46 パワセクハラ、からの失敗
R15注意
パワハラ、セクハラ注意、強要注意、ヒーロー暴走注意
支隊本部の鍛錬場で魔法使いブラッドレイ一家の次男シリウスにゼウスが襲われたその日――――
シリウスの父アーク・ブラッドレイ二番隊長から、再びゼウスの命が狙われる可能性があるという忠告を受けて、夜、何人かでゼウスの警護を固めながら寝ることになった。
しかし昼間はハロルドも巻き込まれて殺されそうになったので、ゼウスの警護は他の者でやるから休めと言われて、ハロルドは入浴した後に自室の寝台で横になっていたが、なかなか眠れなかった。
ハロルドが考えるのはゼウスのことや、その婚約者メリッサのことだった。
それから、あのことも――――
眠れずにいると、そのうちに隣の支隊長の部屋から、ガタゴトと頻繁に物音が聞こえてきた。
何だろうと思いつつも、本日鍛錬場で起こった騒動のことなどを考えていたハロルドは、ほとんど気に止めていなかった。
するといきなり、バタン! と、廊下側ではなくて支隊長の部屋と続きになっている扉が、音を立てて勢い良く開かれた。
そこから、入浴後らしく寝衣姿の美貌の支隊長フランツが、無許可でハロルドの部屋に入って来た。
「やっとこの扉が開いた! これで夜這い仕放題だな!」
「よ、よば……」
ハロルドは「夜這い」という言葉に面食らったが、ガタガタやっていた音は、扉の前に積まれていた荷物をフランツがどかしていた音のようだと気付いた。
ハロルドも手伝っているジェフリーの遺品の整理は、まだ完了していない。
(支隊長…… もしかして殴ったから怒っているのかな……)
目に爛々と力を込めながらこちらを睨んでいるように見えるフランツを見て、ハロルドはそう思った。
「支隊長、昼間は殴ってすみませんでした」
「あの程度どうってことな…… いや……」
寝台から身を起こしたハロルドが謝ると、フランツは言葉の途中でなぜか言い淀んだ。
「そうだな、上官を殴るなんて懲罰ものだな」
「本当にすみません……」
「以前も俺とシャワーを浴びるのを拒んで嫌がっていたな」
「そ、それは…… 恥ずかしかったから」
「お前の✕✕は俺のものなんだから見せるのを嫌がるとは言語道断だ。拒まれて傷付いた俺への詫びとして、もっと恥ずかしいことをしてもらおうか。
俺の目の前で✕✕をしろ」
「ああ、でも俺はジェフと二人きりの時は良くしてたな。ジェフは訓練生の時に結構やらされてたらしくて、誘われて――――――」
ははは、と、どうってことないように笑って話すフランツを見ていたら、ハロルドはムカムカしてしまった。
「…………わかりました。やります」
ハロルドが✕✕に必死だった間、フランツは――――
ハロルドは抵抗しなかった。
頭の中には他の誰でもない、フランツの存在しかなかった。ハロルドは『初めてをこの人に捧げても良い』と思った。
そして――――
「いだだだだだだだだだっ!」
彼らは失敗した。
フランツは、「その道のプロ」とフランツが呼称する、頼れるオネエことショーンに助けを求めた。
支隊の集会室にてゼウスの警護要員をしていたショーンは、何も説明されずに連れて来られたので、「何事ですか?」と訝しんでいたが、「✕✕が痛い」と寝台の上で泣いているハロルドと、「正しいやり方を教えてくれ」と恥ずかしげもなく宣ったフランツを前に、血相を変えた。
ショーンがハロルドの✕✕の状態を確認しようとすると、フランツが「駄目だ!」と叫んで断固阻止した。
ため息を吐いたショーンは、ひとまず、どんな状態で行為に及ぼうとしたのか聞き取りをして、再びため息を吐いた。
「いきなり✕✕✕✕✕じゃなくて、✕✕✕なりをちゃんと事前に準備しないと、事故の元ですよ。
愛情を持って、充分すぎるくらいに――――――――……………………」
「肝に銘じよう」
「とりあえず清潔にしてください。今何か薬を持ってきますから」
と言って、一旦離れたショーンが自室から塗り薬を持ってくると、部屋の中ではハロルドがフランツに舐められていた。
「風呂場で洗っておけって意味で言ったんだよ! 誰が舐めろって言った!? ああ゙?」
ショーンは元々野太い声だが、男に戻ったような半ギレの口調で圧を増し、尊敬語も取り去った状態で叫んでいた。
ショーンは、フランツを鍛え抜かれた筋肉の力でもって強制的に部屋から追い出すと、鍵を掛けた。
「ハロルドぉぉぉ! ショーン! 俺のハロルドに手を出したら許さないぞ!」
ダンダンダン! とフランツが隣の部屋と繋がる扉を叩いて、中からわめいている。
「あーもう煩い。お話するので少し待っててください」
就寝前のためか結んでいなかった栗色の髪を掻き上げながら、投げやりにそう言い放ったショーンの様子からは、彼のフランツへの敬愛度は、ゼロになったらしいことが感じられた。




