第47話 おばあちゃん、孫(王様)とプリンを作ります
「シルバ! 卵とミルク、ちゃんとお皿に入れたよ!」
簡易調理台の前で、十歳のレオン王がエプロン姿で誇らしげに胸を張っていた。その隣には、シルバが温泉の新しい名物として考案した『特製温泉プリン』の材料が並んでいる。
「 完璧な計量ですね、レオン様。素晴らしい」
シルバはレオンの頭を優しく撫で、自身も美しい手つきで砂糖を鍋に入れ、火にかけた。前世で忙しい日々の中、週末に孫やひ孫たちのために何度も作った、チヨ直伝の黄金比率のカラメルソースである。
「いいですか、レオン様。カラメルはね、焦らずじっくりと色が変わるのを待つのがコツなのです。ビジネスも料理も、引き際とタイミングを見極めるのが一番大切なのですよ」
鍋から香ばしい甘い香りが立ち込め、綺麗な琥珀色に変わった瞬間、シルバは手際よく少量の湯を加えてソースを仕上げた。レオンはその一連の「神速の職人技」を、目を輝かせて見つめている。
「わあ……! シルバ、魔法みたい! ぼく、早く食べたいな」
「ふふふ、あとは湯気の上がった温泉の熱(地熱オーブン)でじっくりと蒸し上げるだけです。冷やしたら、今夜のデザートにしましょうね」
「うん! ぼく、シルバと一緒に作ったプリン、絶対に忘れない!」
もはやリトアニア王国の未来を担う立派な君主としての片鱗を見せつつあるレオンだが、シルバの前でだけは見せる、この年相応の無邪気な笑顔。
それこそが、おばあちゃん宰相にとっての何よりの報酬だった。




