表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/7

控訴審開廷

法廷には、異様な空気が漂っている。

検察席に座る検察官が、弁護人席を怒気のこもった目で見ていた。

弁護人席には2人の男が座っている。

若い男は悠然と手元の書類に目を落としていた。

眼鏡の老人は、黙って水を飲んでいた。


「起立してください。」


法廷に、裁判官3人が入ってきた。


「開廷します。」


女性裁判長の静かだが、よく通る声が、控訴審のはじまりを告げた。


「検察官、控訴状および控訴理由書を陳述しますか。」


「その前に一点よろしいですか。」


「何でしょうか。」


「弁護人席に座る人物の資格について、検察は異議を申し立てます。」


「どちらかの人物ですか、それとも両人ですか。」


「中野広俊氏にです。」


「裁判所は、彼の弁護士資格を確認しております。」


「彼は、この事件の一審で検察官として、被告人と接しております。職業倫理の観点から、また、公務員守秘義務の観点からも、問題があると言わざるをえません。」


裁判長は陪席裁判官の意見を確認する。


「主任弁護人、この点で何かありますか。」


「そうですな。一点だけ、よろしいかな。」


老弁護人がゆっくりと立ち上がる。


「中野弁護人は、一審で検察官の任を拝しておりましたな。これは確かですわな。」


弁護人はゆっくりと検察官を見つめた。


「で、それに何の問題がありますかな?検察には、秘密にしている未提出の証拠でもあるのですかな?もしくは、語って欲しくない、違法な取調べでも行われたのですかな?被告人の不利益は一切ないと弁護人は考えておりますな。もし、検察が『不利益』とおっしゃっるならばですな。それこそ、検察の驕りですわな。検察には、被告を『有罪』にする権利がある訳ではないはずですな。検察に利益が存在し得ない以上、利益相反には当たらないですな。弁護人はそのように考えますが、どうでしょうかな。」


「裁判所も、同様の結論です。」


裁判長は、毅然とした目で検察官を見た。


「何か、問題がありますか。弁護人の指摘にあったような、隠匿事実がありますか。」


「……問題ありません。」


「検察官、控訴状および控訴理由書を陳述しますか。」


「書面の通り陳述します。」


「弁護人、答弁書を陳述しますか。」


「陳述します。」


中野弁護人が立ち上がった。


「弁護人は、控訴状記載の有形力の行使に関して、あらためてそれを否定します。また、一審判決文の以下の点に関しても、それをあらためて否定します。


一、殺意。被告人に殺意はなく、殺意の証拠とされる供述調書の任意性を否定する。


一、未必の故意。被告人はピーナッツパンを摂取した時に、被害者の事を考えていた訳ではなく、ただピーナッツパンを食べていただけである。


一、被害者との接触。被告人と被害者が、本件当日に確実に接触した証拠は存在しない。


以上の点から、弁護人は被告人の無実をあらためて主張いたします。」


中野はどかっと椅子に座った。


「検察官は、控訴状を証明する新証拠として、2人の証人の供述調書を提出しておりますが、この証人を法廷に召喚することは可能ですか。」


「はい。証人の了承は得ております。」


裁判長は、陪席裁判官の意見を確認する。


「弁護人は、答弁書の内容の証明のために、新たな証人申請をされていますね。」


「はい、ぜひお願いしたいですな。」


裁判長は、陪席裁判官の意見を確認する。


「では、次回法廷に証人を召喚します。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ