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変態おじさんと不良銃騎士と白い少年  作者: 鈴田在可
第二章 赤い鬼神と白い少年

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18 彼女の選択

ノエル(アテナのハンター仲間)視点→ハロルド視点

「――――あの子は、だってあの子は、何も悪くないんだ」


 赤髪の青年が泣きそうな顔で絞り出すようにそう言った。


 アスターが愛情の板挟みになって苦しんでいるのはわかっていた。けれどノエルは、()()()を優先しているように聞こえるアスターの言い分には違和感しかないし、納得もしないし同情もしない。


 ノエルは険しい顔でアスターを見ていた。


 アスターだって被害者だ。


 けれど事実がわかって以降、アスターの気持ちがあの子へ傾いているのは、アテナも肌で感じていたようだった。


 アテナは話し合いの席で、もういい、と言った。


 別れようと言ったアテナに、アスターはだだ頭を下げて、すまないと言った。


 アスターは別れの撤回を求めることはせず、それを受け入れた。


 アスター自身が、アテナと共に歩む未来を選ばなかった。アスターは、アテナかあの子のどちらを選ぶか選択を突き付けられて、結果、あの子を選んだ。つまりはそういうことだ。


 けれどアスターが言わないから、アテナが言うしかなかった。


 たぶんアテナは激高してアスターを激しくなじっても良かったと思うのに、アテナはそうしなかった。それまでの話し合いでは何度か泣いたり感情が高ぶったりもしていたが、最後の席だけは泣かなかった。


 きっと、アテナは最後となった話し合いの前にはもう別れを決めていて、最後にみっともない姿を見せたくなかったのだろう。


『もう会いたくないし話もしたくない。これで終わりにしましょう』


 瞳に隠しようのない悲しみの色を浮かべながらも、感情を欠落させたような淡々とした絶縁宣言と共に席を立ったアテナは、最後まで気丈だったと思う。


 だけどノエルは、話し合いが終わって家に帰って一人になったアテナが、アスターを思って慟哭していたのを知っている。


 ノエルは問題が明るみに出るまでは完全に二人の恋の部外者だった。ノエルがアテナと出会った時には既に二人は恋人同士だったし、アスターと懇ろにしているのを知ればアテナをそんな対象としては見られなかった。


 むしろ最初アテナと出会った時、ノエルはアテナではなくアテナの相棒だったマグノリアに惹かれていた。


 だからアテナに対して邪な思いなどないし、今もそんなつもりはない。


 だけど、アテナは大切な仲間だ。


 だから、これだけはどうしても言いたかった。


「アテナだって、何も悪くありませんよ」






******






「アスターが銃騎士隊を辞めるって、お前何か事情を知ってるか? ゼウスから何か詳しいこととか聞いてないか?」


 銃騎士隊本部で、ハロルドは一期先輩である同じ隊のアランに声をかけられた。


 アランはゼウスと同じ年だが、アスターや彼の親友のレインとは同期だ。八方美人なアランは誰とでも仲良くできるため、年上である二人のことも呼び捨てで呼んでいた。


 ハロルドは、人付き合いが苦手な自分とは真逆の性質を持つこの男とは当初距離を置いていた。入校前の出会いの件も手伝ってあまり良い印象もなかった。けれど、アランがハロルドの醸し出す余所余所しさなど全く気にせず話かけてくるので、次第にアランとは構えずに接することができるようになっていた。


 そういえば養成学校時代にハロルドが班からハブられていた時に、養成学校の二年生だったアランも、ゼウスと同様にハロルドに声をかけてくれていたうちの一人だった。


 その時は苦手な人認定していたのでうっとおしいとしか感じなかったが、今では気安い先輩の一人である。


 ハロルドは首を振った。ハロルドもゼウス以外の人間からアスターが辞めるらしいと聞いただけで、詳しいことは何も知らない。


「俺も全然…… ゼウスは何も話してくれなくて……」


 ゼウスに本当なのか聞いてみようとしたこともあったが、アスターの名前を出した途端、ゼウスの顔に怒りの表情が浮かんだ。ゼウスはすごく怒っているようだった。


『あの人の名前を俺の前ではもう二度と口にしないでくれ』


 ゼウスの表情は憎しみに満ちていて、そんなゼウスはあまり見たくなかった。


「ハルでも駄目なのか? 俺なんかゼウスに話しかけようとしただけですっごい睨まれてさ。アスターの話題は一切出すなみたいに威嚇してくる感じで、ピリピリしてるから全然近付けなくて。


 そっち方面の業界の人から聞いたんだけど、アスターの恋人のゼウスの姉ちゃんが、ここのところずっと体調不良で、仕事を休んでばっかりなんだって。


 噂だと、アスターが浮気して他の女との間に子供を作って、それが原因で二人は別れたらしい」


「まさか! アスター先輩に限ってそんなことはないですよ! だって、結婚したいくらい大好きだって……」


 アスターは、俺の方がアテナよりも彼女に惚れているんだと言って、困ったように笑いながらも、幸せそうにしていた……


「だけど、いつまでたっても結婚しなかったじゃないか、あの二人。


 アスターは、婚約すらしてくれないって、酒飲んだ時にたまにぼやいてたぞ。


 男女のことだし、まあ何か外野にはわからない色々なことがあったのかもしれないけど、でもだからって、それが原因で銃騎士隊まで辞めることないだろ。


 あいつが銃騎士隊を辞めるなんて、人類の大損失だ」


「アテナさんと別れたことが直接の原因だって決まったわけじゃないですよ」


「そうだけど、でもそれ以外考えられないじゃないか」


 アランはため息を吐いた。


「アスターの奴、辞表をマック隊長じゃなくて総隊長に出していったらしい。マック隊長が渋ってるらしくて受理はされてないみたいだから、今ならまだ間に合う。総隊長に土下座でもして撤回すればまだなんとかなる。


 でも寮のアスターの部屋は既にもぬけの殻だし、叔父さんの家にもいない。あいつは本当にこのまま辞めてしまうつもりだ。


 こんな時に止めなきゃいけないはずのレインもどこにもいないし、たぶん任務だとは思うけど、行き先は不明で、二番隊は秘密主義みたいなとこがあるから、よくわからん」


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《転章直前と転章以降の時間軸の、本作品以外のシリーズ別作品に書いたハロルド周辺の話のまとめ》
※【 】の中はその時のフランツの状態やフランツとの関係性など

・シリーズにハロルド初登場とハロルド家族(父、四姉、五姉、六姉)が出てくる話【フランツと出会う前】
「その結婚…」の恋の危機編の「遠距離 2」から「同期と上官 3」あたりまでの約6話

・ハロルドたちが南西列島へ出立する直前の話【フランツと出会う前】
「その結婚…」の恋の危機編の「ハロルドの秘密」と次話「「彼女」との別れ」の2話

・南西列島に着いて以降、ハロルドが戦闘能力高めと仲間にバレていた話【フランツとは単に上司と部下】
「その結婚…」の恋の危機編の「友の実力」と次話「届かない便り」の2話

・南西列島が獣人に襲われたらしいと首都に伝わってる話【フランツにとってこの時にハロルドが特別な存在になる】
「その結婚…」の首都からの撤退前編の「アンバー兄妹 2」の後半部と、次話「銃騎士隊の魔王」の後半部の2話

・ハロルドとフランツの微ラブラブ話【フランツのハロルドへの思いは友情以上恋愛未満】
「その結婚…」の悲恋編の「慣れない距離感」

「その結婚…」の悲恋編の「告白」と、
次々話「ヒーロー(仮)は遅れてやって来る」にもハロルド視点の話あり

・【フランツ、ハロルドの服を乱す→胸を見る→殴られて恋と気付く】
「その結婚…」の悲恋編の「三角関係?」
と、
「その結婚…」の悲恋編の「疑問解消せず」の中頃 に脱がされシュチエーションになるまでの経緯等の説明あり

・フランツ、夜な夜なハロルドの寝袋に侵入する(セクハラ止まり)【フランツ、アタック中】
「その結婚…」の悲恋編の「疑問解消せず」の前半部

・ハロルドがゼウスを守ろうとして危機が去った後に、(以降は本編持ち越し)フランツたぶん襲いながら告白する予定【フランツぶち切れ】
「その結婚…」の悲恋編の「襲来」 と、次話「命を張らせないでよ」の2話


※※※


今作品はシリーズ別作品

完結済「獣人姫は逃げまくる ~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~」

の幕間として書いていた話を独立させたものです


ハロルドの思い人であるゼウスの恋模様がわかる別作品

完結済「その結婚お断り ~モテなかったはずなのにイケメンと三角関係になり結婚をお断りしたらやばいヤンデレ爆誕して死にかけた結果幸せになりました~」(注:異性恋愛もの)

こちらもよろしくお願いします
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