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変態おじさんと不良銃騎士と白い少年  作者: 鈴田在可
第四章 不良銃騎士と白い少年

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51 いつか

R15注意

 フランツと結ばれた後、ハロルドは三つ目の願いを叶えるために、アーク二番隊長に連絡を取り付けた。


 最後の願いは、エリックのストーカー行為を止めさせることだ。


 ハロルドはエリックと会うつもりはなかったので、問題の解決に魔法使いの力を借りようと思った。


 色恋の、しかも男同士のことでアークが動いてくれるだろうかという心配はあったが、二番隊という諜報(スパイ)活動も行う部隊の長であるアークは、その願いを了承してくれた。


 ハロルドは願いのことを話した後に、エリックと最後に話した時に返し忘れた手枷も、ついでに返却してもらえないかと頼んだ。


「それは四つ目の願いということか?」


「うっ……」


 まさかそれも願いの一つとして数えられるとは思わなくて、またこの鬼畜隊長アークに何か見返りを言われるのだろうかと思い、ハロルドは呻いて返答に窮した。


「まあいいだろう。そのくらいはサービスしてやる」


 直後にそう言われて手枷を受け取ってくれたので、ハロルドはかなりホッとした。


 それからしばらくして、エリックが母島から出たという話をアークから聞いた。アークはエリックと直接話をして、手枷を返却し、ハロルドへのストーカー行為を金輪際止めることと、ハロルドには二度と接近しないことを約束させたそうだ。


「ありがとうございます……」


 感謝を口にしながらも、これでエリックとは本当に終わってしまったのだと思えば、一抹の寂しさはあった。


 エリックをどのように説得したのかを聞いた所、アーク曰く、ストーカー行為を止めなければエリックの別れた妻子に危害が及ぶだろう、と脅したそうだ。


 平和的解決手法が取られなかったことを聞いたハロルドは唖然としてしまった。


 ただ、エリックもすぐには了承しなかったので、アークは仕方なく、二度目の訪問の前に魔法で元奥さんの所へ行って、髪を一房()()()()()()そうだが、エリックは髪質からそれが本物だとわかったらしく、顔を真っ青にしていたそうだ。


(エグいよこの人……)


 ハロルドはアークの思考回路が、極めた道の人のようだとも思った。


 やっぱり鬼畜だ怖いと思いつつも、出会いから約七年間も、ハロルドのことが頭にあったのだろうエリックを諦めさせてくれたアークには、感謝しなければと思った。


 一時は死亡説もあったエリックが、生きていたと知ることができただけで安心したし、彼には自分に(こだわ)らずに幸せになってほしいと思った。
















 ハロルドの意向で明かりを落とした部屋の中では、少年と、男の影が揺らめいていた。


 今夜も今夜とて、ハロルドは寮のフランツの部屋で彼に抱かれた。











 程良い疲れと共に浴槽に浸かり、ハロルドはフランツに抱きしめられながら幸せを感じていた。


 フランツの裸身は国宝級に美しく、ずーっと眼福状態で見ていて飽きない。「大好き!」と言いながらフランツの胸板に頬を寄せてスリスリしていると、「支隊長! 支隊長!」と、乱雑に扉を叩く音と共に、浴室の先の私室の出入口の向こうからフランツを呼ぶ隊員の声が聞こえた。


「何だ?」


 こんな夜中に何事だと訝しみつつ、フランツは風呂から上がると、腰にタオルを巻いただけというセクシー状態で部屋の入口へ向かってしまった。


 ハロルドも浴室から出て身体を拭いた。濡れないようにお団子にしていた長い髪も解いて、少し付いていた水分も拭き取っていく。


「何ィ! 襲撃だと?」


 部屋の向こうからフランツの驚いた声が聞こえてくる。ハロルドは身体にバスタオルを巻いた。


 すぐにバタバタと足音がして、フランツが脱衣室に戻って来る。


「ハル!」


 フランツが扉を開けると、お守りの組紐で髪を一つに結っていつもの戦闘態勢(スタイル)を整えようとするハロルドの姿があった。


「獣人が襲撃してきたそうだが、お前は身体が辛かったら休んでいてもいいんだぞ」


 事後ではハロルドの身体に負担があると考えたのか、優しいフランツはそんな事を言ってくる。


「大丈夫だよ。俺、出られるから」


「だが――」


「稀人だから、身体は本当に大丈夫だよ。俺、みんなを守りたいんだ。フランのことも必ず守る。ずっとそばにいるって言ったでしょ?」


 髪を結い終えたハロルドはフランツに向き直って笑いかけた。


 獣人との戦いはこれからも続く。


 いつか平和な世界になってほしいと願うけれど、現状はまだまだ理想には程遠い。


 本当は稀人の秘密を広く世界に打ち明けて、人間と獣人に垣根はなかったのだと証明したいが、そこら辺はアーク隊長たちもタイミングを図っているのだろうと思っている。


「鍵」はエリックの研究であるし、いずれまた彼と再会せざるを得ない日も来るかもしれない。


 ただ、ハロルドにはフランツだけだから、もう彼と会っても揺らぐことはないと思った。


 しばらくは獣人たちの脅威を退けて、手の届く範囲だけになってしまうが、できる限りの人々を守る日々が続く。


 少しずつ少しずつ、以前よりも精神的に強くなっていくハロルドを眺めて、フランツはハロルドへの愛情の込もる眼差しに、眩しいものを見るような色を乗せた。


「わかった。俺のそばにいろ。俺はハルを、ずっと、絶対に離さない」


「うん、俺もフランを離さない。愛してる」


 自然と近づいた唇同士を合わせた二人は、チュッと軽くキスをした。


 しかし、イチャイチャしている場合ではない。続きは獣人たちを退けてからである。


 まずは隊服を着て身支度を整えようと、二人は同時に行動を開始した。






【終】












完結です。途中かなりの中断を挟んでしまいましたが、完結まで辿り着けて良かったです。活動報告にあとがきと補足を載せています。

お読みいただきありがとうございました。


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《転章直前と転章以降の時間軸の、本作品以外のシリーズ別作品に書いたハロルド周辺の話のまとめ》
※【 】の中はその時のフランツの状態やフランツとの関係性など

・シリーズにハロルド初登場とハロルド家族(父、四姉、五姉、六姉)が出てくる話【フランツと出会う前】
「その結婚…」の恋の危機編の「遠距離 2」から「同期と上官 3」あたりまでの約6話

・ハロルドたちが南西列島へ出立する直前の話【フランツと出会う前】
「その結婚…」の恋の危機編の「ハロルドの秘密」と次話「「彼女」との別れ」の2話

・南西列島に着いて以降、ハロルドが戦闘能力高めと仲間にバレていた話【フランツとは単に上司と部下】
「その結婚…」の恋の危機編の「友の実力」と次話「届かない便り」の2話

・南西列島が獣人に襲われたらしいと首都に伝わってる話【フランツにとってこの時にハロルドが特別な存在になる】
「その結婚…」の首都からの撤退前編の「アンバー兄妹 2」の後半部と、次話「銃騎士隊の魔王」の後半部の2話

・ハロルドとフランツの微ラブラブ話【フランツのハロルドへの思いは友情以上恋愛未満】
「その結婚…」の悲恋編の「慣れない距離感」

「その結婚…」の悲恋編の「告白」と、
次々話「ヒーロー(仮)は遅れてやって来る」にもハロルド視点の話あり

・【フランツ、ハロルドの服を乱す→胸を見る→殴られて恋と気付く】
「その結婚…」の悲恋編の「三角関係?」
と、
「その結婚…」の悲恋編の「疑問解消せず」の中頃 に脱がされシュチエーションになるまでの経緯等の説明あり

・フランツ、夜な夜なハロルドの寝袋に侵入する(セクハラ止まり)【フランツ、アタック中】
「その結婚…」の悲恋編の「疑問解消せず」の前半部

・ハロルドがゼウスを守ろうとして危機が去った後に、(以降は本編持ち越し)フランツたぶん襲いながら告白する予定【フランツぶち切れ】
「その結婚…」の悲恋編の「襲来」 と、次話「命を張らせないでよ」の2話


※※※


今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです


ハロルドの思い人であるゼウスの恋模様がわかる別作品

完結済「その結婚お断り ~モテなかったはずなのにイケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~」(注:異性恋愛もの)

こちらもよろしくお願いします
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