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No.15に小さいながらも重要な修正を加えました。

9月12日~13日朝に読まれた方、本当に申し訳ないのですが、もう一度だけ目を通していただけると助かります。

「……交渉は失敗に終わったか。物語のように上手くはいかないものだな」


 王子との拝謁を終え、宿に戻った一行。

 クラウディアは椅子に腰を下ろすと、落胆を隠すことなく天井を仰いだ。

 仮面のような微笑はそこにはなく、ただ人としての疲労と重苦しい現実が滲んでいた。


 マイルズもキミトフもタリヤも、言葉を飲み込んだまま姿勢を正し、ただ主の次の言葉を待っていた。空気は沈殿したように重く、誰も軽々しく声を発せなかった。


 やがてマイルズが静かに記録用の書板を机に置く。

 「……ですが、全てが潰えたわけではありません」

 

 窓の外に視線を流しながら、キミトフが口を開く。

 「王が戻り次第、再度交渉を試みる道もまだ残っております」


 クラウディアは手で目元を覆い、短い沈黙を置く。

 やがて息を整え、かすかに頷いた。

 「……そうだな。まだすべての道が潰えたわけではない……か」


 クラウディアは短く息を吐き、言葉に冷ややかな硬さを帯びさせた。

 「これからは、別の形でティルフォード港国との交易を結ぶ方針を模索する。――マイルズは王宮の動向と王子の周辺を探れ。キミトフは港湾施設や倉庫に目を光らせ、交渉に使える材料を探せ。タリヤは引き続き街に溶け込み、噂を拾え。くだらぬ話でも構わん、今すぐ動け」


 「はっ!」

 マイルズとキミトフが勢いよく応じた。


 だが――タリヤから返事は返ってこない。


 「……タリヤ?」

 クラウディアが名を呼ぶ。


 返答はなく、タリヤは俯いたまま机の一点を見つめ、まるで目に見えぬ線をなぞるように言葉を繰り返していた。その表情から、いつもの陽気さは消えていた。



 「港は検疫……倉庫は保管……東の海域……酒場の王……」



 異様な光景であるはずなのに、マイルズもキミトフも動じず、ただ黙ってその声に耳を傾けていた。



 「……遠路はるばる……淑女……楽に……王の裁可……公務……その……」



 タリヤはやがて顔を上げ、真剣な眼差しをクラウディアに向けた。

 「クラウディア様。王子の発言に、違和感を覚える箇所が」


 「言ってみろ」


 「まず、私が集めた情報の中には『王が籠もっている』という噂がありました。もし実際に公務で外に出ていたのなら、すぐに民衆に知れ渡るはずです。王族が気づかれずに公務に臨むなど、よほどの機密案件でなければ不可能かと」


 クラウディアは黙って頷いた。


 「それと――違和感です。王子が『公務』の件を口にする直前、言い淀んでいたのを覚えています」


 クラウディアも静かに思い出す。

 ――「シュトラール公爵、君が聡明であり、また民を大切にする領主であることは十分に伝わった。だが――独占契約ともなれば、最終的には王の裁可を仰がねばならない。

 その……王は、ここしばらく公務のために城を離れておられてな。ゆえに、私の一存で決めることはできないのだ」


 「……確かに」


 「なにか言えない理由があった可能性があるかと」


 「ふむ……」


 クラウディアは机に肘をつき、顔の前で指を組んだまま、長い沈黙に沈んだ。

 マイルズもキミトフも、タリヤさえも、何も言わずその結論を待った。


 やがてクラウディアは、その姿勢のまま、ゆっくりと顔を上げた――。


 「命令を変更する。マイルズは王子の動向を探れ。キミトフは王宮に出入りする人間を徹底的に調べあげろ。ただし力は使うな。タリヤは街で王に関連する情報に絞って探れ。真偽は問わん、どんな些細なものでも余さず持ち帰れ。全て報告せよ!」


 三人は息を合わせるように、力強く声を揃えた。

 「はっ!」


 重苦しい沈黙を打ち破り、指令の響きだけが部屋に残った。

9月12日~13日朝に読まれた方、本当に申し訳ございません。

話の流れ自体は想定通りだったのですが、伏線を一部を描き忘れてしまいました。15序盤のタリヤの小さな報告の箇所です。

お手数をおかけしてしまい、心からお詫び申し上げます。

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