45 恋の自覚は拳と共に
後半R15注意
ハロルドからお守りを分けてもらって獣人を退けた後、明け方に再会した時、ハロルドは獣人を一匹狩ったにも関わらず、今にも死にそうな顔をしていて全身血まみれだった。
驚いたフランツは仕事を放り投げ、騒ぎながらハロルドを抱えてすぐさま寮の自室へ急いだ。
浴室で血を流そうとハロルドの服を脱がしかけた時に、ふと、フランツの頭の中を妙な考えがよぎった。
銃騎士は男しかなれないが、女でも銃騎士になりたがる奴は結構いる。
なので、なぜ女性は銃騎士になれないのかと抗議の意味で養成学校の願書を出してきたり、男装して入校試験を受験しようとする奴もいる。
そういう者たちは、書類の段階だとか、入校試験に来た段階で見破られて落とされるのが常だが、「女とバレずに養成学校を卒業して正規の隊員になった奴もいる」などという都市伝説もある。
しかし、入校試験は上半身裸で受ける項目もあるから、よほどの絶壁具合でなければ見ればわかるし、養成学校在学中だって、集団で男風呂に入る機会も多々あって、性別を偽り続けて銃騎士になるなんてほぼ不可能だ。
だが、本当にそうだろうか? とフランツは思ってしまった。
(こいつ、男にしては可愛いすぎないか? 女だと言われても違和感ないぞ? 本当は女なんじゃないか?)
そんな疑問に頭の中を支配されてしまったフランツは、思わず確かめずにはいられなくなってしまった。
(もしも女だったら、俺はこいつを嫁にする!)
フランツは期待を胸に、性急な動きでハロルドの隊服のベルトを緩め、ズボンを下着ごと一気に下ろした。
パオンがいた。
年齢相応のソレを発見してしまい、予想が外れて軽くショックを受けていると、女みたいな悲鳴を上げたハロルドに浴室から追い出された。
(まあ、そりゃそうか……………… ✕が生えてなかったな……)
そんなことを思いつつ、裸の付き合いだとばかりにハロルドの背中を流したかったフランツは、鍵が掛かった浴室の扉を叩いて、一緒にシャワーを浴びたいと言ったが、断られた。
お互いのシャワーの後、なんとか寝台での添い寝まで持ち込めたフランツは、心身共に疲れ果てていたらしく早々に眠ってしまったハロルドの寝顔を見つめながら、ハロルドがそこにいることにどこか満ち足りた思いを抱きつつ――でもそれが恋とはわからずに――自身も眠りに就いた。
支隊本部の鍛錬場に魔法使いシリウスが現れて襲撃を受けた後、同じ銃騎士隊員ゼウス・エヴァンズを守ってあわや死ぬ寸前だったハロルドを見て、フランツの心は一時、限界突破崩壊スレスレになった。
「ハロルドが死んだら俺も死ぬ」と本気で思っているフランツは、軽く混乱しつつ、鍛錬場からハロルドを拐かし、誰もいない支隊本部の空き部屋へと連れ込んだ。
「確認! 怪我がないか全身の状態を確認する!」
「えっ? い、いや大丈夫……」
「大丈夫じゃないっ!」
(俺がっ!)
鬼気迫る勢いのフランツに気圧されたハロルドは、フランツに成されるがままだった。
今度のフランツはハロルドの下半身ではなくて上半身に手を伸ばした。ハロルドの隊服の上着を脱がせ、その下の水色シャツのボタンに手をかけて――――
そして、フランツの時が止まった。
そこには、男らしい胸筋の盛り上がりを僅かに認めつつも、「絶壁」としか言い様のない胸があった。
フランツはそこから目が離せなくなった。
フランツ自身も気付いていなかったが、オゼットのことがあってから、彼の胸の好みは貧乳・微乳派から絶壁派へと変化していた。
だが、ただペッタンコであれば良いわけではなかった。
ハロルドの白い肌に、控えめで清純な薄桃色の花が咲いているように見えた。ハロルドの✕✕は、これまで目撃したどの娼婦や男共やオゼットの✕✕よりも、はっきり言って綺麗だった。まるで宝石のようだった。
「あ、の…… 支隊長……?」
戸惑うハロルドの声は聞こえていたが、フランツは自分の理想を具現化したような胸との遭遇に、頭の中の処理が追いつかずに返事もできず、ただただ✕✕を凝視するのみだった。
相手が男なのは理解しているが、フランツは✕✕が✕いてしまったのを感じて当惑し、混乱がさらに加速した。
フランツはただ思った。『この✕✕は俺のものだ』と。
フランツは感情の赴くまま、✕✕に顔を寄せたが、寸前でハロルドにガシリと押さえられて阻まれる。その力は存外強くて手を外せなかった。
「な、何してるんですか?」
「✕✕を✕わせろ」
「えっ?! む、無理ですって!」
「脱げ」
「ちょ、ちょっと! 支隊長!」
フランツは目を血走らせながら、乱れたハロルドの隊服をさらに剥いて裸にしようとした。
「支隊長! すみませんっ!」
言葉と共に顎に衝撃が走って、フランツの脳が揺れた。
殴られたせいで床に倒れかかるが、ハロルドが抱き留めてくれた。
(ああ、これが……)
白目を剥きかけ意識を飛ばす寸前、フランツは気付いた。
フランツ・クラッセン二十八歳。これまで自他共に恋愛感情には鈍感すぎて、いくつかのフラグを折り続けてきた男は、混乱の極みにいた状態でぶっ飛ばされた衝撃により、心の中にあったハロルドへの恋心に初めて気付いた。
【間章 終】
ハロルドとゼウスが死にかけた鍛錬場での魔法使いシリウスによる襲撃事件は、シリーズ別作品「その結婚…」の悲恋編の、
「113 慣れない距離感」(ハロルド視点)
https://ncode.syosetu.com/n5840ho/116
「114 告白」(ハロルド視点)
「116 ヒーロー(仮)は遅れてやって来る」(ハロルド視点以外あり)
「117 三角関係?」(ハロルド視点)
「118 許さん」(他キャラ視点)
「125 検証」(他キャラ視点)
「127 疑問解消せず」(ハロルド視点)
あたりに詳細書いてあります。まとまってなくてすみませんm(_ _)m




