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無色の輝石使い  作者: 神代シン
第一章無色の落第生

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32.第一章・無色の落第生


 森を抜けた二人は、南へ向かう街道を見つけた。

 道の先には、山々が連なっている。

 その向こうには、教団の地図にも記されていない土地があるという。

 真は歩きながら、ふと尋ねた。

「ねえ、ガルド」

「今度は何だ」

「僕がいつか、すごく強くなったらさ」

「うん?」

「君は、僕を止められる?」

 ガルドは足を止めた。

 真は、冗談を言ったつもりではなかった。

 自分の力は、他の色に干渉できる。

 力の流れを変えられる。

 その力が成長したとき、どこまでできるようになるのか。

 想像するだけで、背筋が寒くなる。

 ガルドはしばらく真を見つめたあと、鼻で笑った。

「止めてほしいのか?」

「……わからない」

「なら、覚えておけ」

 彼女は真の額を指で小突いた。

「お前が間違ったことをしたら、私は殴る」

「うわ、即答……」

「それでも止まらなかったら、もう一度殴る」

「何回殴るつもりなの?」

「お前が目を覚ますまでだ」

 真は額を押さえながら、苦笑した。

 ガルドも笑った。

 その笑い声を聞いて、真は少しだけ安心した。

 自分がどれだけ強くなっても。

 どれだけ多くの色を知っても。

 自分の間違いを指摘してくれる人がいる。

 そのことを、忘れないようにしようと思った。

 やがて二人は、街道の分岐点へたどり着いた。

 古い道標には、三つの行き先が刻まれていた。

 北――白冠都市。

 東――緑の樹海。

 南――灰燼平原。

 真は道標を見つめた。

 東へ行けば、緑の輝石について学べるかもしれない。

 南へ行けば、ガルドの力と関係のある土地があるかもしれない。

 北へ戻れば、教団の秘密に近づけるかもしれない。

 どの道にも、危険がある。

 どの道にも、知らないものが待っている。

「……どっちへ行こうか」

 真が尋ねると、ガルドは南を指さした。

「まずは、私の知っている場所へ行く。お前の力を調べるのは、そのあとだ」

「いいの?」

「何だよ。お前は私を信用してないのか?」

「そうじゃないけど……」

「だったら決まりだ」

 ガルドは歩き始めた。

 真も、その隣に並んだ。

 南の空には、赤い雲が広がっていた。

 やがて訪れる戦場の色。

 命を燃料に変える者たちの色。

 そして、真が初めて知ることになる、力を持つことの代償。

 それでも今の彼には、まだ何もわからない。

 ただ、歩いていく。

 色を持たない少年と、身体を燃やす少女。

 二人の旅は、ここから本当の意味で始まる。

 その旅の果てに、真が世界からすべての輝石を消し去ることになるなど、今は誰も知らなかった。

 彼自身でさえも。

――第一章・完。

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