弁護側証人、岡部純平
傍聴席に座っていた記者は後にこう語る。
法廷に入ってきた証人が岡部だと、すぐに分かりました。
お花畑のにおいがしたんです。
でも、なぜ弁護側証人なのか、全く分かりませんでした。
まさか、法廷であんな茶番が見れるとは思ってもいませんでした。
裁判長も、たぶん呆れていたと思います。
「証人は氏名を述べてください。」
「岡部純平です。」
「年齢は。」
「57歳と少しです。」
「職業は。」
「元捜査一課刑事です。」
「弁護人は尋問をはじめてください。」
中野弁護士が立ち上がる。
「あなたは、被告人の取調べを担当されましたね。」
「はい。」
「私は検察官として、調書を拝見しました。」
「ありがとうございます。」
「単刀直入にお聞きしますが、あの調書はねつ造ですね。」
「はい、ねつ造です。」
「異議を申します。えー、調書の真正は証明されています。」
「異議を却下します。」
「ねつ造ですね。」
「ねつ造です。」
「被告人は調書のような事を述べていませんね。」
「述べていません。」
「異議を申します。えー、取調映像が証拠として存在しています。」
「異議を却下します。」
「被告人を誘導しましたか。」
「誘導しました。」
「何でそんなことをしたのですか。」
「当時は自白が取れればいいと思っていました。」
「調書の内容を被告人が語ったと今も思いますか。」
「思いません。」
「以上です。」
「検察官は反対尋問をはじめてください。」
検察官は勢いよく立ち上がる。
「証人、あなたが調書をとった被告人で無罪になった人は何人いますか。」
「え……覚えてないです。」
「記録によりますと、0人です。すごい取調官ですね。」
「いや、あの、えと、違法取調べです。」
「でも、裁判所には認められているのですよ。」
「え、え、あの、違法取調べです。」
「以上です。」
検察官は腰を下ろす。
岡部はほっとしたような顔をした。
「岡部証人、私からもお聞きします。」
裁判長が、岡部に話かける。
「え、」
「証人は、取調調書の否定をされてるのですね。」
「え、あ、はい。」
「そうですか。被告人に、殺意はなかったと言いたいのですね。」
「あ、はい。だって、言ってないんですよね。よく考えてみると。」
「一審では、次のように証言してますね、『例えば、『遊びに行く』って聞いて、『うん』って答えたら、遊びに行くって言ったって書くでしょ? おんなじですよ。それを『うん』しか言ってないって言うんですか? それは屁理屈です』このように証言してますが、証言を撤回されるのですね。」
「え、あの、あの時は、どうかしてました。」
「そうですか。」
裁判長は、手元の書類を閉じた。
「証人は退廷してください。」




