第62話 おばあちゃん、孫(王様)と内定者を「引き合わせ(マッチング)」します
ソフィーの現場研修は完璧だった。
厨房では無駄な高級食材のロスを省き、予算を二割削減しながらも、栄養価が従来の三倍という「パーフェクト健康給食」を考案。財務部では、役人たちの事務作業の無駄を見つけてさらに定時退勤を加速させた。
「シルバ様、ソフィー様の研修報告書ですが……すべての部署で『評価:S』を叩き出しています。現場の役人たちからも『次の王妃様は聖女だ』と大絶賛です」
「ふふふ、見事ですね。前世でもね、家柄にあぐらをかいた幹部より、現場叩き上げの叩き上げの方が、遥かに組織に利益をもたらすものですよ」
シルバは満足げに報告書にサインをすると、ロッキングチェアーから立ち上がった。
「さて、実務能力は完璧にクリアしました。次は最も重要なステップ、レオン様ご本人との『面談』の場をセッティングしましょう」
その日の夕方、定時退勤後の王宮の庭園。
シルバに呼ばれてやってきた十二歳のレオン王は、ベンチに座って書類を読んでいたソフィーと、運命的な出会いを果たす。
「あ……ごめんなさい、ぼく、お邪魔だったかな?」
レオンの声に、ソフィーは慌てて立ち上がり、ドレスの裾を引いて丁寧に一礼した。
「いいえ、レオン様! お邪魔などとんでもありません。……それより、レオン様。先ほどから少し、呼吸の浅さと首の傾きが気になります。きっと、長時間の読書による『首の凝り』の兆候ですわ!」
「ええっ!? く、くびのこり……?」
驚くレオンの前に、ソフィーは躊躇なく一歩踏み出すと、懐から自家製の「特製ハーブオイル」を取り出した。
「失礼します! 痛かったらおっしゃってくださいね」
ソフィーの温かく、的確な指先が、レオンの小さな肩と首のツボを優しく揉みほぐしていく。一瞬にして全身の緊張が解け、視界がクリアになったレオンは、ぽかんと口を開けてソフィーを見つめた。
「すごいや……! 体がすごく軽くなった……! 君が、シルバの言っていたソフィーさん?」
「はい、レオン様。これからあなた様の『健康』を全力で管理させていただく、ソフィーと申します!」
お互いに「肩書き」や「下心」ではなく、純粋な「ヘルスケア(思いやり)」で繋がった二人。遠くの陰からその様子を見守っていたシルバは、「よし、マッチング成功ですね」と、最高の笑顔でガッツポーズを決めていた。




