第60話 現れた「ダークホース(伏兵)」と、超ホワイトな令嬢
数日後。名門貴族や大国の王女たちがシルバの「圧迫面接」にことごとく撃沈し、全滅の危機に瀕していたリトアニア王宮に、一人の一風変わった令嬢がエントリーしてきた。
彼女の名は、ソフィー。
大陸の辺境にある、貧しいけれど独自の医療・薬学技術を持つ小さな男爵家の娘だった。ドレスは着古された地味なもので、家柄もこれまでの候補者に比べれば無に等しい。
「ソフィー様ですね。では、質問です。もし国王であるレオン様が、国政のストレスで寝不足になり、目の下にクマを作って執務室にこもっていたら、あなたはどうしますか?」
シルバがいつものように冷徹な視線で問いかける。アルは「また不合格者が出る……」と胃を押さえていた。
しかし、ソフィーは怯むどころか、その栗色の瞳をキリッと輝かせ、堂々と胸を張って答えた。
「はい。まずは執務室の鍵を外からロック(物理的強制終了)し、魔導書の電源を遮断します。その後、我が実家に伝わる『強制安眠効果のある特製ラベンダー香』を焚き、レオン様をベッドへ叩き込みます。抗議された場合は、王妃の権限として、最低でも八時間の睡眠を義務付けます!」
「……ほう?」
シルバの美貌に、初めてピクリと興味の笑みが浮かんだ。
「さらに」と、ソフィーはカチリと自分の袖をまくり上げた。その動作は、どこかシルバの「戦闘モード」に酷似していた。
「寝不足の脳で作られた政策など、バグだらけの不良品(悪政)です! 国王の生活の質を高めることこそ、内助の功における最大の『リスクマネジメント』だと考えます。家柄や持参金はありませんが、私はレオン様の『健康』を24時間体制で守る自信があります!」
面接室に、沈黙が流れる。
アルは「あちゃー、言い切っちゃったよ……」と目を覆った。
しかし――。
シルバはゆっくりと立ち上がると、これまでで一番、最高に満足げで不敵な笑みを浮かべた。
「……素晴らしい。完璧な『労務管理のプロ』ですね。合格です、ソフィー様。あなたこそ、我がリトアニア王国の次期王妃にふさわしい」
家柄や財産に頼らず、圧倒的な「ホワイト精神」と実務能力でシルバの心を掴んだ辺境の令嬢ソフィー。
ついに見つけた最高の孫嫁(候補)と共に、リトアニア宮廷の「ロイヤル・ウエディング・プロジェクト」が、今ここに幕を開ける!




