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無色の輝石使い  作者: 神代シン
第一章無色の落第生

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21/40

21 白冠の名の下に


 町の地下水路では、ヴァイスが崩れた白壁を見つめていた。

 騎士たちは、周囲を調べている。

「ヴァイス様。対象は逃走しました」

「見ればわかる」

 ヴァイスの声は静かだった。

 怒鳴りもしなければ、苛立ちを露わにもしない。

 ただ、崩れた壁の断面を、じっと見つめていた。

「……この破損は、外側からの攻撃ではありません」

 騎士の一人が報告した。

「白壁を構成する波長が、内部からずらされています。術者の制御を失ったというより、壁の構造そのものが崩されたようです」

 ヴァイスは、ゆっくりと頷いた。

「やはり、そうか」

「やはり、とは……?」

「無色の輝石は、色の力を持たないのではない」

 ヴァイスは、胸元の白い輝石に触れた。

「色が定まっていない。だからこそ、他の色に干渉できる可能性がある」

 騎士たちは、沈黙した。

「しかし、それは……」

「理論上は、危険な性質だ」

 ヴァイスは、淡々と続けた。

「他の色を拒絶する白。燃焼する赤。流動する青。成長する緑。もし無色の輝石が、それぞれの性質へ干渉できるのなら……」

 彼は、言葉を切った。

 その先を、口にする必要はなかった。

 色の力を制御する者は、色の力を壊すこともできるかもしれない。

 それは、教団にとって見過ごせない可能性だった。

「対象の確保を優先する。ただし、無理に追い詰めるな」

「理由をお聞きしても?」

 ヴァイスは、崩れた壁から目を離した。

「彼の力は、まだ不安定だ。こちらが強く出れば、何が起きるかわからない」

 彼は、部下たちを見渡した。

「それに、彼自身が何をできるのか、まだ理解していない」

「では、どう対応を?」

「観察を続けろ。彼がどこへ向かい、誰と接触し、何を学ぶのかを記録する」

 ヴァイスは歩き出した。

「無色の輝石が再び現れたことには、必ず意味がある」

 その声は、地下水路の壁に静かに反響した。

「彼を、世界の外へ放置するわけにはいかない」

 騎士たちは、一斉に頭を下げた。

「白冠の名の下に」

 その言葉が、地下の暗闇へ消えていく。

 ヴァイスは振り返らなかった。

 彼の中では、すでに一つの結論が形を取り始めていた。

 無色の輝石は、ただ珍しいだけの存在ではない。

 世界の色を保つ秩序に、干渉しうる存在だ。

 それが救いになるのか。

 災いになるのか。

 まだ、誰にもわからない。

 だからこそ、教団は手に入れなければならない。

 理解するために。

 管理するために。

 そして、必要ならば――その力が何を意味するのか、世界が知る前に決着をつけるために。

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