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敏腕秘書歴50年のおばあちゃん、弱小国の宰相に転生する 〜孫のような幼王様を泣かせる悪臣は、容赦なく書類の山に沈めます〜  作者: ペクチン21時


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第7話 おばあちゃん、新人に「ほうれんそう」を叩き込みます

「アルさん、少しおかけなさいな」

書類整理が一段落したところで、シルバはアルにソファーを勧めた。

アルは恐縮しながらも、疲れ果てた体を腰掛けさせる。そこへ、シルバが流れるような所作で、温かいカモミールティーと、小さな焼き菓子を差し出した。

「あ、ありがとうございます……シルバ様。あの、僕のような一介の秘書官に、ここまでしていただくなんて……」

「何を言っているのですか。あなたは私の唯一の『直属の部下』、企業で言えば秘書室のホープですよ。上司が部下の体調を気遣うのは当然の義務です」

シルバは、紅茶を一口すすると、真剣な眼差しをアルに向けた。

「さて、アルさん。あなたのこれまでの働きぶりですが……真面目で、忠誠心も高く、非常に好感が持てます。ですが、一つだけ致命的な欠点があります」

「ひっ……欠点、ですか!?」

アルの背筋がピシッと伸びる。元のシルバなら、ここで「無能め!」と怒号が飛んできたはずだ。しかし、今のシルバの声音は、冷徹な美貌とは裏腹に、どこまでも優しく、包み込むような響きを含んでいた。

「ええ。あなたは『抱え込みすぎる』のよ。ボルドー侯爵が怒鳴り込んできたときも、自分一人で止めようとして半泣きになっていたでしょう?」

「それは……シルバ様がお忙しそうでしたし、僕がなんとかしなければと……」

「その責任感は素晴らしいわ。でもね、ビジネス……いえ、宮廷の実務において、ほうれんそうを怠ることは、時に致命傷になるの。報告、連絡、相談。この三つよ」

シルバは、長い指を一本ずつ立てながら説明した。

「トラブルが起きたとき、あるいは起きそうなときは、どんなに小さなことでもすぐに私に『報告』しなさい。途中の経過も『連絡』すること。そして、自分だけで判断がつかない不穏な空気を感じたら、すぐに『相談』にきなさい。上司というものはね、部下の尻を拭うためにその椅子に座っているのですよ」

「上司は、部下の尻を拭うために……」

アルの目から、鱗がボロボロと落ちるような衝撃が走った。

これまでこの国の貴族たちは、部下に責任を押し付け、手柄だけを横取りする者ばかりだった。目の前の若き宰相は、その全責任を自分が背負うと言いきったのだ。

「分かりましたか? あなたが優秀な秘書官に育ってくれないと、私、定年退職……いえ、老後の隠居生活が楽しめなくなってしまいますからね」

「はいっ! シルバ様! 僕、一生ついていきます!」

アルの目が、感動でうるうると 潤む。

こうして、前世で何人ものヘタレ新入社員を一流のビジネスパーソンへと育て上げてきたチヨの「育成スキル」により、アルの中に眠っていた『超優秀な有能秘書官』の才能が、静かに目覚めようとしていた。

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