかに揺れる。
ピチャ……
エヴァが眉をひそめる。
「でもここは安全圏のはずよ」
レイチェルも言う。
「昼間のデータでは危険性は低い」
その時。
低い、湿った音。
「グゥゥゥゥ……」
全員の視線が、水場に集まる。
再び。
「グォォォ……」
水の奥から。
重く、鈍い声。
ソフィアが小さく言う。
「……ワニ?」
エヴァがすぐに答える。
「可能性はある」
レイチェルも頷く。
「水辺の捕食者なら説明がつく」
ソフィアは少し安心したように言う。
「……なら、水に近づかなければ大丈夫よ」
エヴァも同意する。
「ええ、陸上では危険度は下がる」
その会話を。
レベッカは黙って聞いている。
ズン……
また、地面が揺れる。
さっきよりも、強く。
レベッカが呟く。
「……違う」
全員が彼女を見る。
「ワニじゃない」
その瞬間。
バシャッ!!
水面が大きく揺れる。
波が広がる。
だが姿は見えない。
ただ。
そこに“いる”。
ズン……
ズン……
地面が揺れる。
水辺だけではない。
ソフィアの顔がこわばる。
「……おかしい」
エヴァも気づく。
「陸にも……?」
レイチェルが呟く。
「……ありえない」
レベッカの目が、細くなる。
データが崩れる。
仮説が、壊れる。
それでも。
まだ、理解が追いつかない。
遠くで。
再び、あの声。
「ゴォォォォ……」
低く。
重く。
空気を震わせる音。
それは。
捕食者の声ではない。
もっと、原始的で。
もっと、圧倒的な“質量”の音だった。
焚き火が、揺れる。
風が止まる。
そして。
誰も気づいていない。
悪魔がすでに、水の中だけではないことに。




