第65話 ロイヤル・ウエディングと、おばあちゃんの「有給休暇」
モンスターペアレンツを書類一枚で完璧に粉砕・逆買収し、婚活市場の平和を取り戻したリトアニア王国。
数ヶ月後、王都の広大な大聖堂にて、大陸中の祝福を一身に浴びながら、レオン王とソフィーの「ロイヤル・ウエディング」が華やかに執り行われた。
白いタキシードに身を包んだ十二歳のレオンと、美しい薬草の刺繍が施されたドレスを着たソフィーが、大聖堂の祭壇で手を取り合う。その姿は、家柄や政治の汚れを一切排除した、世界で最も「ホワイトで健全な夫婦」の誕生であった。
「シルバ……ぼく、ソフィーと一緒に、この国を世界一みんなが幸せに帰れる国にするよ!」
「はい、レオン様。私も、王様の健康と国のコンプライアンスを、生涯かけてお守りします!」
並んで笑顔を見せる二人を、参列席の最前列で見つめるシルバ。その端正な青年の顔には、もはや宰相としての冷徹さはなく、完全に「孫の結婚式で涙ぐむおばあちゃん」の、深くて温かい慈愛の笑みが浮かんでいた。
「ふぅ……。これで本当に、私の『引き継ぎ(次世代育成)』はすべて完了しましたねぇ」
結婚式の翌日、最高顧問室。
シルバは官服を脱ぎ捨て、ゆったりとした私服に着替えると、机の上に大きな「有給休暇申請書」をドンと置いた。
「シルバ様、これは……?」
驚くアルに対し、シルバは最高に晴れやかな、美しい少年の笑顔を向けた。
「アルさん、本日をもって、私は数ヶ月間の『長期有給休暇(リフレッシュ休暇)』に入ります。国政のことは、立派に育ったレオン様と、優秀なソフィー王妃、そしてあなたたち現場のスタッフにすべて任せましたよ」
シルバは小さな旅行鞄を手に持つと、部屋の窓から広がる、白い湯煙が立ち上る美しいリトアニアの街並みを見つめた。
「前世ではね、死ぬまで働き詰めで、自分のための時間なんて一秒もありませんでした。でも、この世界では……最高の温泉に浸かって、美味しいプリンを食べて、のんびりと縁側でお茶をすする。そんな最高の『セカンドライフ』を、これから存分に楽しませてもらいますわ」
過労死した敏腕秘書が、異世界に「働き方改革」をもたらし、最愛の孫を幸せに導いた、無敵の実務戦記。
定時退勤の鐘が優雅に響き渡る中、おばあちゃんの本当の、そして最高にホワイトな隠居生活が、今ここに完全なる「オンスケジュール」で幕を閉じるのだった――。




