第64話 おばあちゃん、モンスターペアレンツの「不正(粉飾決算)」を暴きます
「ボルドー大公閣下。貴国は我が国に対して強気な姿勢を崩していませんが、貴国の主要産業である『ワインと農産物の流通ルート』、その大半の関税管理を握っているのは、我がリトアニアホールディングスであるという自覚はありますか?」
シルバの冷徹な指摘に、ボルドー大公の表情がピクリと強張った。
アルが素早く魔導投影機を起動し、壁一面に膨大な数の「裏帳簿のデータ」を映し出す。
「これは、貴国が過去五年間にわたり、大陸教会への上納金を誤魔化すために行っていた『売上高の過少申告』、すなわち明確な『脱税』の証拠です。先の教会総本部の逆買収の際、本部の地下金庫から押収したデータの中に、貴国の裏取引の記録もすべて混ざっていましたわ」
「な、ななな……何だと――っ!?」
大公の顔が、一瞬にして土気色へと変わった。
娘を王妃にねじ込んでリトアニアの温泉利権を奪い、自国の巨額の赤字を補填しようとした大公の「裏の経営戦略」が、完全に白日の下に晒されたのだ。
「ボルドー大公閣下。この脱税データが、現在の教会の最高株主である我が国から大陸全土に開示された場合、貴国は莫大な『違約金』によって、明日にも経営破綻することになりますが……監査対応の準備はよろしいですか?」
シルバの男らしくも理知的な、しかし容赦のない「チェックメイト」の宣告に、大公は言葉を失い、その場に崩れ落ちた。
「娘を愛する気持ちは結構ですが、公私混同をして我が孫の労働環境を脅かす者は、いかなる大国であろうと徹底的に排除いたします。……さあ、アルさん。ボルドー公国に対する『特別監査』の書類を作成しなさい。温泉の利用も、もちろん永久に禁止ですわ」




