第59話 レオンの本音と、おばあちゃんの約束
連日のように行われる「王妃採用面接」に、王宮はちょっとした就活の熱気に包まれていた。
そんなある日の夜、シルバが自室で次の面接の資料をチェックしていると、トントンと控えめなノックがあり、エプロン姿のレオン王が、手作りの「ハーブティー」を盆に載せて入ってきた。
「シルバ、お仕事遅くまでご苦労様。はい、お茶淹れたよ」
「まあ、まあ! レオン様、ありがとうございます。……でも、もう十九時ですよ。私のために残業をしてはいけません」
シルバは急いで資料を伏せ、レオンを隣に座らせた。レオンは少し恥ずかしそうに俯きながら、自分の制服の裾をいじった。
「あのね、シルバ。毎日たくさんの綺麗な女の人が面接に来て、みんなぼくの奥さんになりたいって言ってくれるけど……ぼく、なんだか怖いんだ。みんな、ぼく自身のことじゃなくて、『リトアニアの王様』っていう肩書きしか見ていない気がして……」
レオンの小さな本音に、シルバの胸がズキリと痛んだ。
見た目は若き美青年宰相だが、中身はチヨ。孫のこんな寂しそうな顔を見て、じっとしていられるわけがない。
シルバはレオンの頭をそっと引き寄せ、その小さな肩を優しく抱きしめた。
「レオン様……よくおっしゃってくださいました。ご安心なさい。このおばあちゃん、いえ、このシルバが、そんな下心の塊のような人間をあなたの隣に座らせるわけがありません」
シルバはレオンの目をまっすぐに見つめ、理知的で、しかし絶対的な安心感のあるトーンで囁いた。
「家柄も、利権も、我が国の温泉も関係ない。ただ純粋に『レオン』という一人の男の子を愛し、共に定時で帰って、笑ってオムライスを食べてくれる……そんな最高のパートナー(お嫁さん)を、私が必ず見つけて差し上げます。これは、あなたとの約束です」
「うん……! シルバ、ありがとう!」
レオンの瞳に、再び明るい輝きが戻った。孫の笑顔を守るため、おばあちゃん面接官の「本気のスクリーニング」は、ここからさらにギアが上がる。




