第55話:世界がホワイトに染まる日
「そんな……神聖なる教会が、弱小国の実務によって乗っ取られるなど……!」
失脚し、聖堂騎士たちに両脇を抱えられて連行されていく枢機卿の絶望の叫びが、国境の荒野に虚しく響き渡った。
大陸を揺るがすはずだった「大陸包囲網」は、一滴の血も流れることなく、シルバの圧倒的な『財務戦略』によって、わずか数日で完全に解体・逆買収されたのである。
一ヶ月後、リトアニア王国の宮廷。
「シルバ様……! ついに、教会総本部を含めた中央諸国全ての『ホワイト化(業務提携)』が完了しました! 大陸全土の役人が、定時退勤と有給休暇の恩恵を受ける時代が到来したのです!」
アルが、感動のあまり大粒の涙を流しながら報告する。
リトアニア王国は、もはや単なる一国家ではなく、大陸全土の経済と労働環境をコントロールする『最高経営組織』の頂点に君臨していた。
「ふぅ……。これで本当に、邪魔なブラック組織は世界中から一掃されましたね」
最高顧問室の心地よいロッキングチェアーを揺らしながら、シルバは特製のハーブティーをすすり、完全に「縁側でお茶を飲むおばあちゃん(見た目はクールな絶世の美青年)」の穏やかな笑顔に戻っていた。
「シルバ! お仕事、ぜんぶ終わった? 今日は一緒に、新しい温泉旅館の『内覧会』に行く約束だよ!」
十一歳になったレオン王が、立派な君主のオーラを纏いながらも、シルバの前では嬉しそうに駆け寄ってくる。
「ええ、レオン様。本日も完璧に定時退勤、いえ、私はもう完全なる『名誉顧問』ですからね。これからは世界中のホワイトな国々を、レオン様と一緒にのんびりと旅しながら、美味しいものをたくさん食べましょう」
「うん! ぼく、シルバと一緒なら、どこまでも行くよ!」
過労死した前世の未練を遥かに超えて、異世界全体の「働き方」を根本から変えてみせた、最強のおばあちゃん宰相。
幼き王の健やかな未来と、世界中に広がった「定時退勤」の光の中に、彼の本当の、そして最高にホワイトなセカンドライフが、今度こそ穏やかに始まっていくのだった――。




