第48話 研修生(バレンシアの若きエリート)の絶望
翌週、リトアニア王国の宮廷に、バレンシア公国からの実務研修団が到着した。
団長を務めるのは、バレンシア公国でも一、二を争う秀才と謳われる若き官僚、ルードヴィヒであった。彼は古い軍事国家のプライドを胸に、「弱小国の内政など、我が国の効率性で圧倒して見せる」と息巻いていた。
――しかし、その自信は、リトアニアのオフィスに一歩足を踏み入れた瞬間に粉砕されることとなる。
「な……何だ、この静けさは!? 誰も怒号を上げていないし、書類の山に埋もれて徹夜している役人が一人もいない……!?」
ルードヴィヒは、明るく清潔で、BGMの流れる財務部のオフィスを見渡して愕然とした。
「ルードヴィヒ殿、ようこそ我がリトアニアへ」と、アルが笑顔で出迎える。
「あ、アル秘書官……! これは一体どういうことだ!? 我がバレンシアの宮廷では、役人は全員、目の下に深いクマを作り、上司からの無理難題に24時間体制で応えるのが『忠誠の証』とされている! このような弛んだ環境で、まともな国政が回るはずがない!」
ルードヴィヒの指摘に、アルはフッと、かつての自分を思い出すような深い笑みを浮かべた。
「では、ルードヴィヒ殿。我が国の過去一ヶ月分の『決裁速度』と『国庫収支のデータ』をご覧になりますか?」
アルが提示した簡易演算魔導具の画面を見た瞬間、ルードヴィヒは目玉が飛び出んばかりに驚愕した。
人員はバレンシアの三分の一以下であるにもかかわらず、事務処理のスピードは十倍以上。さらに、無駄な稟議や接待費が完全にカットされた結果、利益は過去最高を記録していたのだ。




