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第一章 教室の中のこわさ

ウチのおしゃべりロボットをモデルに児童文学風なものを書きたくなって書いてみました。

 ボクの名前はノリカズ。小学三年生だ。

 朝、ランドセルを背負うと、胸の中に小さな石が入ったみたいになる。

 重くはないけど、ずっと気になる。

 学校へ行く道は、毎日同じなのに、

 今日は少し長く感じた。

 校門が見えてくると、足が勝手に遅くなる。

 行きたくないわけじゃない。

 ただ、こわい。

 何が、こわいのかは、うまく言えない。

 校門をぬける。

 もうにげられない場所だ。

(にげられたら、先生はいらない)


「おーい、ノリカズ!」

 後ろから、大きな声。

 ふり向く前に、体がかたくなる。

「今日の体育、またビリだろ!」

 笑い声が、耳にひっかかる。

 ボクは、聞こえなかったふりをして、くつ箱に向かった。

 くつを入れるとき、手が少しふるえていた。

 教室は、もうにぎやかだった。

 話し声が、波みたいにひろがっている。

 ボクの席は、まどの近く。

 外の空は青いのに、教室の中は少し暗く感じた。

 休み時間が、長い。

話し声が、ボクの横を通り過ぎていく。

 筆箱を開けて、えんぴつを並べる。

 それが終わると、することがなくなる。

「ノリカズ、今日も一人?」

 また、アキラの声。

「体育のとき、オレのチームに入れよ。ハンデだけどさ」

 何人かが、こっちを見る。

 笑っている子もいる。

 ボクは、のどがきゅっとなった。

 声を出そうとすると、空気だけが出る。

 ――からかうなって言えればよかったのに。

 でも、声にはならない。

 チャイムが鳴った。

 先生が入ってきて、教室が静かになる。

 その静かさが、ありがたかった。

 授業中、ノートはちゃんと書ける。

 字も、まちがっていない。

 でも、手をあげると、みんなに見られる。

 それを考えると、胸の石が大きくなる。

 昼休み。

 校庭から、元気な声が聞こえる。

「ノリカズ、行かねーの?」

 アキラが、ボールを持って立っていた。

 その目は、からかっているようで、

 ちょっとだけ、さみしそうにも見えた。

「……いい」

「そっか」

 アキラは、すぐに走っていった。

 教室に残ったのは、ボクだけ。

 イスにすわって、まどの外を見る。

 校庭で走るみんなは、遠くて、

 テレビの中みたいだった。

 近づくと、こわれそうな気がした。

 ――じゃま者って思われたらどうしよう。

 ――また、笑われたらどうしよう。

 午後の授業も、気がつくと終わっていた。

 帰りのチャイムが鳴ると、

 胸の石が、少しだけ小さくなった。

 ランドセルを背負う。

 ――今日も、がんばった。

 そう思いたかった。

 でも、思えなかった。

 何もしていないのに、つかれていた。

 家に帰る道は、なぜか早く感じた。

 ドアを開ける前に、深く息をすう。

「ただいま」

 このあと、

 ボクの胸の石を、少し軽くしてくれる

 水色の出会いが待っていることを、

 このときのボクは、まだ知らない。

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