第63話 ブラックな外圧(親バカ貴族)の襲来
レオンとソフィーの仲が急速に縮まり、宮廷内が温かいお祝いムードに包まれる中、それを遮るように不穏な影が王都に現れた。
「リトアニアの最高顧問シルバ殿! 我が娘エリザベートを不合格にするとは、一体どういう不条理か――っ!?」
王宮の謁見室に怒号を響かせながら乗り込んできたのは、西の大国の有力貴族であり、先の面接で落とされたエリザベートの父親、ボルドー公国の大公であった。彼は数名の武装した護衛を従え、自国の権威を背景に強引な「クレーム」をねじ込んできたのだ。
「我がボルドー公国の財力と血統を蔑ろにするとは、我が国に対する宣戦布告と受け取っても良いのだぞ! 今すぐその辺境の貧乏男爵令嬢との内定を取り消し、我が娘を正妃に迎え入れろ!」
大公のあまりにもブラックな「親バカ圧(理不尽な営業)」に、アルは青い顔で後退さり、レオンも身を固くした。
しかし、謁見室の中央。
シルバはゆっくりとデスクから立ち上がると、カチリ、カチリと、完璧な手つきで官服の袖をまくり上げた。その氷の瞳は、これまでのどの戦いよりも冷酷に、そして美しく輝いていた。
「ボルドー大公閣下。ご自身の娘が書類選考と面接で落とされたからと、組織のトップを脅迫して無理やり契約を結ばせようなど……前世でもね、そういう『コンプライアンス意識の低いモンスターペアレンツ』は、即座に取引停止の対象ですよ」
「何だと……!? 弱小国の分際で、我が公国の経済力を敵に回す気か!」
「経済力、ですか。……ふふっ、本当に大企業(大国)の幹部というのは、自社の財務の『脆弱性』に無頓着ですね」
シルバは不敵な笑みを浮かべ、胸元から一枚の『極秘監査レポート』を取り出した。




