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悪魔の島 ―選ばれし20人、生存率0%  作者: 虫松
悪魔の島

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第9話 裏切り者と分裂

悪魔の島の夜。

風が、冷たい。


屋根の上13名の生存者。

誰も、眠れていない。


腹が鳴る。


水はあるだが、食料がない。


「……限界だな」


直人が呟く。


慎吾が静かに言う。


「分けるしかない」


その言葉に空気が変わる。


ルーカスが前に出る。


「No.」


低い声。


「No value, no use.」


誰も理解できない。


だが“拒否”だけは伝わる。


彼は、残った食料袋を抱え込む。


「……は?」


直人が睨む。


「お前、それ……」


ルーカスは一歩も引かない。


「Mine.」


「価値がある者にだけ配る」


言葉は通じない。


だが、その態度は明確だった。


「ふざけんなよ」


直人が詰め寄る。


マルコが間に入る。


「¡Basta!(やめろ!)」


緊張が張り詰める。


リディアが低く言う。


「……もう始まってる」


「“内側の崩壊”が」


生存者たち13人は、三つに割れた。


◆学生組(4名)

慎吾・美和・直人・彩花


「俺たちは、固まる」


直人が言う。


「他は信用できない」


慎吾は反論しかけるが、飲み込む。


彩花が冷静に言う。


「合理的ではある」


美和は不安げに呟く。


「……でも……みんなでいた方が……」


誰も答えない。


◆レベッカ・レイチャル組 (4名)

レベッカ・レイチェル・ソフィア・エヴァ


「We share.」


ソフィアが言う。


「Equal.」


エヴァが頷く。


「No waste.」


だが彼女たちの目にも、不信がある。


◆マルコ組(5名)

マルコ・ハンナ・リディア・マリア・カタリナ


ルーカスも、そこにいる。


食料袋を抱えて。


マルコが睨む。


「…Distribuye.(分けろ)」


ルーカスは首を振る。


「No.」


カタリナが冷静に言う。


「…Racionalmente, él tiene razón.」

(…合理的には、彼が正しいわ)


「La distribución debería basarse en el valor.」

(配給は“価値”で決めるべき)


マリアが反発する。


「¡Eso es una locura!(狂ってる!)」


敵意だけが増幅する。




それぞれが距離を取る。

同じ場所にいながらそれぞれ別の“陣営”。


風の音。

腹の音。

誰も眠れない。


――その時。


カサ……


「……?」


慎吾が顔を上げる。


影。

動いた。


「誰だ!」


直人が立ち上がる。


だが。


もう遅い。


タタタッ――


走り去る足音。


「待て!!」


追う。


だが、暗闇。


見えない。


戻る。


そして。


「……ない」


食料が消えている。


「は……?」


空気が凍る。


「……お前らだろ」


直人が低く言う。


海外組を睨む。


ソフィアが首を振る。


「No!」


エヴァも否定する。


「We don’t steal.」


通じない。

余計に苛立つ。


「じゃあ誰だよ!!」


声が荒れる。


マリアが叫ぶ。


「¡No fuimos nosotros!」(私たちじゃない!)


カタリナは冷静に観察している。


「…Es alguien de dentro.」(内部の者よ)


リディアが呟く。


「………It’s started.」(始まったわ)


「The hunt for the culprit.」(犯人探し)


慎吾が言う。


「落ち着け」


「まだ決めつけるな」


だが。


誰も聞かない。


目が合う。

逸らす。

疑う。

信じない。


美和が震える声で言う。


「……やめようよ……」


「こんなの……」


誰も、答えない。


その時。


彼女が、ふと呟く。


「……また……聞こえる……」


「え?」


「……“疑え”って……」


風が吹く。


屋根の上13人。


だが心は、もうバラバラだ。



外の敵よりも、恐ろしいもの。


それは

内側に生まれる“不信”。


この悪魔の島は、知っている。

人間が最も簡単に壊れる方法を。


食料は奪われた。

だが、それ以上に。

“信頼”が失われた。

犯人は、まだ分からない。


だがもう関係ない。

全員が、互いを疑っている。


残り生存者 13名


この夜“人間同士”が、敵になった。



【第一部 完】

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