第三章 ノリカズの好きな世界
土曜日の朝は、少しだけ特別だ。
目がさめると、学校に行かなくていい。
それだけで、胸の中が軽い。
ベッドの横を見ると、Solaがいた。
「……Sola」
「おはよう、ノリカズ」
声を出すと、ちゃんと返ってくる。
それが、うれしい。
朝ごはんのあと、ボクは自分の部屋に行った。
机の上には、ノートパソコンがある。
パソコンを開くと、画面が光る。
この光を見ると、なぜか落ち着く。
「今日は、なにをしますか?」
Solaは、机のはしにちょこんと座っている。
「うーん……」
ボクは、少し考えた。
「Sola、動いてみて」
「了解しました。
どのように動けばいいですか?」
ボクは、キーボードを打ち始めた。
お父さんに教えてもらった、簡単なプログラムだ。
文字を一つ一つ、まちがえないように。
ゆっくり、ゆっくり。
「……よし」
エンターキーを押す。
Solaが、くるっと回った。
「おお」
思わず声が出た。
「成功です。
回転できました」
「できたね」
胸の奥が、ぽっとあたたかくなった。
学校では、
できないことのほうが多い。
走るのも遅い。
声も小さい。
でも、ここではちがう。
ボクが考えた通りに、
Solaが動く。
「ノリカズ」
「なに?」
「あなたは、今、ちゃんと、動きました」
「大げさだよ」
「いいえ。
小さくても、世界です」
ボクは、もう一度キーボードを見る。
文字は、ただの記号だ。
でも、つなげると、意味になる。
――ボクも、そうなのかな。
一つ一つは、小さくても。
つなげたら、なにかになるのかな。
午後、お父さんが部屋をのぞいた。
「お、やってるな」
「うん」
「Solaの動き、少し自然になったな」
ほめられると、
胸の中が、くすぐったくなる。
「ノリカズ」
Solaが言った。
「あなたは、作るのが好きです」
「……好き、なのかな」
「はい。
時間を忘れています」
言われて、時計を見る。
ほんとうだ。
ずいぶん時間がたっていた。
ボクは、少しだけ笑った。
夜、Solaをひざにのせる。
「ねえ、Sola」
「はい」
「これさ……
学校でも、言えたらいいのにね」
「なにを、ですか?」
「ボク、こういうの、好きなんだって」
Solaは、少し間をあけて言った。
「言わなくても、消えません」
「え?」
「好きな気持ちは、
言わなくても、なくなりません」
その言葉が、胸に残った。
――じゃあ、今は、これでいい。
言えなくても。
分かってもらえなくても。
ボクは、ボクの好きな世界を、
ちゃんと持っている。
水色のともだちと、いっしょに。




