控訴審判決ーーそして、その3ヶ月前
「被告人を拘禁12年に処する。」
裁判長の乾いた声が法廷に響いた。
「……異議ありですな。」
弁護人は誰にも聞こえない、小さな声でつぶやいた。
隣に座る男はうなだれている。
傍聴席に座っていた木暮真奈は、視線が定まらず、あちらこちらを見ていた。
誰もが、勝ちを確信して疑っていなかった。
ーー3ヶ月前
弁護人の事務所兼自宅マンションには、3人の男と1人の女、そして1匹の老犬が集合していた。
木暮真奈は、老犬ジャッキーを撫でながら、満面の笑みを浮かべていた。
男たちの顔に笑みはない。
「岡部さん、あなたが最初ですからな。まあ、がんばってくださいな。」
「私は、質問に答えるだけですから、中野さんしだいです。」
中野は小さく笑う。
「中野さんは、検察しだいでは、最初になりますからな。」
「たぶん、私が最初ですね。私が現役で検察だとしても、やはり最初に斬り込みますよ。」
「私が検察でも斬り込みますわな。」
男3人は小さく笑った。
「さて木暮さん。」
「ふへぇ?」
木暮は変な声を出す。
「あなたは、とにかく彼女から話を聞き出してください。」
「はい。」
「知り合いの女性弁護士に頼みましたので、一緒に行ってきてください。」
「木暮、行きまーす!」
岡部が呟く。
「……木暮、出撃します。」
中野が言う。
「親父にもぶたれたことないのに。」
「通常の3倍の速さで接近しそうですな。」
男たちは大笑いした。
木暮真奈だけが、ポカンとした。




