第52話 おばあちゃん、ハゲタカの「債権」を買い占めます
数日後、連合の急先鋒であり、深刻な財政難に喘ぐ「ロア王国」の財務大臣は、自国の執務室で頭を抱えていた。
リトアニアを解体して富を奪わなければ、来月の国家予算すら組めない。そんな彼のもとに、リトアニアからの臨時の「使者」として、アルが送り込まれた。
「ロア王国財務大臣閣下。我がリトアニア王国の最高顧問、シルバ殿からの『業務提携』に参りました」
アルが机に滑らせたのは、ロア王国が周辺の大国や教会から発行していた、膨大な数の『借用書』の束であった。
「な……!? なぜ我が国が他国に握られているはずの債権を、お前たちが持っているのだ――っ!?」
「簡単なことです」と、魔導通信からシルバの冷酷で美しい声が響き渡る。
「前世でもね、資金繰りに窮した組織の債権は、市場で二束三文で叩き売られるもの。我が国の圧倒的な『温泉ビジネスの余剰資金』を使って、貴国のばら撒かれた借金を、裏で全て『買い占め』させていただきました」
「ば、馬鹿な……! ということは、我が国の最大の貸主は、今やリトアニアだというのか!?」
「ええ。つまり、私はいつでも貴国に対して『即時債務履行(一括返済)』を要求できる立場にある、ということです」
シルバの声に、ロア王国の財務大臣は完全に血の気を失い、ガタガタと震え出した。今ここで一括返済を要求されれば、ロア王国は戦争を始める前に「国家破産」する。
「ロア王国閣下。選択肢は二つです。このまま連合に付き合って我が国と戦争をし、開戦と同時に破産するか。それとも、連合の『作戦計画』を我が国に全て売却し、借金の帳消しと新たな『低金利ローンへの借り換え』を勝ち取るか……どちらが合理的な経営判断?」
おばあちゃん宰相の、容赦のない「資本の力」による脅迫。ロア王国は、戦う前に書類一枚でリトアニアの下請けへと転落したのだった。




