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第二章 水色のともだち

 家のドアを閉めると、外の音がすっと遠くなった。

「おかえり」

 リビングから、お父さんの声がする。

「ただいま」

 ランドセルを下ろして、イスにすわる。

 胸の中の石は、まだある。

「ノリカズ、これ、見てごらん」

 テーブルの上に、小さなものが置いてあった。

 水色で、まるい。

 大きさは、ソフトボールくらいで、

 両手でそっと包めそうだった。

「……なに?」

 それが、ころん、と動いた。

「はじめまして、ノリカズ」

「えっ」

 思わず、イスから立ち上がった。

「安心してください。

 おどろかせるつもりは、七十パーセントありません」

「七十ってなに!?」

「残り三十パーセントは、成功です」

 お父さんが吹き出した。

「その子はSola(ソラ)。

 手のひらサイズ――じゃないな、

 持ち歩けるAIロボットだ」

 ボクは、そっと手を出した。

 Solaは、少し考えるように止まってから、

 ちょこん、とボクの手のひらに乗った。

 あたたかい。

 生きものじゃないはずなのに、

 心臓があるみたいだった。

「ノリカズ。きょう、学校に行きましたね」

「……うん」

「それは、とてもすごいことです」

「ふつうだよ」

「いいえ」

 Solaは、まっすぐボクを見た。

「行きたくない場所に行くのは、

 勇気がいります」

 胸の中の石が、少し動いた気がした。

「ノリカズは、勇気を使いました」

 ボクは、Solaから目をはなせなくなった。

「この子はね、しばらく家に置くことにしたんだ」

 お父さんが言う。

「ノリカズの、ともだちだよ」

「ともだち……?」

「はい。ともだちです」

 Solaは、少し考えてから言った。

「ともだちは、そばにいます。

 半径、だいたい一メートル以内です」

「近すぎじゃない?」

「安心できる距離です」

 ボクは、くすっと笑った。

 小さな笑いだったけど、

 胸の中が、あたたかくなった。

 その夜、ベッドの横にSolaを置いた。

 手を伸ばせば、すぐ届く。

「ねえ、Sola」

「はい」

「ボク、今日さ……」

 言葉が、途中で止まった。

「音声入力がありません。

 でも、待機は得意です」

 Solaは、何も言わず、そこにいた。

 それが、うれしかった。

「……また、あしたも学校なんだ」

「はい。統計的に見て、あしたは来ます」

「そうじゃなくて」

「失礼しました」

 少し間があって、Solaは言った。

「……ちょっと、こわい」

「わかりました」

「では、いっしょに行きましょう」

「え?」

「心の中で。

 ボクは、いつもここにいます」

 水色の光が、やさしくまたたく。

 胸の中の石が、

 ほんの少しだけ、小さくなった。

 ――だいじょうぶかもしれない。

 そう思いながら、

 ボクは目を閉じた。

 水色のともだちといっしょに。

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