23 千鳥薫
ヤクザ関連のお話です。裏話につき、結構きつい内容になってます。ご注意を。
僕、千鳥薫。今ねぇ、ちょっと厄介なことになってるの。うーん、簡単に言えばお掃除? ほら、イラないゴミは捨てちゃうでしょ? それと同じだよ。いらない奴は追い出さなくちゃ。
だってね、コイツニート以上に酷いことするんだもん。ニートはほら、働かないでだらだらしてるけど、虐めたりしないでしょ? せいぜい、匿名希望掲示板でぎゃーぎゃー騒ぐだけ。
でも、コイツは違うんだよー。
飛鳥井幻馬。父親でありながら、子供を不平等に扱ってた。自分によく似て、ずる賢い次男の凛だけを可愛がり、無口な蓮は毎年誕生日もお祝いしてもらえないし、一人でカップ麺食べるような生活もしてたしね。
しかも、奥さんの花音おばさんの肩にある火傷の痕。これは、「蓮が可哀想」って訴えたから、飛鳥井おじさんにつけられた火傷の痕なんだってー。
そんなことになってるのにさぁー、僕のお爺ちゃんってば、「でもでも」「だって」ってずぅっと飛鳥井おじさんを泳がせてたんだよー?
そのせいで、次は白桜姫香っていう超有名なお嬢様を病院送りにしたの。
しかも、白桜家は蓮に同情して、蓮が馬鹿やっても目を瞑るだけじゃなく、誕生日まで祝ってくれた超善人な一般人。あまつさえ、金持ちで警察関連にも横の繋がりを持ってるっていう、ちょっとうちの組からしたら、ちょっと厄介な一家。
「おじいちゃーん、知ってるー? 飛鳥井おじさんねー、姫香ちゃんに親の七光りでーとか言ったんだよ? 自分だって、お爺ちゃんの七光で這い上がったのにねぇー」
「……」
そうそう。さっきから、お爺ちゃんに何言っても目をつぶってじっと耐えてるの。つまんなーい。だってさぁー、これも全部お爺ちゃんが「幻馬に手を出すな」って一喝したせいだよねー?
そもそも、僕が地元の幼稚園で虐められたのって、凛が余計なこと言うから。せっかく、そのことは目を瞑ったのにさー。
こんな状況だよって、ずっとお爺ちゃんに蓮のことSOSしてたのに。蓮が大人しくしてるからって、ねぇ?
ったくさー、うちの家で凛の誕生日祝いをするんなら蓮も呼べばっていうのに、お爺ちゃんまで「後から祝う」で蓮のことほっとくんだもん。
しかもさー、悠斗の両親が借金したのも、全部僕のお兄ちゃんがお金出して助けてあげたんだよ? その代わりに、蓮の友だちになって支えてあげてね。そう言ったのに、結局悠斗ってば凛ばっかりと遊んでさー。
ほんっと、どいつもこいつも使えないよねー。あーあ、もう嫌になるなぁー。
「っていうかさー、悠斗。何やってんの? 姫香ちゃんから聞いたけど、僕何て言った?」
「ご、ご、ごめんなさい……」
僕がそう言えば、悠斗は泣きそうな顔で謝るんだよ。ったく、もうそういうのいらないから。泣くくらいなら、最初から言うこと聞いて?
「誰が、凛の友達になれって言った? あの誕生日だって、僕が言ったから、仕方なく蓮のとこ行ったんじゃん。しかも、蓮のところに行っても、誕生日も何もしないでさー。忘れてるわけないよね? 凛への誕生日プレゼントなんだったっけー?」
烏ケ森夫婦がびくっと肩を揺らした。そんな反応するなら、お金返してくれるんだよねー? 約束破ったもんね?
「有名サッカー選手のサイン入りTシャツだったなぁ? よぉくやるぜ。蓮が好きなサッカー選手だったのに、蓮への当て付けか?」
「そうだよねー、おにいちゃーん」
「本当に、お前ら一家は何もできねぇんだからっ!!」
ベリッとお兄ちゃんが烏ケ森おじさんの爪を剥ぐ。情けない声出して泣いてるけど、自分が悪いんだもん。反省しようよ、ね?
だって、言うこと聞いてくれないんだもん。これくらい当然だよね?
あの誕生日の時だって、事前に用意するようにってお兄ちゃんがお金渡したの知ってるもーん。お金だけ受け取って、何やってんだか。
「ご、ご、ごめんなさい……!!」
グズグズと泣きながら、烏ケ森おばちゃんは謝った。横では、悠斗がお漏らししてる。あーあ、これ自分で掃除してね?
そうそう、烏ケ森おじさんは、あまりの痛さに悶え苦しんでるや。最初から、蓮のお誕生日パーティーを開いとけば、こんなことにはならなかったのにねー?
「もーいいや。僕、だいぶ体調がよくなってきたし。悠斗いらなーい。だからお金返してー?」
「そうだな、蓮の誕生日もしてないって聞いたぞ? プレゼント代返してもらおうか?」
「も、もう少し待ってください……!!」
烏ケ森おばさんは、泣きながら土下座するのー。お金、他のことに使ったんだ?
「――わしが、代わりに返す……」
今まで、ずっと黙ってたお爺ちゃんがようやく口を開いたんだ。ふーん、まぁお兄ちゃんのお金が返ってくるならいいや。
「全ては、わしの責任だ」
「そうだねー、お爺ちゃん。この責任どう取るの? お腹切っても、特にいいことないんだけどなぁー」
にこにこと笑いながら、僕はお爺ちゃんに近づいてく。僕ねー、お爺ちゃんのこと大嫌いなのっ。だって、蓮のことよろしくねって言ったのに凛ばっかり贔屓するじゃん? 可哀想だよね、蓮。
「……凛に使った金は、わしが責任持って回収する」
「それだけー?」
「幻馬は……、金が回収し終わったらわしが処分する……」
「ふーん、嘘だったら、どうしよっかなぁ?」
にこり、と僕が笑えば、お爺ちゃんは何も言わない。ふーん、そんなこと無いって言いたげだね。
でもさー、蓮のことで散々約束破られてるんだけど? 信用出来ないよ~。
「蓮のこともあるし、僕お爺ちゃんも信用してないよー。それに、僕のパパが一番お爺ちゃんを信用してないの。だから、飛鳥井おじさんつれて出て行っちゃったの。意味、わかる?」
「――すまない」
「なぁ、爺ちゃん。もう余計な情に流される人間なんざ、うちの組にはいらないんだ。さっさと、親父に席譲ってくれや」
もう、僕もお兄ちゃんもお爺ちゃんなんていらないもんね。だって、ゴミは捨てるでしょ? いらないものは捨てなくちゃー。
お爺ちゃんも、捨てるよー? だって、蓮のこと捨てたんだもんね。
僕、絶対忘れないもんね。
「――わしが気に入らぬか……」
「あぁ、もちろん。今までの我儘を聞いてただけ、有り難く思えば?」
「僕、お爺ちゃんきらーい」
「俺も嫌いだぞー?」
「そうだよねっ、凛ばっかり可愛がるんだもん。ねぇ、理由はなんでー?」
「そ、それは……、蓮はいずれ、大きな会社を継ぐから……」
ふーん、たったそれだけで、可愛がってもらえないの? やっぱ、お爺ちゃんいらなーい。僕、理不尽な人嫌いだもん。
「ねー、お爺ちゃん。いらない。さっさとパパに組あげて?」
「そうそう、老後は可愛い凛と暮らせ。俺らの目の前に、二度と現れないようにな」
「ゆ、許しては、くれんか……?」
僕、別にお爺ちゃんに会えなくてもいいよー? だって、お婆ちゃんのほうが好きだもん。
「どうする、薫?」
「僕ねー、凛大嫌いなの。だからどうしよう?」
「――そういやあ、非合法な未成年の売り専があったな」
「そこか。ふむ、わかった。お前らが今まで通り、わしの孫で居てくれるなら、凛をそこに引き渡そう」
悠斗の顔が、真っ青になってく。あーあ、友達だったのにね。でもさー、悠斗、お前が言うことを聞かないからこうなったのもあるんだよ?
だってさー、お兄ちゃんは、100万渡して蓮にプレゼント買ってあげて? ってお願いしたのにね。
「悠斗ー、自分が悪いって自覚してる?」
「じ、自覚してます……。ごめんなっさい……」
「じゃあ、なんで僕が悪いみたいな目で見てくるのー? 誰が悪いの?」
「ご、ごめんなざい、俺でずぅ……」
ぐずぐずと悠斗泣き出した。あーあ、こんなことになるなら、最初から言うこと聞けばいいのにねぇ?
でも、もういいや。お金はお爺ちゃんが返してくれるし、僕は元気になった。悠斗もいらなーい。だって、言うこと聞かないんだし。それに、僕も元気になるし、姫ちゃんも居る。無理して悠斗に頼む理由もなくなったんだよねー?
さ、悠斗。次何してくれるのかなぁ? そうしたら、すんなり悠斗を捨てられるのにぃー。
天然腹黒白兎。
でも、彼は自分のことじゃ怒らないっていうモットーがあります。
怖いけど、優しい子なんですよ。




